五月の節句を過ぎたら、緑地帯の冬の花を夏の花へ植え替えます。
「あー、またこの季節が来た。また、毎日花に水をあげるのか」
冬の花は10月から4月まで、殆ど水をやらなかった。それでもずっと綺麗な花を咲かせていた。
夏の花はそうはいかない。
毎日水やりしないと直ぐ枯れてしまいます。
朝5:50 自宅出発。
「簡単に言うなよ。通りすがりの、冷たい目線を浴びながらの水やりは辛いんだよ」
花に水をやっていて、行き交う人に挨拶しても、
半分の人は完全に無視する。
残りの2/3は目を合わさず挨拶するだけ。
目を合わさない「ありがとう」や「おはようございます」なんて、その場の逃げ口上でしかないのがよく分かる。
ホースで水を撒いていたら向こうから女性がウォーキングスタイルで歩いて来た。
「おはようございます」
目を見て挨拶したが完全無視。
能面みたいな無表情で、遠くの一点を見つめて水撒きおやじの横を歩き去った。
「江戸城奥女中か。そんなにエライのか。ホース持って水垂らしてるからおいらを三助おやじぐらいにしか思ってねぇだろ」
「ふざけんなよ。目や態度は口ほどにものを言うてんだ。絶対、見下しているよな。いつか、笑って挨拶させてやるからな」
あの、もう後ろ姿の奥女中は
明日も絶対、ウォーキングしに来るだろう。
ウォーキング奥女中、絶対笑って「おはようございます」って言わせてやる。
わけもない闘争心がふつふつと沸き上がり、花に水をこれでもかと浴びせていた。