路上と旅のガラブログ

『VOW』をきっかけに街歩きに目覚めたガラブロの散歩・旅記録たまに過去にまつわる思い出のブログ。

8/12「FUTURESCAPE」振り返り

2023-08-17 22:14:26 | 日記

先週土曜日はFM yokohama「FUTURESCAPE」に出演しました。お声かけいただいたディレクターさん、パーソナリティの小山薫堂さん、柳井麻希さん、スタッフさん、そして放送を聴いてくださった皆さまに感謝いたします。

当日の放送で話し切れなかったことや私の不慣れ故に補足が必要なことを書いておきたいと思います。

・そもそもガラスブロックとは?

話したことだけではいまいちわかりづらかったと思うので補足します。「成型ガラス片2枚の間に空気層を設け高温で溶着させたもの。主に壁材に用いられる」というのが建築学的説明で、もっと簡単に言えば「箱型のガラスを2つくっつけたもの」です。中が真空になっていると当日は説明していたのですが、正しくは「内部が0.3気圧程度と真空に近い」でした。

・ガラスブロックの歴史

ガラスブロックが建築史に登場するのは20世紀初頭のことです。番組では詳しく触れることができなかった具体的な建築を挙げておきます。『建築光幻学 透光不透視の世界』長谷川堯・黒川哲郎共著を参考にしました。

カステル・ベランジュ 1898年 エクトール・ギマール設計 パリ

フランクリン街のアパート 1903年 オーギュスト・ベレー設計 パリ

ウィーン郵便貯金局 1906年 オットー・ワグナー設計 ウィーン

・ガラスブロックをどのくらいお持ちですか?将来家を建てるとしたらどう使いたいですか?

この質問に対する自分の考えをできるだけ正しく残しておきたいがためにこの記事を書いています。私は元来収集癖がない方で、ガラスブロックも4個ほどしか持っていません。ただしこれは物の収集癖がないという意味で、思い出や記憶への執着は人一倍あります。忘れたくない気持ちや今この瞬間にしかない景色、そういったものを記録できたらいいといつも思っています。これは余談ですが、毎日の出来事を書いた日記をかれこれ20年続けているのも同じような理由です(やめるにやめられないのもある)。もちろん番組で柳井さんがおっしゃったように、失われていくガラスブロックがもったいないというのも確かにそうで、一通りのガラスブロックは手元にコレクションできたらいいのですが、所有するよりも街を歩いて見つける方が楽しいので先の話になりそうですね。

将来の家にガラスブロックをどう使うか。これはとても悩んだ質問でした。ガラスブロック「研究家」ではなく「観察家」と名乗っているのは、建築学的視点でガラスブロックを分析するよりも街の風景のひとつとして観察したいと考えているからです。ガラスブロックが好きだとしても自分で施工や設計をすることはできないですし、これからそれを目指すことも恐らくないでしょう。加えて今はいつでもどこかへ引っ越せる賃貸暮らしなので、家を建てることも遠い未来のように思えます。

それを踏まえて、街を歩いて見つけた素敵なガラスブロックの家を想像したメタ的な視点で「玄関横、もしくは天井にワンポイント」とお答えしました。放送の後にTwitterタグで感想を見ていたのですが「天井は地震のときに怖い」というのがあり、もっともですし私の伝え方に語弊があったなと感じました。天井付近に壁と平行な天窓の役割として、もしくは比較的軽量な丸型ガラスブロックをワンポイントで、が妥当でしょうか。天窓は逗子市役所、丸型は那覇・熱帯ドリームセンターのイメージが脳裏に浮かんだためです。もちろんどちらも大規模建築なので一般住宅で実現可能かどうかはわからないのですが。

放送を終えてradikoで聴き返したあとに思ったことを書きました。長々と補足しましたが、スタジオにお邪魔してガラスブロックの魅力を話せた30分間が夢のように楽しい時間だったのは本当です。初めてのラジオ出演で緊張する私の話に耳を傾け、話を引き出してくださった薫堂さん、柳井さんに救われました。ラジオを通じてガラスブロックと街歩きの魅力を伝えることができていたら、これほど嬉しいことはありません。そして最後までお読みいただいた方に大きな感謝を。

 


我ら西武が民

2022-12-24 16:30:58 | 日記

「西武」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。

ある人は電車だろうし、野球チームのライオンズを思い浮かべる人もいるだろう。百貨店を想像する人もいるかもしれない。自分にとっての「西武」は一言では言い表せない。懐かしさや落ち着き、反面焦燥を駆り立てられるようなそわそわするような気持ち、それが混ざったものだと思う。

私は関東のとある郊外都市で育った。

都心まで電車で40分、よく言われる「都会でも田舎でもない」街で、緑が多いのと歴史が長いことを誇りにしている街だった。もっとも裏を返せば中途半端に田舎っぽくてしがらみの多い街とも言えたのだが、街に文句を言いつつ結構大人になるまで住んでいた。

街の中心部には東西を横切る京王線の駅があり、市内で一番ユーザー数の多い線だったのだが、南東には西武線が通っていて私はその沿線に住んでいた。西武線の終点からはJRに乗り換えることができて、京王線のユーザーとは明らかに生活導線が違ったと思う。

先ほど文句を行ったが、自分が街歩きをするなかで気になること、懐かしさを覚えるものなどさまざまなところにその街、特に市内の西武沿線の光景や雰囲気が影響を与えていると今では感じる。

こんなことを考えたのも、最近西武線沿いの駅に降りる用事が多かったからである。

西武と言えば、黄色い電車。

ローカルボウリング場。めっきり見なくなった。

越後そば小平店。新潟とは関係ない。つゆはスモーキーで酸味を感じるタイプ。色が濃くて塩辛いのが好きなのだが、これはこれでいい。店の奥にはライオンズのユニフォームが飾ってあってローカル駅そば屋らしくていい。

井荻駅は初めて降りた。「ロジステーション」に見えて物流倉庫みたい。

青赤2色でTHE西武線の椅子。これが自分にとってのノスタルジーだ。そういえば昔のベンチってやたら足がチクチクするところありませんでした?競艇場の椅子みたいなタイプ。あれなんだったんだろう、そしてどこへ行ってしまった?


ペーパードライバーズミュージック

2022-06-12 21:42:54 | 日記

運転免許証の更新に行った。

私は車に乗らない。今運転できるかどうかもかなり怪しい。免許を取ってからの一番の遠出は隣の市だ。なので、自分の体よりはるかに大きい鉄の塊を動かすことができる人を尊敬する。車を運転した方が旅先などでいろんなところに行けるだろうし(鋼鉄の塊でないと到達できない地平が日本にもある)、小粋な車で街を走りたいと思うのだが、考えているうちに免許の更新時期が来る。

今回は行ったことのない試験場で更新したいと思い、品川駅から京急線で、各停しか停まらない鮫洲駅へ。もちろん初めて降りた。それにしても試験場はどこもなぜこんなに絶妙な立地にあるのだろう。

駅前には試験場需要を当て込んだ店がある。かなり年季の入った店構えだ。

試験場までは案内板が曲がり角や信号ごとにあって、それを見ればまず迷わずに向かうことができる。これはかなり親切。

試験場内では撮影禁止なので、気づいたことや更新のたびに思うことを記しておきたい。

・免許の見本の○○花子さん?は平成生まれなのに髪型やメイクが完全に浅野温子

・視力検査で落ちやしないかと毎回ひやひやする

・免許証の写真はたいてい固い表情か妙な映りになるので、あれでフォトジェニックになる人は真の美男美女だと思う

・試験場に行くたび食べたくなる食堂のカレー

無事に発行された免許証を受け取り、見比べる写真で5年の歳月を感じる。実は最初に免許を取った際に着ていた服と同じファッションで更新に臨むことを自分に課しているので、年齢による変化が如実にわかって続けていてよかったなと思う。

せっかく普段足を運ばないエリアに来たので、羽田空港の手前の穴守稲荷駅で降りて街を歩いてみる。駅の南の方へ歩くと多摩川が見えてきて、上空を飛行機が飛んでいる。

川に近い街で育ったので、川を見ると安心する。以前台湾に行ったときも、台北市の郊外を流れる淡水河のほとりに立って対岸のマンションが立ち並ぶニュータウンを眺めているときが一番安心した。

 

閉院したメタボリズム建築の医院、ガラスブロックのあるビル。

昔ながらの銭湯。こちらにもガラスブロック。普段行かない街で免許を更新、おすすめです。

 

 


春の銚子でいい調子

2022-03-01 21:43:14 | 日記

冬が苦手である。

寒さに弱いのと、厚着があまり好きではないからだ。できることなら一番寒い季節でもボーダーシャツに一枚羽織るくらいの気候の街で暮らしたい。ただそれを実現するにはわりと大胆な引っ越しが必要なため、避寒の日帰り旅に出ることにした。場所は、初春の房総である。

なぜ房総かと言うと、漠然と暖かいイメージがある(実際気温を見ると海に近いほど最低気温が下がらない)のと、京極夏彦の『狂骨の夢』で九十九里浜の一松海岸という場所が出てきて、通称京極堂シリーズファンとしては未だ見ぬ房総の海が気になっていたからだ。九十九里と銚子で迷ったが、より東の果てに近いのと、漁港の街並みが気になったので銚子へ向かうことにした。

銚子までは4時間近い長旅である。道中本を読んだり、車窓の風景がだんだん都会から離れていくのを見て過ごす。

初めて降りる駅というのはいつでも高揚感がある。南国のヤシの木が出迎えてくれるが、この時点ではそこまで暖かくなく、避寒という感じもない。ただ快晴だ。

名産品のアンテナショップとスーパーが一体になったような施設でまず土産を買う。土産は店が見つかった時点で買わないと後で絶対に後悔する。後戻りしたり、閉店間際に妥協して変なクッキーを買いたくなければ先に済ませるべし。ちなみにスーパーの魚はノルウェー産だった。

目指す外川漁港は、最近Twitterでも話題になっていた銚子電鉄の終点、外川駅から10分ほどの場所だ。せっかくなので途中の駅までは歩いて向かう。

銭湯でガラスブロックを発見。近寄りたいが番犬がいたので断念。

  

さすが銚子、ヤマサ醤油の工場。タンクをぐるっと回る階段がかっこいい。

意外と曲がりくねった道で何度か迷い(あと写真を撮っていたので時間を食った)、1時間に1本しか来ないダイヤを考え目的地の一駅手前で妥協する。この時点でじんわり汗をかいている。図らずも失敗が避寒につながった。

電車を撮影する趣味はないが、カラーコーンと電車を一緒に撮ってみた。

休日の銚子電鉄は椅子が大体埋まり、立ちの乗客もいる程度の混み具合で、ほとんどは鉄道愛好の士と言った感じ。愛想のいい車掌さんが切符の検札をしてくれる。車内アナウンスも洒落が効いていて飽きない。

終点外川駅は趣のある駅舎。名物ぬれ煎餅を買うときに駅員さんのいる部屋がちらと見えたが、昭和初期を思わせる部屋に電子レンジと昼のニュース番組の映る液晶テレビがあって少々混乱した。

ここまででわりと歩いて空腹になったため、予習していたラーメン屋に向かう。徒歩10分くらい。

 

店名の「歩夢蘭」は野球好きの店主がつけたらしい。ホームランラーメンは角煮をバットに見立てた看板メニューだそう。角煮は意外にも八角の効いたくせのある味。

 

腹を満たして外川漁港へ。坂を下るごとに空気が浜に近づいている気がする。軽トラックが坂道を上っていく。観光客らしき一組以外は、地元の人もまばらだ。

 

南中の太陽が眩しく、写真を撮っても逆光になる。もう海はすぐそこだ。

外川漁港は一般人は立ち入り禁止らしいので、遠巻きに眺める。

防砂林。これだ、これを見に来たのだ。

外川の街で出会ったガラスブロック。見つけたときはあまりの美しさに目を奪われた。すべて「みやび」というタイプだが、色に工夫が凝らされている。ブロック塀の間に埋め込まれているのは初めて見た。片道数時間が無駄じゃなかったと思った。

外川の街を後にして、犬吠埼へ向かう。銚子電鉄の犬吠駅は大混雑だった。やはり観光スポットは強い。

 

途中で見つけた駐在所が洋館建築だった。

有名な絵画「落ち穂拾い」の風景は房総半島にもあったようだ。春は遠いようで近い。まだ行ったことがない街も、足を運んでみたら同じ感想を持つのかもしれない。

 

 


2021を四季で振り返る

2021-12-31 22:30:02 | 日記

今年も残すところあと少しとなりましたが、急ぎ足で振り返りをしたいと思います。四季ごとに分けて印象に残っていることを書いていきます。

・マニアフェスタvol.5にオンライン出展

オンラインでの出展は二度目だったんですが、目玉企画でルービックキューブを初めて最後まで完成させることに挑戦し、その様子をtwitterで実況しました。完成させたときは勝手に充実感を味わいました。

 

硝子ブロックの少年

マニアフェスタvol.5、当アカウントはオンラインでの参加です。12月に作ったコレ↓に、ルービックキューブを一度も揃えられたことがない私が挑...

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・ガラスブロックのショールームを見学

電気硝子建材株式会社さまの東京ショールームの見学に行きました。一介のファンにも丁寧な解説をしてくださった担当の方には本当にお世話になりました。

 

硝子ブロックの少年

先日、ガラスブロックを作っている電気硝子建材株式会社様のショールームを見学しました。壁も床もガラスブロック!ガラスブロックの歴史から構造、建...

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・雑誌「OZ magazine」4月号に寄稿

「#街中の偏愛オタク」というコーナーに文章を寄稿しました。自分の書いたものが雑誌に載って書店に並んでいるのを見るのはとても嬉しいし不思議な気持ちです。

・閉館する油壺マリンパークへ

9月末で閉館が決まっていた京急油壺マリンパークに行きました。

Kodakのインスタントカメラを買って持っていったんですが、フィルムカメラは難しいですね。暗かったり、指が写ってしまったり(!)して修行が必要だと思いました。

後日談で、「ありがとう!マリンパーク」という写真展に、応募した一枚を展示していただきました。

・『サンゴバン ガラス・テクノロジーが支えた建築のイノベーション』

フランスのガラスメーカー、サンゴバン社に関する本を読みました。ヨーロッパにおけるガラスと政治、文化の関わりが詳細に解説されています。ガラスブロックの起源の記述もある貴重な一冊です。

・渋谷~桜ヶ丘~目黒川沿いを歩く

コロナ禍でなかなか旅行に行けない今、遠くへ行かなくても旅気分が味わえるなと感じました。なお寄り道しながら歩いたので時間もかかりましたしそこそこ疲れました。

 

硝子ブロックの少年

知らない住宅街を歩くのは、自分にとっては旅なんです。遠くへ行けなくても、気の持ちようで旅をしたときの高揚感は味わえるし、海外へ行ったところで...

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ガラスブロック、街歩きとは別の趣味の方が忙しく、あまり活動ができませんでした。

昨日今年に撮影したガラスブロックの写真を数えたところ、345枚でした。昨年より少しペースが落ちましたね。来年はもっと精力的に活動できたらなと思います。

駆け足になってしまいましたが、今年最後のブログです。今年もガラスブロックにたくさんの愛をありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

(追記)

年が明けて読み返したらあまりに駆け足すぎだなと感じたので、元旦にラジオを聴いてチャーシューをつまみながら加筆しました。今年もよろしくお願いします。