1919年生まれ「100年続いた」企業の顔ぶれ
渡辺 雄大:帝国データバンク 東京支社情報部情報取材編集課 副課長引用
2019年に節目を迎える企業を年代別に紹介する(写真:セーラム/PIXTA)
2019年は平成最後の年。日本にとって元号が新たに変わる節目の年です。同様に、平成元年に創業した企業は30周年を迎えます。50周年、100周年など2019年に節目を迎える企業は一体どのような顔ぶれなのでしょうか。帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」(147万社収録)を用いて、その面々を紹介します。
創業からわずか10年で26社が株式上場
2019年に創業から節目の年となる「周年記念」(10周年~400周年)を迎える企業は、全国で14万1550社を数えます。そのうち、2009年に創業した「10周年企業」を見てみましょう。
2009年は、前年のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況の余波が春先まで残り、急速な景気悪化で製造業や不動産業の倒産が相次ぎ、同年第2四半期をピークとする年前半に倒産が多発。年間でも1万3306件の倒産が発生するなど企業経営者にとって厳しい経営環境の年となりました。
そうした環境下で、創業した企業の数は、全国で2万1188社。荒波を乗り越え生き抜いてきただけに、顔ぶれも多彩で、今年、上場を果たした印刷や物流においてシェアリングプラットフォームを展開するラクスル(東証マザーズ)や人工知能(AI)開発のHEROZ(東証マザーズ)など、すでに上場を果たしている企業が26社を数えます。創業からわずか10年でこれだけの企業が上場を果たしているのは異例といえるのではないでしょうか。2009年9月に歴史的な政権交代を果たし、鳩山民主党内閣が発足しましたが、2012年12月に第2次安倍内閣の発足以降、アベノミクスによる量的金融緩和が円安、株高をもたらすなど、ここ数年IPO(新規上場)環境が良好だったことが理由として考えらます。
「10周年企業」を業種別に見ると、「サービス業」が6723社(構成比31.7%)で最も多く、なかでも入院施設のない診療所や老人福祉サービス、IT・システム関連企業が目立ちます。その一方で、「製造業」(1140社、構成比5.4%)の比率が、「50周年企業」の15.4%、「100周年企業」の29.4%と比較し、低くなっているのも特徴です。
各メーカーが減産に踏み切るなどリーマン・ショックの影響を最も受け、2009年の「製造業」の倒産は前年比21.9%増となりました。こうした厳しい経営環境からメーカーの創業が相対的に少なかったといえるでしょう。
次に、1989年(平成元年)に創業した「30周年企業」を見てみましょう。1989年は同年12月29日に日経平均株価の終値が3万8915.87円の史上最高値を記録するなどバブル景気のピークを迎えた年になります。同年に創業した企業の総数は全国で2万9593社を数え、各周年のなかで最も多くなっています。
上場企業では、ITシステムコンサルティング事業を手がけるフューチャーグループを統括する純粋持ち株会社フューチャー(東証1部)のほか、首都圏を中心に中古住宅再生事業を展開するイーグランド(東証1部)、ゴルフクラブシャフトの製造を手がけるグラファイトデザイン(JASDAQ)などが名を連ねています。
経済大国日本の礎を築いた50年組
業種別に見ると、バブル景気という時代を反映し、大都市を中心にあちらこちらで不動産開発が行われたことに伴い建設需要が高まり、「建設業」が8936社(構成比30.2%)と最も多く、全体の3割を占めました。そのほかでは、「サービス業」が8232社(同27.8%)と続き、全体の3割弱を占めました。
「サービス業」を詳しく見てみますと、10周年と同じく、入院施設のない診療所や老人福祉サービス、IT・システム関連企業が上位にきたことに加え、建設需要の高まりから建築設計事務所の創業が目立ったほか、歯科診療所の創業も目立ちました。ちまたで「歯科医院の数はコンビニエンスストアより多い」などと言われたりもしますが、平成の幕開けの年に多くの歯科医院が開業していたようです。続いて、創業から半世紀、もはや老舗の仲間入りともいえる1969年創業の「50周年企業」を見てみましょう。総数は全国で2万1456社となっており、30周年、40周年に次いで多くなっています。
上場企業の顔ぶれを見ましても、調剤薬局大手のアインファーマシーズを傘下に置く持ち株会社であるアインホールディングス(東証1部)や大手サブコン業者として空調設備・給排水工事を手がける新日本空調(東証1部)、グループでデジタルエンタテインメント事業やスポーツ事業等を手がけるコナミホールディングス(東証1部)などバラエティーに富んでおり、各業界を代表するリーディングカンパニーなどが名を連ねています。
業種別に見ると、「建設業」が7862社(構成比36.6%)と全体の4割弱を占めています。「サービス業」が3443社(同16.0%)、「製造業」が3309社(同15.4%)と続きます。また、同年に創業された企業の9割強が年商10億円未満の中小企業となっています。
50周年企業の誕生した1969年は「いざなぎ景気」の終盤になりますが、「いざなぎ景気」期間中、国民の所得水準の向上によって、いわゆる新・三種の神器といわれる車、エアコン、カラーテレビと呼ばれた耐久消費財の消費の大幅な伸びにより、日本経済は大きく拡大し、世界2位の経済大国となりました。
東名高速道路や西名阪自動車道の全線開通のほか、営団地下鉄千代田線(当時)や大阪市営地下鉄堺筋線(当時)が開通するなど交通インフラの整備も進みました。同年には石油会社のCMで使用された「オー、モーレツ」という言葉が流行語になりましたが、企業戦士としてがむしゃらに働くサラリーマンおよび全国の中小企業が、高度経済成長を支え、経済大国日本の礎を築いてきたといえるのではないでしょうか。
100周年企業の3割が製造業
さて、いよいよ最後は、創業から1世紀。1919年創業の「100周年企業」の紹介になります。総数は全国で1686社となり、10周年、30周年、50周年と比較すると、ぐっと少なくなります。