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書評・日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと・高橋史郎・致知出版社

2014-08-17 11:28:53 | GHQ

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 本の内容はタイトルがよく示している。ただし、内容のかなりの部分が子育て問題にさかれているのには、いささか辟易した。日本の教育問題の多くが直接間接に、GHQの占領政策に淵源を発しているのは事実である。だが、私の父母や知り合いの、相応の年代の人をみると、それに関係のない元々の問題もあると思うからである。

また、せっかく江藤淳の「閉ざされた言語空間」に匹敵するテーマでありながら、頁数を教育問題にさかれたせいか、肝心の期待した主題への言及が少なくなっていると思わざるを得ないのである。

むしろ独自で面白いのは、占領政策が日本人に対する極度の、というより異常な偏見によって立案されている、という指摘で詳しく例示された人物の日本人への見方である。それで思い出すのが、平成12年頃に作られた「パールハーバー」という映画の日本軍の描き方である。この映画の日本軍の指揮所の様子などは、どう考えてもアメリカ人ですらこんなことは考えてはいまい、というほどの滑稽でグロテスクな表現である。そんなことはあり得ないと知って、こんな表現を行うのは、日本軍がこうであったという想像によるものではなく、アメリカ人が内心に持っている日本人へのグロテスクな偏見を映像にしてみせた、ということであろうと思う。

当たり前だが「占領軍が東京入りしたとき、日本人のあいだに戦争贖罪意識はまったくといっていいほど存在しなかった。彼らは日本を戦争に導いた歩み、敗北の原因、兵士の犯した残虐行為を知らず・・・日本の敗北は単に産業と科学の劣勢と原爆のゆえであるという信念がいきわたっていた」と昭和二〇年のGHQ月報にあるそうだ「(P91)

それが現在の日本の体たらくになってしまったのは、まさに日本に贖罪意識を植え付ける「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」の大成功が原因である。そのことを著者は義眼を埋め込まれた、と適切に表現している。「挺身隊問題アジア連帯会議」で、インドに住むタイ人女性が「日本軍さえたたけばいいのか。インドに来た英国兵はもっと悪いことをしたのに」と泣きながら訴えると、「売春問題ととりくむ会」事務局長の高橋という女性が、「黙りなさい、余計なことをいうな」と怒鳴ったという記事を読んだ。(産経新聞平成26年5月25日)ちなみに平成26年になって慰安婦を挺身隊と呼んでいたのは間違いであった、と報道した御本家の朝日新聞が認めたから、この会議の名称は詐称であるという皮肉なことになった。

この日本女性は日本軍より英軍がアジアで行った残虐行為がひどいということが信じられず、そんな発言も許せず逆上したのである。しかも善意のやさしい人であるはずのこの日本人女性は、人間としての最低のマナーすらわきまえられなくなっていたのである。理性的に考えれば、タイ人女性の発言が事実かどうかも検証すべきなのだが、できないのである。このように日本軍の残虐行為に異議をとなえると逆上するパターンは、自虐史観の人に多い。それは、心の表層ではなく深層にまで「日本軍の残虐行為」への憎しみがしみ込んで理性を跳ね返すのである。つまり完全に洗脳されたのである。日本にはこうした人物が教育界や政界やマスコミに跋扈していて、日本の思想をリードしている。そういう恐ろしい状態にある。

昭和天皇を裁判にかけないことにした裏の理由のひとつとして、国民からのGHQ宛の膨大な嘆願書の存在があった。(P116)ところが「不思議なことに、いわゆる右翼の人たちはこういう嘆願書を出していません。(P120)」というのだが、考えてみれば当然かもしれない。GHQは日本を支配している外国人である。勝利に驕ってもいる。嘆願書を書くということは、頭を下げてお願いすることである。それができなかったのではあるまいか。プライドが許さないのである。嘆願書を書いたなかで最も多かったのが婦人であると言うのも、それを裏付けている。婦人たちはどんな手段でも天皇陛下を助けたい一念から、プライドを捨てて嘆願書をかいたのであろう。高橋氏の言には、天皇を最も助けようとするべき肝心の右翼が、嘆願書を出さなかったことに対する、言外の非難があるようにも思われる。

左翼勢力が占領政策に協力していたと言うのは事実である。それにしても、GHQの下部組織であるCIE(民間情報教育局)羽仁五郎が密談して日教組を作ったり、共産党の野坂参三も毎日CIEに会って何らかの成果を上げていた(P154)、というのもグロテスクな話である。たとえ共産主義政権実現のためとはいえ、自国を弱体化する政策の実現に信念を持って積極的に参加していた、というのは、ゾルゲ事件の尾崎秀実同様、醜悪である。特にGHQ支配下の日本には、このような人物はいくらでもいた。ルーズベルト政権下で活動していた、コミンテルンの米国人スパイに比べて、質も量も甚だしいであろう。

 


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