路上と旅のガラブログ

『VOW』をきっかけに街歩きに目覚めたガラブロの散歩・旅記録たまに過去にまつわる思い出のブログ。

私の故郷

2024-06-07 00:06:32 | 随筆

先日twitter(未だにXと言えずにいる)を眺めていたら、初夏の水田と電車が写っているツイート(これも未だにpostと言えない)が流れてきた。それは私がずっと住んでいたまちの風景で、故郷を懐かしんだり気にしている己が新鮮だったので、今日はそんな自分の故郷について書きたいと思う。

私の出身は東京都府中市である。里帰り出産で母の実家がある神奈川県で生まれた後すぐに府中に来て、数年前に引っ越すまで住み続けた。こう書くと、長く住んで地元愛があるんですね、と思われるかもしれないが、そんなことは全くなくずっと府中に文句を言いながら結局長く住んでしまったというのが正直なところだ。

府中の名物は、東京競馬場・三億円事件・わけぎ(長ねぎに綿帽子がついた野菜)、他にもあるだろうけどまあそんなところ。都心から京王線特急で30分、駅を離れると住宅街や田畑。典型的なベッドタウンだ。歴史の古いまちなので、保守的で地元の繋がりが強い(ヤンキーや怖い人も多い)。10代から20代の終わり頃まで、そんなところのほとんどが嫌だった。

ところが離れてみて、私にとっての郷愁やノスタルジアの大部分は府中のまちが形作っていることに気づいた。木々や植物が多いまちならではの春の芽吹き、5月頭に行われる大国魂神社のくらやみまつりでの振り切れたような賑わい、通学路の緑道が初夏から梅雨にかけて放つむせかえるような緑と水の匂い。夏にはけやき並木が、照り返すアスファルトからの日差しに対する癒しになり、公園の銀杏が季節の移り変わりを告げ、多摩川の河川敷から寒々しい風が吹く冬が訪れる。

他にもよく遊んだ中央高速道路の高架下やそのそばの団地、大きな道路沿いに並ぶチェーン店とラブホテルの看板など、郊外都市の景色は私にとっての原風景となっている。ガラスブロックの活動をはじめ創作のインスピレーションの源は「なつかしさ」に依るところが多いので、このまちで過ごした時期が今を支えてくれていると言っても過言ではない。

つまらないまちなんてどこにもないと、路上観察を始めて気づいた。自分が何者にもなれないのは、このつまらないまちにいるせいだと思っていた。それは大きな勘違いだった。面白さが見えていなかったのだ。そして面白いことに向かっていく気持ちが足りなかったのだ。あの頃つまらなかったのは、そして何もなかったのは、まちじゃなくて自分自身だった。

最後に府中の名物をもうひとつ紹介したい。2000年前の遺跡から発掘された種を育てた「大賀ハス」である。市内の数か所の公園で見られるはずだ。見頃は6月から8月、市のホームページで確認して、機会があれば私の故郷を訪れてほしい。

6/20 追記

数日前に帰省したのでハスを見てきた。市民プール向かいの公園である。

もうそろそろ花は満開かもしれない。梅雨が本格的に始まる前に是非。