仕事柄、転勤が多い。
「転勤」といえばやり手ビジネスマンのように聞こえるが、単に、単なる派遣社員が勤めては嫌になり次の仕事を探し、どこかの地に仕事を紹介してもらい、赴く。
いうならば、全国を股にかけ路上販売している「男はつらいよ」の寅さんみたいなモンだ。
そうしたノリであるから、九州で刺されたケガを縫ったかと思えば、兵庫県で抜糸するなど、毎度のこと。
歯科医での治療もそうで、40代を超えてからいきなり歯が抜け始め、すぐにスカスカになり、いいかげん総入れ歯にでもしようかと、アチコチの街で抜歯してはそのままになっていた。
現在の地で、再び歯医者に通院し始めた。
だが、病院が悪かったのか、それとも、これまで通った歯医者のノリが異常だったのか…。
通い始めた歯医者はやたら慎重で、通い始めて数度目の前回になり、ようやく初めて抜歯された。
しかも、一本だけ。
やたら時間がかかっていたので面積の広いペンチみたいなモンで一気に5、6本くらい引っこ抜いたのかと思っていた。
それが、一本って…。
訊けば、入れ歯を造るまでに半年くらいかかる、という話になり、しかも総入れ歯ではなく、一本でも歯を残し、ソコを基準に「部分入れ歯」にするという話になった。
バカなコト言っているな。
こちとら「寅さん」だ。
時間がない。
一気に抜け。
そう思い、ついブチ切れた。
「かつて通っていた歯医者では、一回で4本ほど抜いてもらった。5本くらいまでなら耐えられる。…と思う。さぁ、抜け」
そう迫ると医者が、「やくざの拷問でもなければ、風俗店でもないんですから。「抜け」といわれても…」
ときた。
思わず噴き出した。
「酒はやめて下さい」
と言われながら、結局、帰宅直後から飲んでいる。
明日、抜歯後の状態をみるため、またいかにゃならん。
面倒くさい。