毎日のできごとの反省

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ハイオクは設計性能以上のパフォーマンスは出せない

2016-05-07 15:58:38 | 軍事技術

 以前の著書「技術戦としての第二次大戦」でもそうだったが、兵頭二十八氏は、近著「地政学は殺傷力のある武器である。」でもオクタン価についての無理解を繰り返している。そのことだけを指摘しておく。

 「技術戦・・・」では「レシプロ発動機では、オクタン価の効果は小さくなかったようです。ハイ・オクタンであるほど、スロットルを全開にしたときの発熱量が少なかった。」などと、述べている。これらが全くの間違いであることは、専門家に聞いたり内燃機関工学の入門書をかじらずとも、インターネットを検索すれば簡単に分かる

 それ以前の常識として、熱機関は発熱量が大きいことが、エネルギー量が大になることだから、スロットルを全開しても(出力を上げようとしても)発熱量が少ないという事は矛盾である。「技術戦・・・」の間違いは「書評」で別途説明してあるのでご覧いただきたい。

 「地政学・・・」では更に「100オクタンの戦闘機用ガソリンエンジンは、スロットルを全開にし続けても・・・・・離陸後にオーバーヒートを気にせずに急上昇することが可能で・・・」(P153)とある。氏の記述を見ると、オクタン価がノッキングという異常燃焼の抑止の程度を表しているのを、加熱(オーバーヒート)の抑止と誤解しているようである。

 例えば圧縮比を大きくして、小型軽量のガソリンエンジンを設計しようとすると、ノッキングが起きやすくなる。ノッキングが起るとシリンダやピストンを損傷し使えなくなるから、防止のためにハイオクが必要となる。実際にはエンジンを設計する段階で、何オクタンのガソリンを使うことができるか想定する。

だからハイオクで設計していないエンジンにハイオクを使っても、「基本的には」設計以上の性能が出ることはない。逆にハイオクで設計したエンジンに、低オクタン価のガソリンを使うと、出力制限などをしなければならない。誉エンジンの性能が発揮出来なかった原因の「ひとつ」がこれであることは知られている。

だから氏が「英軍機がエンジンが最新型でなくとも、米国製のハイオクガソリンのおかげで、設計性能以上のパーフォーマンスを引き出せたのです。(P154)」というのが間違いなのはお分かりいただけよう。

ついでに石油生産量についての疑問をひとつ。1939年のドイツの石油生産高は年産450万バレル、1940年のアメリカは1日に400万バレル(P157)とあり、あまりの桁違いに驚いた。ところで1939年のアメリカの原油生産量は世界の半分を占め年産1518万トン(P155)とあった。直観的に年産に比べ日産があまりに多すぎると思えた。

大雑把な計算だから、1000ℓを1tとし、1バレルを159ℓとして年間365日生産すれば、日産400万バレルというのは

400万×159×365/1000=23,1214万トン/年

となり一桁違う。もちろん、石油の比重は1より小さい。1バレルの値も時代や測るもので違うが、倍半分の相違はないから、この値が半分になることもない。半分になっても10,000万トンは楽に超える。また、年産は原油生産量とあり、日産は石油生産量だから1対1ではないのかも知れない。ところが原油生産量に対する、石油生産量とは原油から精製された石油だとすれば、石油生産量1バレルは原油に換算するとさらに大きくなる。素人計算で情報量も少ないので、何かの抜けていることがあるかもしれない。とにかく疑問を持った次第である。


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