-ALKAN-

しどろもどろでも声は出るなり。

霊感あり〼

2017-11-26 16:38:53 | 日記
『かき氷あり〼』『冷やし飴あり〼』『びーる冷えて〼』的な〼。うちの実家の近所には夏になるごとに『カブトムシあり〼』という看板を出すお花屋さんがあった。たぶん、お花用の腐葉土の中に勝手に繁殖したカブトムシの処分に困って、「捨てるならうてまえ(売ってしまえ)」という訳でしょうね。しかし、残念なことには、夏になるとカブトムシが勝手にに飛んできて、下手するとおかずの皿に飛び込んでくる世界に暮らす者たちにとって、そのあり〼は、あまり魅力的ではないようでした。

 夏と言えば、昔変なことがありました。一人で留守番をしていた時の事。買い物から帰ってきたオカンが「あんた、ちょっと焦げ臭いことない?」というのです。花王愛の劇場をみながら、そうお、知らんで、とうそぶいて寝っ転がっていたのですが、ほどなく母の悲鳴と共に、真っ白な煙が部屋に充満し、花王愛の劇場が見えないほどになったのです。そら大変!火事火事火事火事火事と、大わらわで探すと、二階の部屋のクーラーから白煙がもうもうと出ておりました。
「奥さん、あと、一分で火事でしたな」と電気屋に言われ、顔が引きつっている母。その時、

 電話が鳴りました。私が出ると相手は東京のおじさん。開口一番「だいじょうぶ!!?」と言います。さすが東京、情報が早い! いやいや!

 なんぼなんでも早過ぎる。電気屋がお茶も飲み干さんうちに東京から電話って。訊くと、おじはほんの二・三分前に所用で電話をかけていていたらしいのです。

 それはちょうど、オカンと私が大わらわで火元を探している頃、そしたら誰かが電話に出たそうなんです。「もしもし重ちゃん(私の仮名)」と、叔父は言ったそうなのですが、電話に出た相手はただ荒い息遣いで、はあ、はあ、と言っているだけなんだそうです。そしてほどなく電話は切れたそうです。

 悪い予感がした叔父は、すかさずリダイアル、この辺はさすが東京、その当時、まだリダイアルなんてしゃれた機能は、京都府北部には浸透していませんでしたから。そしたら私が出た。という事で。

 もちろん、オカンも私も、電話が鳴った事すら知りません。家にはオカンと私だけ。いったい、誰が電話に出たのでしょう。

 実家は古く、それまでも、夜中にトントンと廊下を歩く音やドアをノックする音を聞いたりしていましたが、家族全員、それはざしきわらしだ、というコンセンサスのもと、平然と暮らしていたのです。

 実家には、ざしきわらし、おり〼。という訳でしょうね。幸せを招く妖怪なので、どうぞごゆっくり。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ネーミングの天才児

2017-11-26 16:10:30 | 日記
 昨日無事に東京のライヴハウスでの弾き語りを終えてきました。 久々のステージは楽しかった。久々の仲間とも会えたし。

 しかし、各自、各バンドの楽曲には創意工夫がみられるが、私の曲は古い。タイプが古いというのもあるが、実際作ったのがもう十年前とか、そんな曲ばっかり。仕方がないから開き直って、ジミヘンの名曲『リトルウイング』を一曲唸ってきました。

 しかし、曲のタイトルとか、難しいですね。小説のタイトルも、あと曲の書き出しの言葉。小説も。

 天才になりたいと思う、そんな瞬間ですね。川端康成先生も、『伊豆の踊子』のあの有名な書き出しを何度も何度も書き直していると聞きました。天才が何度も何度も書き直すのだから、私ごとき永遠に書き直さなければならないでしょうね。

 しかし、私の幼稚園時代にはそんなネーミングの天才少年がいまして、彼は幼稚園にあるらせん状の滑り台を『空中滑り台』とネーミングしたのですが、なんとその滑り台は今でも、『空中滑り台』と呼ばれているそうです。かれこれ四十年近く前の話。

--------------------------------------運命の道を歩いてみよう(その4)----------------------------------------------------------------


しかし見ると男性は尚、微笑んでいた。それは暖かな笑顔だったが、病的なまでに頑なだった。この人は、微笑を絶やさないことが人間の寛容さとか、清濁併せ呑む器量の大きさだと考えている危険性があると五島は思った。或いは男だからという、女の自分から見るとおよそ何の利もなく、恐らく男性にとってもまったく不都合であるとしか思えない条件を信条として疑わないでいる、ただの阿呆である可能性もあると五島は危惧した。(そんなタイプの阿呆ならごめんだわ。失敗しても本人がへこたれない事が一番重要ならばそれぞれの勝手にすればいいでしょう。でもそれでは片付かない事もたくさんあるでしょう。例えばこの駅前の、茂みや雑踏に放り込まれた空き缶やゴミ、落書き、放置自転車など、様々で細々としたルール違反などをこのまま放っておけば、それはそのまま日常の組み込まれて常態化してしまう。だから本当に太陽を気取りたいのなら、時に壮大なオーロラを空に浮かべてみせるのも結構だがその一方で、一輪のヒマワリを振り向かせてみたり、セミや蝶の羽根をしなやかに伸ばしてみたり、実際の太陽がそうであるようにもっと熱く悩ましく流動的でなければならないのです。そうして一番大切な事に気付き目を向けられる繊細さと柔軟さがなければいけない。今一番大切なこと。気付きませんか? それはもうじき梅雨に入るこの六月の雨の量。それは稲の作柄にとても大きな影響を与えるのです。だからそれまで、風は穏やかに吹いてくれるのか、日は暖かに照らすか、疫病は? 嵐はほどほどで通り過ぎてくれるのか? それこそが今一番大切なことなんです。おわかり?)

 笑いを浮かべたままカップを口に運んだ男の口から、コーヒーが白いスーツに落ちた。五島は思わず、あっ! と言って、ぎゅっと目を閉じた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生活タペストリー

2017-11-26 09:00:37 | 日記
 (青)近所のスーパーまで大冒険。空腹に耐え、家に引き籠ってひもじさを耐え凌ぐか、それとも師走の空風の中、運を天に任せて糧を調達に赴くか?無事帰れるか?途中からタクシーなんて事にはならないか?

 (黄色)先日、病院でもらったビタミンB12がアホほど余っている。効果を見ると、『神経の伝達を良くする』的なことが書かれてあり、摂り過ぎても排出されるので何ら問題はないらしい。だからサプリメント気取りで、飲み切る。

 (水色)あ、そうだ!湿布を張って、その上に使い捨てカイロ貼ったらええんちゃう?ええこと考えた!冴えてるわぁ!

(橙色)近所の公園から押し寄せた枯葉のイリュージョン。木が一本もない庭に、枯葉がいっぱいさ。

----------------------運命の道を歩いてみよう(その3)------------------------------
 
「女性はもっともっと社会進出して堂々と生きるべきであると?」

「はい。そのように考えています」五島はその言葉を制するように答えた。初めて、二人の目が合った。 

 男性は微笑んでいた。五島は自分が慌てて目を逸らしたような気がした。(あなたまさか、かれこれ二時間近くもずっとそんな表情でいたわけじゃないでしょうね? ありえない、不自然です。どんな状況に際してもニヤニヤと相手の印象を良く保つばかりで決して本心を晒さない、あなたはそんな人なんでしょう。だから今日も、こんな駅前の小さな喫茶店じゃあ目立って仕方がない白いスーツなんか着て来たのでしょう。不自然です。 私、正直恥ずかしいですよ。でもあなたはそんな事には気付いてもいない。それはあなたが自分を何か特別な存在だと思っているからですよ。自分は他とは違い、あたかも太陽かなにかであるかのように思っている証拠です。誰にも平等で、心地よく、それはあなたにとって理想でも、実際にはとても雑な態度である事にも、あなたはまるで気付いていない。あなたはそうして世の中をあまねく見ているつもりでも、実際は何も見えていないのです。何かあったんですか? 子どもの頃、両親から苛烈な暴力を受けたとか? まあ、そんな事はどうでもいいです。私、ムスッとしてるでしょう、でも誤解しないでください。私はあなたが吐き散らしたどうでもいい質問を早くなんとかしたいだけなのです。意地悪でやっているのではないです。私だって初対面の人に上から目線で冷たく当たって勝ったような気になるような可愛らしい年齢ではありませんから。確かに、あなたは私に近い部分がおありかもしれない。万事万全である事には私も魅力を感じます。しかし、そうある事はとても難しいですし、おそらくは無理だと思います。それに、それだったら何故そんな、どうでもいい質問ばかりするのです? 私の苗字が変わっている? 私の趣味? 株価の動向? 政党政治の是非? 宇宙の成り立ち? 死後の世界の有無? そんなどうでもいい質問攻めにされてこんなに頭を忙しくしたのは生まれて初めてです。それでも少しも失礼のないように、端的に、嘘偽りがないようにと、もともとありもしない答えを自分の中をあたふたと探し回って、そんな事を二時間もやって、私はもうクタクタです。あなたには不満でしょうけど、これでも私には精一杯なのです。あなたもその笑顔の後ろではもう、ウンザリしているはずです。だからもう止めませんか? こんな馴れ合いは。万全から遠退くばかりです)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

無言閑話-- 運命の道を歩いてみよう(その2)

2017-11-26 09:00:37 | 日記
 無言である。 日曜の午前中はいつも徹底的に無言で過ごす。 私はもうすぐ無職になるでしょう。昨日、一週間ぶりに会社に電話するとそんな話でした。それに関しても、特に言う事はありません。無言です。

 転職を決めた際は、無職だけは避けたいと思ったものですが、こうして三週間近くも休職していると、それもまあ、なるようになっただけかと、結局こうなりましたからにはまあ休めばいいのかと思っています。

 もともと私の幸せを望んでいる赤の他人などいないし、そんな国家もない。まあ、ノンポリである私は、国家だ政府だなんて事はあまり言いたくありませんし、言いません。政治家も仕事としてやっているのだから落選したら、無職で大変だろうと思います。野球選手もそうだよね、ジャイアンツの村田選手も、予想もしなかったとおっしゃってました。


 予想もしなかったと言えば先ごろ、二十一年間続いたお笑い番組、『めちゃイケ』が終了すると聞きました。そういえば全然見なくなってたなぁ、昔は毎週見てたのに、それについて、出演者の有野さんが、仕事がなくなってディズニーランドに行くお金もない、とおっしゃってました。

 しかし有野さんはお笑い芸人として、熾烈な淘汰を勝ち抜け、二十一年もゴールデンの番組を維持してきたのだから、大成功。それに私同様、有野さんの幸せを願っている赤の他人などいないのだから、あとは家族と一緒に、これからの人生の濃淡を楽しんで、おそらくは豊富な人間関係の中を、波乗り宜しく、無理なく渡っていけば、何の問題もなくディズニーランドにも行き続けられると思います。私個人的には、有野さんのお笑いセンス、五重丸ですよ。よゐこの有野は面白い。

 お笑い大喜利で、『新しい妖怪の名前』というお題に対し有野さんが答えた『プリンゆらし』という答えは秀逸でした。




------------------------------------運命の道を歩いてみよう(その2)-----------------------------------------------------------


 五島は六月にしてはやや厚めの生地の純白のジャケットの下に、これもやはり純白のシャツのボタンをきっちりと首まで閉めていた。それは甲冑のように、強固に彼女の貞操のシンボルとみえる胸の膨らみを守っているように見えた。(彼女にとって私などはおそらく、隙あらばその甲冑を引き裂いて胸を、さらには性器を奪い取ってやれと目論む、町のあちこちに転がる吸い殻や空き缶の陰に潜んでいる、地獄絵図なんかでチョロチョロとして描かれている、黒くて小さい邪気のようなモノに見えているに違いない。そんな目的でもなければこんな輩が、わざわざこんな各停しか止まらない駅前の中古な喫茶店に、こんな昼過ぎの中途半端な時間に赴いてくるわけがない、そう考えているに違いない)

 雨が一粒、ガラス窓に当たった。そのちいさな音に、五島は蝋燭の火がつと揺れるように外を見た。まっすぐなあごのラインはまだ、天の使命を帯びた現役の社会人であり女性であるという自覚と緊張を留めてみえた。雨かな? とつぶやき、内海は微笑みかける。だが五島はすぐに視線を内海の喉元に当て直すとまた黙り込んだ。

(なるほど。まぁあなたはせいぜい清潔なのでしょうな。それを言いたいのでなければ貴方だって、わざわざこんな私鉄の各停しか止まらない駅前の中古の喫茶店に、こんな昼過ぎの中途半端な時間に来る筈もございませんものね。私はそう考えてますよ。この冷めきったコーヒーでさえ、もし私が一滴でもこぼそうものならあなたは決してそれを見逃さず、ほら、やっぱり不浄不潔だ、あぁ、だらしない。と、易々と自分の望むべき結論の中に私を放り込んで落ち着けてしまう事でしょう。それでも私は別段構やしない。ただ変な勧誘はごめんだよ。しかし私も良くないところはある。なにもそこまで、相手の見た目だけで判断しなくても……。でもなんだろうか。顔だろうか。私にそんな勝手な判断をさせてしまうモノは、そもそも私は、そんなに相手を見た目だけで判断するような人間だっただろうか……)

「つまり」内海は無理やりに口を開いた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする