先日7/13(土)は海へ行ってきた。二日前に誘うという、急な誘いだったためか、二人来られなくなり、結局去年と同様の三人で出発する運びとなった。目的地の千葉へ向かい走行中、通勤のピークタイムと重なり、交通状況には混雑の兆しが表れていた。夜明け前の出発であれば、一般道だけでのんびりと行く事になっただろう。しかし、時刻は既に朝9時。到着の遅れは、楽しみを逓減させる破目に陥る。仕方なく高速道路を利用し、時間の効率化を図った。途中、一時的な渋滞により、最悪の事態さえ危ぶまれたが、本当に一時的なもので事無きを得た。
毎回、穴場を探す為、異なる海水浴場へ赴く。今回も例外ではなく、初めて訪れた場所である。馴染みの無い場所では、駐車場を確保する問題、海の家、海水浴場の開閉時間、家族向けか若者向けか客層に関して等々、様々な情報を現地で認識することになる。幸い、一日500円の安価な駐車場に車を停める事が出来た。立ち並んだ海の家では、どこも積極的に客引きを行っている。たまたま声を掛けて来たところは、その日オープンということで、外装が完成していない様子だった。時刻は正午になっていたため、一人1000円のところを、半額で借りることが出来た。ロッカーは各300円、シャワーは無料で、水、お湯とも使い放題だ。
まずは一旦、即座に着替えて海へ入る。その日は曇り空に、時折晴れ間が覗く、比較的涼しい気候だった。それでも、陽射しが照り付ける間は、まさに灼熱、皮膚を焦がすような感覚はある。この海水浴場の特性か、当日の天候によるものか、波は高めで、水温が低かった。初めに入る瞬間は、冷たさが身に堪えるものの、一度肩まで入ってしまえば、自然と慣れるものだ。
一頻り遊び、昼食のためにまた海の家へ戻った。小学生の頃、家族で海に行く時は、専らこの九十九里浜に車で向かい、海の家で焼きそばやハマグリを食べた。久し振りにハマグリを食べたい我々は、ハマグリ料理を推している海の家を探した。其処では、一日10食限定で「ハマグリ丼」なるものが提供されていた。当然、既に完売していた。そこで別の海鮮丼ぶりを注文したところ、ハマグリの入った澄し汁が付いてきた。結果としてハマグリを食べることが叶い、胃袋共々、満足に至る。
時刻は14時過ぎ、海を見ると、先程より波が高くなっていた。海岸にほど近い位置でも、ライフセーバーは注意に周っていた。注意と言えば、砂浜のすぐ上空を、ずっとパラモーターに乗った男が飛び回っていた。名称が解らないのだが、屋根というか、パラシュートの広がる部分、そこに「海岸にゴミを捨てないで下さい。出たゴミは持ち帰りましょう。」というような文句が書かれていた。注意喚起を行う、自警団のようなものかと思っていたら、アナウンスで「海水浴場上空を飛び回るのは危険ですので止めてください」と厳しく注意されていた。そんなバカモーターを余所に、我々はもう一度海へ入った。二度目の入水は、温まった体に冷水がかかるため、結構堪えるものだ。ところで私自身は昔から泳げない、所謂カナヅチのため、あまりに波が高いと純粋に怖い。目に見えて高波となりゆく中、軽く遊んでから海を出た。
帰路は急ぐ必要も無い為、高速を使わずに走った。その車にはカーナビが無く、知らない道を走る際は、紙媒体の地図が必需品となるアナログ仕様だ。徹夜明けに海へ向けて出発したという自殺行為による、疲れのせいもあるだろう、成田空港付近で道に迷い、無駄にぐるぐる回っていたようだ。よく知っている道ならば、地図が必要無いため、その道へ出ようとしていたという。この愚行も相俟って、帰ってきたのはすっかり夜も更けた23時過ぎだった。殆ど車内で過ごすことになり、それはそれは長時間の暇潰しを行った。主に、なぞなぞ、大喜利、即興オカルト話の三つに集約できる。
なぞなぞに関しては、
「仕事が忙しくなって、従業員を確保するために海へ行きました。海で何をした?」
「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足、これは何?」
「AV男優とF1レーサーに共通することと言えば?」
「宇宙飛行士が宇宙に行くと、食事を摂らなくなるのは何故?」
大喜利は、
「客足が遠のいた海の家、店主が客を獲得するためにとった驚きの行動とは?」
「美容師あるある2位は、耳を削ぎ落とす。では1位は何?」
「クローン羊のドリーが、唯一オリジナルと似ても似つかないところは?」
「こんな転校生は嫌だ!」
「こんな高齢者は嫌だ!」
「Cock and Ball Tortureが解散した切っ掛けとなる、ある事件(出来事)とは?」
即興オカルト話は、初めは適当に話し、怖がらせる大事なポイントをボケる、という実際は怖い話でも何でもない、ある意味大喜利の延長戦のようなものだ。大変なのは、ありもの(既存の話を使わない。というか怖い話に興味が無い為知らない。)禁止で、自分でフリを行い、自分でボケる点だ。実際の怖い話のように、オチ前に溜めを作れるため、話し手次第で、考える時間を得られる。結構脳は疲れるが、楽しかったのでおすすめ。途中から、より即興性を増すために、「設定」と「場所」を指定された上で話すという形式にした。ボケが思い付かないと、自然に完走してしまい、普通にオカルト話が出来上がるという不思議なゲームだった。
たとえば、このようなものが出来た。設定は「小学生の頃の体験談」、場所は「学校」。
「小学校の頃、不思議な体験をした。学校で美術の時間に、修学旅行で行った山を思い出して描く、という授業があった。その時の先生はとても優しい人で、みんなの描いた絵に、優劣をつけず、全員が花丸になった。後日廊下には、クラス全員の描いた絵が貼りだされた。その時、ちょっと変わってるな、と思うくらいで、当時はさほど気にもしていなかったことがある。みんなが同じように山、空、木々だけの景色を描いていたのに、一人だけ、山の中腹に小屋だったか家だったか、建物を描いている奴がいた。クラス39人居る中で、建物のある風景を描いているのは、そいつだけだった。時は流れて、高校の時に、その小学校の頃の同窓会があった。担任の先生も来ていて、色々思い出話に花を咲かせていた。そんな折、美術系に進学したある女子が、先生に聞いた。あの時貼り出された絵の中に、一人だけ建物を描いた子がいたという話。そこで鮮明にその時のことを思い出した。そしたら、他のみんなも当時気になっていたという話題で持ちきりになった。誰かが、あの時貼られていた絵は、40枚あった気がすると言う。俺は数えた覚えなど無いが、言われてみると、奇数枚ではなかった気がする。奇数なら、並べて貼ったときに、1枚分スペースが余ったり、1枚だけ違う列に出てしまったりするはず。確かに整然と並んで貼られていた。そこで先生は、当時のことを教えてくれた。俺もずっと忘れていたけど、うちのクラスは本当は40人居たんだけど、1人だけ学校に来ない奴が居た。学期が始まる直前に転校ということになって、机も片付けられていたから、忘れていたけど、その当時も先生が、実家の都合で、という話を最初にしていた。でも、生徒には家の都合という言葉で隠していたけど、本当は少し違うらしい。その子の家は、結構裕福だったんだけど、父親が事業に失敗して破産したことで、家族みんな心中したという。その心中した場所というのが、山の上の別荘で、みんなで修学旅行に行った山の中にあったらしい。その時にはとっくに、取り壊されていたのだけど、きっと彼は、クラスのみんなと学校に通いたかったのかもしれない。みんなが修学旅行で別荘のある山まで来て、つい自分も一緒に絵を描いてしまったんだろう。」
これが、オチを思い付かずに思わず完走したパターン。その後すぐ、考え直したパターンは、同窓会で先生が当時の絵の秘密を語ってくれた場面から。
「実はあの時の絵、先生も描いて貼ったんだ。アクセントに山小屋まで描いて。それで俺も思い出した。当時は絵のことなんて分からず、ぼんやりしてヘタクソな絵だなと思ってたんだけど、今思えばあれだけ水墨画なんだよ。めちゃめちゃ上手いんだよ美術の先生だし、水墨画で淡いから小屋なのか普通の家なのか朧気だったんだなぁ。」
ついでに設定が「バイト」、場所が「ファーストフード店」の話。
「昔、マックでバイトしていたことがある。てぃろりてぃろりってポテトが上がる店のこと。駅から離れてるし、都会じゃないから、そこは夜9時に閉店して、9時半まで片付けで9時半になった時点で帰ってよかったんだけど、タイムカード切るのは9時半から10時まで、自由だった。残業代が発生するから、さすがに10時以降になるのはダメだと言われていた。だから長くても30分までだけど、当時は少しでも多くお金が欲しかったから、その日も9時半以降、しばらく残ってたんだ。その日は人も少なかったし、みんなは定時で帰ってしまったから、ドアも全部閉めて、空調も切って電気も消して、出てカギ掛けるだけでいい状態にして休憩室に一人で居たんだ。万が一何か忘れて帰ったら大変だから、ちょっと暑かったけど、一人で真っ暗な中携帯でただ時間見たりしてた。あと10分だって時に、ホールのほうから、すいませーん、って声が聞こえてきた。おかしいなって思った。自動ドアも閉めたから、入って来れないはずなのに。まぁいいかと思って、小さい店だからホールまで出ないで、すみませんもう閉店したんですよまた明日来て下さい、と言った。確実に聞こえたはずなんだけど、後5分で10時というときに、またホールから、すいませーん、と声が聞こえる。空調も無いし夜で静かだから、絶対さっき聞こえているはずなのに、仕方ないから、客の目の前まで行って、直接言うことにした。暗くて顔も見えない中、一応軽く頭を下げて、もう閉店したということを伝えて顔を上げた。そしてお客さんの顔を見た。一瞬暗くて分からなかったが、次の瞬間、背筋が凍りつき戦慄が走った。俺は、その顔をよく知っている。いや、よく見ることは無かったが、昔から見ればすぐに分かった。そこに立っていたのはなんと・・・・・俺のお母さんなんだよ。なんで職場に来るんだよ、同僚帰ったあとでよかったけど、まぁ恥ずかしかった。しかも、自動ドア閉めたつもりで居たのに、開いてたんだよ。もう職場に来ないでねって、強く言っておいたよ。」
ついでのついでにもう1本バイトもの。設定は「バイトの体験談」、「作業系」。
「昔、作業系のバイトで、トラック移動するものをやったことがある。大体二人一組でトラックで現場まで行って、終わり次第トラックで帰る。で、家の近くまで運転するほうがトラックで送ってくれるんだ。その日も夜、仕事終わりで家まで送り届けてもらう途中だった。疲れたなぁと思いながら、ぼんやり窓の外を眺めていた。ふと気付くと、柳の並木道を走っていた。俺は不意に違和感を覚えた。道に詳しいわけでは無いが、そこは知らない場所だ。来る時に通った道と、明らかに違う。いったい何処に向かっているのか、おそるおそる、ドライバーに尋ねた。すると彼は、僅かに口元に笑みを浮かべた。俺は一瞬恐怖すら覚えた。まるで知らない場所、人気の無い並木道を走るのは、このトラックだけ。そして少し間を空けて、低い声で彼は言った。・・・・・・代々木上原だよ。そう、代々木上原なんだ、言われて気付いたけど、そう言えば知ってる町並みだったし、知ってるショップがちらほらあるし。普段車に乗らないから、どうも道に疎くて、すっかり知らない場所だと思い込んでいた。ところが、俺は背筋が凍った。おかしい。東京の現場から、埼玉に帰る途中、代々木上原は通らない。いくら道に疎い俺でも、それがおかしいことだと、さすがに気付いた。暫く様子を見ていたが、やはり車は、埼玉方面とは見当違いの方向へ進んでいる。俺の思いを見透かされたのか、赤信号で停車した直後、彼をゆっくりとこちらを振り向いた。苦悶の表情を浮かべ、宛ら鬼の形相と化している。思わず体が震えた。殺される、おう思った。そして彼は、静かにこう言った。・・・・・・漏れそうなんだ、ちょっと寄り道させてくれ。未だ嘗て、あれほど恐怖を感じたことは無い。もし、車内で漏らされたら、そう思うと今でも恐ろしい。」
毎回、穴場を探す為、異なる海水浴場へ赴く。今回も例外ではなく、初めて訪れた場所である。馴染みの無い場所では、駐車場を確保する問題、海の家、海水浴場の開閉時間、家族向けか若者向けか客層に関して等々、様々な情報を現地で認識することになる。幸い、一日500円の安価な駐車場に車を停める事が出来た。立ち並んだ海の家では、どこも積極的に客引きを行っている。たまたま声を掛けて来たところは、その日オープンということで、外装が完成していない様子だった。時刻は正午になっていたため、一人1000円のところを、半額で借りることが出来た。ロッカーは各300円、シャワーは無料で、水、お湯とも使い放題だ。
まずは一旦、即座に着替えて海へ入る。その日は曇り空に、時折晴れ間が覗く、比較的涼しい気候だった。それでも、陽射しが照り付ける間は、まさに灼熱、皮膚を焦がすような感覚はある。この海水浴場の特性か、当日の天候によるものか、波は高めで、水温が低かった。初めに入る瞬間は、冷たさが身に堪えるものの、一度肩まで入ってしまえば、自然と慣れるものだ。
一頻り遊び、昼食のためにまた海の家へ戻った。小学生の頃、家族で海に行く時は、専らこの九十九里浜に車で向かい、海の家で焼きそばやハマグリを食べた。久し振りにハマグリを食べたい我々は、ハマグリ料理を推している海の家を探した。其処では、一日10食限定で「ハマグリ丼」なるものが提供されていた。当然、既に完売していた。そこで別の海鮮丼ぶりを注文したところ、ハマグリの入った澄し汁が付いてきた。結果としてハマグリを食べることが叶い、胃袋共々、満足に至る。
時刻は14時過ぎ、海を見ると、先程より波が高くなっていた。海岸にほど近い位置でも、ライフセーバーは注意に周っていた。注意と言えば、砂浜のすぐ上空を、ずっとパラモーターに乗った男が飛び回っていた。名称が解らないのだが、屋根というか、パラシュートの広がる部分、そこに「海岸にゴミを捨てないで下さい。出たゴミは持ち帰りましょう。」というような文句が書かれていた。注意喚起を行う、自警団のようなものかと思っていたら、アナウンスで「海水浴場上空を飛び回るのは危険ですので止めてください」と厳しく注意されていた。そんなバカモーターを余所に、我々はもう一度海へ入った。二度目の入水は、温まった体に冷水がかかるため、結構堪えるものだ。ところで私自身は昔から泳げない、所謂カナヅチのため、あまりに波が高いと純粋に怖い。目に見えて高波となりゆく中、軽く遊んでから海を出た。
帰路は急ぐ必要も無い為、高速を使わずに走った。その車にはカーナビが無く、知らない道を走る際は、紙媒体の地図が必需品となるアナログ仕様だ。徹夜明けに海へ向けて出発したという自殺行為による、疲れのせいもあるだろう、成田空港付近で道に迷い、無駄にぐるぐる回っていたようだ。よく知っている道ならば、地図が必要無いため、その道へ出ようとしていたという。この愚行も相俟って、帰ってきたのはすっかり夜も更けた23時過ぎだった。殆ど車内で過ごすことになり、それはそれは長時間の暇潰しを行った。主に、なぞなぞ、大喜利、即興オカルト話の三つに集約できる。
なぞなぞに関しては、
「仕事が忙しくなって、従業員を確保するために海へ行きました。海で何をした?」
「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足、これは何?」
「AV男優とF1レーサーに共通することと言えば?」
「宇宙飛行士が宇宙に行くと、食事を摂らなくなるのは何故?」
大喜利は、
「客足が遠のいた海の家、店主が客を獲得するためにとった驚きの行動とは?」
「美容師あるある2位は、耳を削ぎ落とす。では1位は何?」
「クローン羊のドリーが、唯一オリジナルと似ても似つかないところは?」
「こんな転校生は嫌だ!」
「こんな高齢者は嫌だ!」
「Cock and Ball Tortureが解散した切っ掛けとなる、ある事件(出来事)とは?」
即興オカルト話は、初めは適当に話し、怖がらせる大事なポイントをボケる、という実際は怖い話でも何でもない、ある意味大喜利の延長戦のようなものだ。大変なのは、ありもの(既存の話を使わない。というか怖い話に興味が無い為知らない。)禁止で、自分でフリを行い、自分でボケる点だ。実際の怖い話のように、オチ前に溜めを作れるため、話し手次第で、考える時間を得られる。結構脳は疲れるが、楽しかったのでおすすめ。途中から、より即興性を増すために、「設定」と「場所」を指定された上で話すという形式にした。ボケが思い付かないと、自然に完走してしまい、普通にオカルト話が出来上がるという不思議なゲームだった。
たとえば、このようなものが出来た。設定は「小学生の頃の体験談」、場所は「学校」。
「小学校の頃、不思議な体験をした。学校で美術の時間に、修学旅行で行った山を思い出して描く、という授業があった。その時の先生はとても優しい人で、みんなの描いた絵に、優劣をつけず、全員が花丸になった。後日廊下には、クラス全員の描いた絵が貼りだされた。その時、ちょっと変わってるな、と思うくらいで、当時はさほど気にもしていなかったことがある。みんなが同じように山、空、木々だけの景色を描いていたのに、一人だけ、山の中腹に小屋だったか家だったか、建物を描いている奴がいた。クラス39人居る中で、建物のある風景を描いているのは、そいつだけだった。時は流れて、高校の時に、その小学校の頃の同窓会があった。担任の先生も来ていて、色々思い出話に花を咲かせていた。そんな折、美術系に進学したある女子が、先生に聞いた。あの時貼り出された絵の中に、一人だけ建物を描いた子がいたという話。そこで鮮明にその時のことを思い出した。そしたら、他のみんなも当時気になっていたという話題で持ちきりになった。誰かが、あの時貼られていた絵は、40枚あった気がすると言う。俺は数えた覚えなど無いが、言われてみると、奇数枚ではなかった気がする。奇数なら、並べて貼ったときに、1枚分スペースが余ったり、1枚だけ違う列に出てしまったりするはず。確かに整然と並んで貼られていた。そこで先生は、当時のことを教えてくれた。俺もずっと忘れていたけど、うちのクラスは本当は40人居たんだけど、1人だけ学校に来ない奴が居た。学期が始まる直前に転校ということになって、机も片付けられていたから、忘れていたけど、その当時も先生が、実家の都合で、という話を最初にしていた。でも、生徒には家の都合という言葉で隠していたけど、本当は少し違うらしい。その子の家は、結構裕福だったんだけど、父親が事業に失敗して破産したことで、家族みんな心中したという。その心中した場所というのが、山の上の別荘で、みんなで修学旅行に行った山の中にあったらしい。その時にはとっくに、取り壊されていたのだけど、きっと彼は、クラスのみんなと学校に通いたかったのかもしれない。みんなが修学旅行で別荘のある山まで来て、つい自分も一緒に絵を描いてしまったんだろう。」
これが、オチを思い付かずに思わず完走したパターン。その後すぐ、考え直したパターンは、同窓会で先生が当時の絵の秘密を語ってくれた場面から。
「実はあの時の絵、先生も描いて貼ったんだ。アクセントに山小屋まで描いて。それで俺も思い出した。当時は絵のことなんて分からず、ぼんやりしてヘタクソな絵だなと思ってたんだけど、今思えばあれだけ水墨画なんだよ。めちゃめちゃ上手いんだよ美術の先生だし、水墨画で淡いから小屋なのか普通の家なのか朧気だったんだなぁ。」
ついでに設定が「バイト」、場所が「ファーストフード店」の話。
「昔、マックでバイトしていたことがある。てぃろりてぃろりってポテトが上がる店のこと。駅から離れてるし、都会じゃないから、そこは夜9時に閉店して、9時半まで片付けで9時半になった時点で帰ってよかったんだけど、タイムカード切るのは9時半から10時まで、自由だった。残業代が発生するから、さすがに10時以降になるのはダメだと言われていた。だから長くても30分までだけど、当時は少しでも多くお金が欲しかったから、その日も9時半以降、しばらく残ってたんだ。その日は人も少なかったし、みんなは定時で帰ってしまったから、ドアも全部閉めて、空調も切って電気も消して、出てカギ掛けるだけでいい状態にして休憩室に一人で居たんだ。万が一何か忘れて帰ったら大変だから、ちょっと暑かったけど、一人で真っ暗な中携帯でただ時間見たりしてた。あと10分だって時に、ホールのほうから、すいませーん、って声が聞こえてきた。おかしいなって思った。自動ドアも閉めたから、入って来れないはずなのに。まぁいいかと思って、小さい店だからホールまで出ないで、すみませんもう閉店したんですよまた明日来て下さい、と言った。確実に聞こえたはずなんだけど、後5分で10時というときに、またホールから、すいませーん、と声が聞こえる。空調も無いし夜で静かだから、絶対さっき聞こえているはずなのに、仕方ないから、客の目の前まで行って、直接言うことにした。暗くて顔も見えない中、一応軽く頭を下げて、もう閉店したということを伝えて顔を上げた。そしてお客さんの顔を見た。一瞬暗くて分からなかったが、次の瞬間、背筋が凍りつき戦慄が走った。俺は、その顔をよく知っている。いや、よく見ることは無かったが、昔から見ればすぐに分かった。そこに立っていたのはなんと・・・・・俺のお母さんなんだよ。なんで職場に来るんだよ、同僚帰ったあとでよかったけど、まぁ恥ずかしかった。しかも、自動ドア閉めたつもりで居たのに、開いてたんだよ。もう職場に来ないでねって、強く言っておいたよ。」
ついでのついでにもう1本バイトもの。設定は「バイトの体験談」、「作業系」。
「昔、作業系のバイトで、トラック移動するものをやったことがある。大体二人一組でトラックで現場まで行って、終わり次第トラックで帰る。で、家の近くまで運転するほうがトラックで送ってくれるんだ。その日も夜、仕事終わりで家まで送り届けてもらう途中だった。疲れたなぁと思いながら、ぼんやり窓の外を眺めていた。ふと気付くと、柳の並木道を走っていた。俺は不意に違和感を覚えた。道に詳しいわけでは無いが、そこは知らない場所だ。来る時に通った道と、明らかに違う。いったい何処に向かっているのか、おそるおそる、ドライバーに尋ねた。すると彼は、僅かに口元に笑みを浮かべた。俺は一瞬恐怖すら覚えた。まるで知らない場所、人気の無い並木道を走るのは、このトラックだけ。そして少し間を空けて、低い声で彼は言った。・・・・・・代々木上原だよ。そう、代々木上原なんだ、言われて気付いたけど、そう言えば知ってる町並みだったし、知ってるショップがちらほらあるし。普段車に乗らないから、どうも道に疎くて、すっかり知らない場所だと思い込んでいた。ところが、俺は背筋が凍った。おかしい。東京の現場から、埼玉に帰る途中、代々木上原は通らない。いくら道に疎い俺でも、それがおかしいことだと、さすがに気付いた。暫く様子を見ていたが、やはり車は、埼玉方面とは見当違いの方向へ進んでいる。俺の思いを見透かされたのか、赤信号で停車した直後、彼をゆっくりとこちらを振り向いた。苦悶の表情を浮かべ、宛ら鬼の形相と化している。思わず体が震えた。殺される、おう思った。そして彼は、静かにこう言った。・・・・・・漏れそうなんだ、ちょっと寄り道させてくれ。未だ嘗て、あれほど恐怖を感じたことは無い。もし、車内で漏らされたら、そう思うと今でも恐ろしい。」
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