◎艦上機と艦載機
艦上機と艦載機の違いについては、流石に正確に書かれている。以前航空雑誌にも書いてあったが、曖昧だったと記憶している。要するにこの区別は日本海軍によるもので、艦上機は空母で使うもの、艦載機は戦艦その他の空母以外で運用されるもので、一般には水上機であるということである。
ただ現代では、ヘリコプターやVTOLなどが登場し、強襲揚陸艦などのように空母の姿をしているものなど、艦種も曖昧になっているので、艦上機と艦載機と区別を厳格にする意味がないので、この本では全て艦載機と称するとしている。
それでも疑問に思われることはある。例えばF-14トムキャットは日本では艦上戦闘機、と呼ぶのが一般的である。艦載機と言ってもおかしくはないが、艦載戦闘機とは言わないだろうと思うが、枝葉末節のことだろう。
また、戦時中の報道では新聞でもラジオでも、「敵艦載機が・・・」と呼び慣らされていて、艦上機という言葉は使われていない。まさか水上機が本土空襲をするはずがないから海軍用語から言えばすべて艦上機である。その影響もあってか、国語的には艦上機も含めて、全て艦載機と呼ぶのが一般的であろうと思う。
これは小生の推測だが、海軍の広報担当が、プレス発表するとき、艦上機と知っていても、国語的に分かりやすいと判断して、あえて艦載機と言ったと思われる。それで艦載機という言葉が定着したのであろう。
◎艦橋が右舷にある理由
不思議に思ったのは、本書には空母の艦橋が右舷にある理由が書かれていないことである。そもそも空母は一部の例外を除き、艦橋が右舷にあることすら書かれていないようなのである。右舷にある理由は簡単で、レシプロエンジンのプロペラは前方に向かって時計まわり回転するので、トルクで機体が左方向に進みたがるから左舷に艦橋があると危険なのである。ところが国内で刊行されている出版物で、そのことを書いたものを見たことがない。
そこでホームページにも書いたが、同じ趣旨のことを「世界の艦船」に投書したら採用された。同誌の編集関係者にも意外だったのであろう。