まったく見直してないので、漢字間違い、矛盾、重複の山でしょうな。
でも、時間が有り余っていて書いたのだから、そんなモンです。
ではどうぞ。あと一時間ほどで高円寺に出没しますよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー『運命の道を歩いてみよう』(その1)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*
ついに内海は黙ってしまった。政治、経済、芸能、スポーツ、宗教、心霊、サイエンス。さすがにもう話題は尽きたと思われた。
(もういいでしょ? これ以上何を話せというのでしょう?)
女性は、ごとうです、と一言言ったきり、匕首のような冷たいまなざしを内海の喉元にじっと据えたまま黙っている。珍しい漢字ですね、と言った内海に対しても、父方はみなこの『五島』です、とにべもない返事をして、それからは内海が持ち掛ける話題をことごとく枯れ枝の様に無下に払い落としては尚、目の前に座り続けていた。
(あなたも了解したのでしょう? 何をむっつりしてるんです。そのくせまったく場違いな真っ白なスーツなんか着て、正直恥ずかしいですよ。中年同士ですよ。目立ってどうするんです。それとも自分は天から授かった、世の中を浄化せよという特別な使命を遂行するためにここに遣わされて来たのだとでも? ところがいざ来てみれば、私のような輩がウヨウヨいてこの世はまるで闇鍋のように無責任で不浄不潔で、もはや浄化するには及ばない、何しに来たのだかさっぱりわからない、とでも? ひょっとしてこの人はおかしな思想集団の一員で、私は今、その集団に勧誘されようとしているのかもしれない。そのうち、店のそこここから迷彩服の強面がぞろぞろ出てきて、私はどこかに連れ去られてしまう……)
内海は窓の外を見た。街路樹の間から駅のロータリーがみえる。駅前の景色は、初めて降り立ったというのにいかにも親し気に迫り、捨て看板や、歩道を平気で塞ぐトラック、絵柄だかアルファベットだかわからない意味不明なスプレーによる落書きや、行儀の悪く止められた自転車の列などを、さもこれら全てが日常でありますよという様子で頭の中に投げ込もうとする。(そんなわけがあるはずがない)と、彼は心で言った。前を見ると見知らぬ女性が座っている。
(なんのかんのと言いながらも私は彼女の態度には同感している部分もある。潔癖ならばそれが欠点であるはずがない。彼女と私の考え方の基本は、おそらくそう遠くないはずだ。だから同じぐらい、彼女も私に同感してくれていると考えられなくもないのだが、今の様な頑なな態度をとられてはそれを判断するのは難しい。だがよくよく考えてごらん。今一番大切な事は私と彼女がどうのこうのじゃない。わかっているだろう? もうじき梅雨に入る。その年の梅雨の雨の量で、稲の作柄が決まるんだ。そしてその間、海は風は穏やかであるか、山は水は穏やかで、地は豊穣の恵みをはぐくみつつあるのか、嵐や雷はそれらを邪魔しようと悪い目論みはしていまいか、一番大切なのはそれなんだよ。その事を確かめるに、私は今日ここに来ていると言っていい)
でも、時間が有り余っていて書いたのだから、そんなモンです。
ではどうぞ。あと一時間ほどで高円寺に出没しますよ。
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ついに内海は黙ってしまった。政治、経済、芸能、スポーツ、宗教、心霊、サイエンス。さすがにもう話題は尽きたと思われた。
(もういいでしょ? これ以上何を話せというのでしょう?)
女性は、ごとうです、と一言言ったきり、匕首のような冷たいまなざしを内海の喉元にじっと据えたまま黙っている。珍しい漢字ですね、と言った内海に対しても、父方はみなこの『五島』です、とにべもない返事をして、それからは内海が持ち掛ける話題をことごとく枯れ枝の様に無下に払い落としては尚、目の前に座り続けていた。
(あなたも了解したのでしょう? 何をむっつりしてるんです。そのくせまったく場違いな真っ白なスーツなんか着て、正直恥ずかしいですよ。中年同士ですよ。目立ってどうするんです。それとも自分は天から授かった、世の中を浄化せよという特別な使命を遂行するためにここに遣わされて来たのだとでも? ところがいざ来てみれば、私のような輩がウヨウヨいてこの世はまるで闇鍋のように無責任で不浄不潔で、もはや浄化するには及ばない、何しに来たのだかさっぱりわからない、とでも? ひょっとしてこの人はおかしな思想集団の一員で、私は今、その集団に勧誘されようとしているのかもしれない。そのうち、店のそこここから迷彩服の強面がぞろぞろ出てきて、私はどこかに連れ去られてしまう……)
内海は窓の外を見た。街路樹の間から駅のロータリーがみえる。駅前の景色は、初めて降り立ったというのにいかにも親し気に迫り、捨て看板や、歩道を平気で塞ぐトラック、絵柄だかアルファベットだかわからない意味不明なスプレーによる落書きや、行儀の悪く止められた自転車の列などを、さもこれら全てが日常でありますよという様子で頭の中に投げ込もうとする。(そんなわけがあるはずがない)と、彼は心で言った。前を見ると見知らぬ女性が座っている。
(なんのかんのと言いながらも私は彼女の態度には同感している部分もある。潔癖ならばそれが欠点であるはずがない。彼女と私の考え方の基本は、おそらくそう遠くないはずだ。だから同じぐらい、彼女も私に同感してくれていると考えられなくもないのだが、今の様な頑なな態度をとられてはそれを判断するのは難しい。だがよくよく考えてごらん。今一番大切な事は私と彼女がどうのこうのじゃない。わかっているだろう? もうじき梅雨に入る。その年の梅雨の雨の量で、稲の作柄が決まるんだ。そしてその間、海は風は穏やかであるか、山は水は穏やかで、地は豊穣の恵みをはぐくみつつあるのか、嵐や雷はそれらを邪魔しようと悪い目論みはしていまいか、一番大切なのはそれなんだよ。その事を確かめるに、私は今日ここに来ていると言っていい)