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讃岐地方は昔から工芸の盛んな土地柄である。
そんなこともあって工芸高校と言うものが生まれたのだと思う。
特に金属工芸や漆芸の分野ではなかなかウルサイのである。
しかし、ここ30年ほどで金属工芸に関しては見る影もないほど衰えた。
漆芸については研究所が出来たりして現在も頑張ってる。
先週末から2日に亘って工芸高校で展覧会が開かれた。
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私淑する大須賀喬大先生は
郷土が生んだ天才的な金工作家だ。
勿論、高松工芸高校を卒業して芸大へ進学
昭和を代表する作家となった。
その大先生の作品が特別室に並べられていた。
ちゃっちゃと写真に撮って来たのでお見せしたい。
大須賀先生の「金消し」技術は非常に高度であると専門家の彫金作家の言。
「金消し」とは純金アマルガムを水銀+金で作り
打ち出しなどの作品に硝酸水銀を塗布しながら
銅のヘラで押し伸ばして着けていく。
そうしておいて、バーナーでゆっくりと低温で加熱し続けると
水銀の持つ銀色からくすんだ白色を経て、くすんだ金色になり
ついには水銀は蒸発して純金だけが表面に残る。
「消し」とは水銀を消すことを意味している。
ご承知の通り、硝酸水銀も危ないし、水銀の蒸気も猛毒だ。
この仕事をするには余程の環境整備が求められる。
奈良の大仏も「金消し」されたもので作業に当たった多くの職工が死亡したと聞く。
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金消しにもいろいろと段階があり
薄く蒸着させるもの~濃密な蒸着をするものまで多彩だ。
純金メッキよりも層が厚いので、容易にははげたりしない。
ただし・・・金というシロモノは沢山着ければ下品になる。
うっすらとグラデーションさえ伴うような金消しの上品さは何とも言えないと
オイラは思ってる。
例えば下の蝶の例。
金消しもさることながら
ベースとなる作品の持つ優雅さは、大須賀先生ならではのものがある。
左側に半分ほど見えてるのは純銀打ち出しの蝶
これに金消しを施したもの。
薄い金消しをしたカニ
彫金はタガネの打ち跡も仕事の大切な部分を成す。
本来は滑らかなはずの部分に細かなタガネ跡を付けるのは「景色」である。
「景色」に関する美学は日本独自なものであると思う。
これは陶器の修理における「あり継ぎ」と同じで
例えば備前や織部の焼き物が破損した部分に古伊万里の陶片を細工して
嵌め合わせて、それを景色として新たな価値を見出す思想は
ヨーロッパの陶器修理術では到底考えられぬものである。
このような作品に出会えるうちは・・・
なかなか彫金をあきらめられない自分がいる。
決して大須賀先生のようなものを作れる訳ではないのだが
そういう努力・才能に励まされるのである。
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頭をブン殴られた後は、飯でも喰おうか?ってんで
蕎麦屋へ向かった。
ここの蕎麦屋さんは歩いていけるんで
ついつい、何かそっち方面へ行くと足が店に向かうもんだ。
いつもの蕎麦を頼む。
天丼小鉢とせいろ蕎麦を二枚。
これでお酒が一本付けば・・・
池波正太郎先生の世界なんだがなぁ~。
しかし、世の中先生が多いものだ。
昔、吉川英治先生が言われてたことを思い出す。
「我以外皆師」と。
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蕎麦を食べて町を歩けば老婆が楽しそうに友達と歓談している。
この婆様方も大先生なのに違いない。
おしまい☆
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