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TYPE-MOONの「魔法」(4):第五の継承者はなぜ青子なのか
筆者-Townmemory 初稿-2022年3月16日 11時30分07秒
今回は第五魔法を取り上げます。
本稿はTYPE-MOON作品の世界観に設定されている「魔法」に関する仮説です。四回目です。第一回から読まないと意味をなしません。以下のリンクから順番にお読みください。
これまでの記事は、こちら。
TYPE-MOONの「魔法」(1):無の否定の正体
TYPE-MOONの「魔法」(2):初期三魔法は循環する
TYPE-MOONの「魔法」(3):第四魔法はなぜ消失するのか
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●第五魔法:青
第五魔法というものがあり、使用者が現存しています。
「魔法:青」と呼ばれています。
現在の使用者は蒼崎青子(蒼崎橙子の妹)。
この魔法を開発したのは蒼崎姉妹の祖父にあたる魔術師で、蒼崎青子は祖父から魔法を継承したという扱いになっています。
姉の青崎橙子は天才で、生まれ持った魔術刻印も芸術品クラスの一級品。いっぽう妹の青子は凡才で魔術刻印も平凡。しかし、「この魔法には青子の魔術刻印のほうが向いてる」という祖父の判断で、魔法は青子のほうに継承されました。
そのことで姉妹はいがみあって、しょっちゅう殺し合いをしているという感じです。
『魔法使いの夜』で、青子は魔法らしき現象をいくつか発生させています。
ひとつは、彼女の友人静希草十郎が致命傷を受けたとき。彼の「死の瞬間」をはるか未来へ吹き飛ばすということをしています。草十郎が死ぬ瞬間をどっか知らない未来に置いてきてしまったため、彼は「いずれ絶対に死ぬけどまだ死んでない」という状態がずっと継続しており、事実上、「死の結末をのがれた」ことになりました。
もうひとつは、「10年の経験を積んだ未来の自分」を現在に取り寄せる、という現象です。これにより彼女は「成長しきって完全な戦闘力をそなえた状態」になり、青崎橙子の撃退に成功しました。
さて、こうした現象を可能とする「魔法」とは、いったい何なのかを知りたい。
●パラドキシカルな方法論
ここで前回のおさらい。
第四魔法は、
「根源に到達するために、根源の存在しない世界を求める」
という、きわめて深刻な矛盾をはらんだ方法論でした。
(前回をご覧下さい)
これはきわめてパラドキシカルな発想です。
だって「根源が存在しない世界があれば根源に到達できる」って言ってるのですものね。言葉尻だけとらえれば、なんじゃそりゃって話です。
そんなんアリなんか……。
それがアリなら結構なんでもアリなんじゃないか?
……と考えた、お調子者の魔術師がいたのだと思います。
それは私の説では蒼崎姉妹のおじいちゃんです。
●根源に到達するためのエネルギー
このシリーズでは何度も同じことを言っていますが、
「無限に近い膨大なエネルギーがあれば、根源へつながるルートが作れる」
という大前提があります。
ゼルレッチは「並行世界から魔力を収集して膨大なエネルギーをためる」という方法で根源へのルートを確立しました(推定)。
第三魔法の産物であるジーザスは「物質化された魂でである自分自身」から膨大なエネルギーをくみだして、世界の外殻に風穴をあけ、根源を見いだしました(推定)。
冬木の聖杯システムは、「英霊6名の魂を集めてひとかたまりにし、膨大なエネルギーに変えて、世界の外殻に穴をあける」という方法で根源に到達しようとしました(事実)。
ようするに常識外れの巨大なエネルギーがあれば、根源に到達できる。
魔法使いになりたい魔術師たちは、なんとかして膨大なエネルギーを一カ所に集めることはできないか、ということを模索しているはずだ。
どうして根源になかなか到達できないかというと、ほぼ無限に近いような膨大なエネルギーを集めることが困難だからだ。
そうして根源に到達した場合、何が手に入るかというと、根源はエーテルの発生源なので(推定)、膨大なエネルギーが手に入るのです。
魔術師たちがやっきになっている「根源への到達方法の探求」は、
「根源に到達すれば無限のエネルギーが得られるが、到達するためには無限のエネルギーを必要とする」
という、ニワトリタマゴのとんちのような、きわめてパラドキシカルな問題になっている。そのように評価できます。
●トンチのきいた蒼崎祖父
さて、ここに蒼崎姉妹の祖父にあたる魔術師がいました。
この人も魔術師なので、根源への到達を最終目的にしていた。
なので彼は、どうしたら根源に到達できるのか、どうして今まで根源に到達できないのかということを本質的なところで考えた。
・膨大なエネルギーがあれば根源に至れる。
・根源に至れば膨大なエネルギーを得られる。
そこでトンチのきいた蒼崎のおじいちゃん、こういうことを言い出したとしたらどうでしょう。
「根源に到達しさえすれば、膨大なエネルギーが手に入るんだからさぁ……」
「根源に至ったときに得られるエネルギーを使って根源に至ればいいんじゃね?」
つまりは、「因果」(原因と結果の関係性)を操作することができればいい。
この場合は、原因と結果の順序をひっくり返すことができればいい。
まず「根源に到達した」という結果を発生させてから、そのあとで「根源に到達するための膨大なエネルギーを放出する」という原因を発生させればいい。
(根源に到達すれば膨大なエネルギーが得られるのだから、まず根源に到達してエネルギーを得てから、それを放出すればよい)
だけどそんなことどうやって実現するんだ……という話になりますが、この「因果の逆転現象」、どうやら神々の住まう神代においては部分的に実現できていたらしいじゃん、ということに蒼崎祖父は気づく。
たとえばクー・フーリンが持っていた宝具ゲイボルグ。これは「因果を逆転し、まず『目標に当たる』という結果を発生させてから、原因となる槍投げを行う」なんていう特殊効果を持った槍でした。
また、バゼットが代々受け継いでいた法具フラガラックも、よく似た因果逆転の能力を持っていました。
こういうのを研究して、
「根源に到達するという結果を発生させてから、膨大エネルギー放出という『原因の槍投げ』を行う」
という現象を、たった一回限りでよいから大々的に再現することができれば、根源に到達することができる。
上記のようなことを蒼崎祖父は実現したんだろう、と、私は考えます。
だから私の説ではこうなります。
「魔法:青の正体は『因果の操作』である」
この魔法のメソッドは、「根源に到達したという結果を得てから、根源へ向けて旅立つ」ので、なんと、
「第五魔法は“根源に到達した結果”獲得された」
という命題は真となります。
(ただし、「第五魔法は“根源を目指すための手段”として開発された」も真となります)
●青子が実現した奇跡のしくみ
なぜ「因果の逆転」ではなく「因果の操作」なのかというと、
「静希草十郎の死の瞬間をはるか未来へふっとばす」
ということをしているからです。
静希草十郎の死を遠くに吹き飛ばすためには、「静希草十郎が致命傷を受ける」という原因と、「静希草十郎が死ぬ」という結果を結んでいる細い糸を、びよんびよんに引き伸ばして遠くに放り投げる、ということができないといけません。
これは単純な位置の入れ替えでは説明がつきません。
だから「操作」だとしています。
「10年後の自分を今ここに取り寄せる」という現象は、「今の自分という原因」と「未来の自分という結果」の間に結ばれている糸を、きゅっとたぐりよせることで実現しているのかなと思います。
(今の自分と未来の自分を「逆転」させることでも同様の現象は起こせそうな気がする)
おそらく、根源に至るために使用されたメソッドが「因果の逆転」で、根源に至ったことで手に入った魔法が「因果の操作」なのじゃないかな、と考えます。
(「因果の操作」の中に、逆転も含まれる)
「因果関係をいじくる術」を開発して根源に到達してみたら、そこで手に入ったのは「因果関係をいじくる術」だった……いわば「宝は宝の地図だった」ということになるので、結末としても、ますますトンチがきいている。
(ひょっとしてこれが、「そして終わりの五つ目は、とっくに意義(せき) を失っていた」というフレーズの意味かもしれない)
●青子が後継者に選ばれた理由
蒼崎青子は、「静希草十郎が死なないという別の結果」を用意することはできなかったようなので、「ひとつの原因から発生しうる別の可能性を選ぶ」というようなことは、おそらくできないっぽいですね。
おそらく、青子の第五魔法の範疇では、「原因と結果は一意に紐づいていて、それを任意に切り離したりはできない」ように見えます。
そしてそのこと自体が、
「第五魔法の後継者として青子が選ばれた理由」
(天才・蒼崎橙子が選ばれなかった理由)
だと考えます。
奈須きのこさんはウェブメディアのインタビューでこんなことをおっしゃってました。
(4gamer.net)
これはたとえばの話なんですが、もし仮に第五魔法が、
「十択の選択肢を百回連続で正解したら望む結末が得られる、その百回の正解を計算で導き出す」
というような、アトラス院がやってるような方法論だった場合、ものすごく複雑で精緻で計算力が高そうな魔術刻印を持った蒼崎橙子がまちがいなく後継者として選ばれたでしょう。
だけど本稿で提案している「第五魔法:青」の正体は、そんなややこしいしろものじゃありません。
一対一で対応している「原因」と「結果」を、最短距離で、なるべく力強く「直線的に」結ぶことができればOKなのです。
蒼崎青子の魔術刻印は、性能としては人並み程度とされていますが、そのかわりシンプルで頑丈で、ひじょうに燃費が良いといわれています。
そして蒼崎青子は、「ものを壊すという分野に限っては超一流の魔術師」といわれており、彼女の得意技は魔術の弾丸やビームを撃ち出すことなのです。
あえて恣意的に言い換えれば、蒼崎青子の生まれ持った魔術刻印は「砲弾を撃ち出す大砲の砲身」のような構造であって、「自分と攻撃対象の間を直線的に最短距離で結ぶ」ことに特化したかたちをしているのです。
これは本稿で想定している「第五魔法:青」を扱うために生まれてきたような特質だといえそうです。
●逆行運河・創世光年
対戦格闘ゲーム『メルティブラッド』シリーズに登場する蒼崎青子は、ラストアーク(条件が揃ったときに発動できる高威力の必殺技)として「逆行運河・創世光年」という技を使います。
本稿の説では、第五魔法の獲得メソッドは、
「通常なら原因→結果という方向にだけ流れる運河のごとき因果を『逆行』し、『創世』の力が流れ出す根源に到達する」
というものなので、整合している感はある。
ところで、『FGO』の1.5部ティザームービーにて、ゲーティアの企みの計画名が「逆行運河 / 創世光年」である、と明かされました。蒼崎青子のラストアーク名と、ゲーティアの大計画の名称がほとんど同じであるということになります。
これについて、奈須きのこさんは、前述のウェブメディアでこうおっしゃっています。
(4gamer.net)
奈須きのこさんがここでおっしゃることによれば、「技名が同じなのは、第五魔法の中身を類推するためのヒントであるからだ」と。
ゲーティアがやっていることを解析すれば、第五魔法の正体や、青子のやろうとしていることがわかるはずだと。そういうことをおっしゃっている(というふうに読める)。
ゲーティアというのは『FGO』第一部のラスボスでした。
作中、彼はこういうことを考えた。
「人類というのは、もはやこれ以上の進歩は見込めないし、何より、苦しんで生きて死んでいく姿が見るにたえない」
「そもそも、人類が『こういう生き物』として発生したこと自体がまちがいだ」
「いったん地球をリセットして、ゼロから人類をデザインしなおすことができたらいいのに」
「そうだ、現行の人類が積み上げてきた文明や、歴史の厚みそのものを燃やして燃料にすれば、その膨大なエネルギーを使って、46億年前という『地球が生まれたとき』にまで、戻ることができるんじゃないのか」
「よし、人類の歴史を燃やしたエネルギーで地球をゼロからやりなおそう」
こういう突拍子もない計画の名前が、「逆行運河 / 創世光年」である……ということになっている。そしてこの計画名は、第五魔法の使い手の必殺技名と同名である。
このゲーティアの計画、よく考えてみると、本稿で論じている「第五魔法獲得メソッド」と酷似しています。
因果関係をごく単純に記述するとこうなります。
■原因:地球が誕生した。
■結果:地球上で人類が歴史の厚みを積み上げた。
「因果関係」ですので、通常、原因から結果へ、川の流れのように一方向に流れます。
しかしゲーティアは、結果の位置に「人類の歴史の厚み」という「膨大なエネルギー源」が置いてあることに着目した。
この膨大なエネルギーがあれば、「因果の逆転」現象を発生させることができるんじゃないのか。
つまり、結果が先にあり、そのあとに原因が来るように、入れ替えることができるはずだ。
人類の現状という「結果」が先にあり、そのあとに地球の誕生という「原因」が来るようにできるはずである。
ゲーティアの行おうとしたのが、上記のようなメソッドであった場合、これは「第五魔法獲得メソッド」とほぼ構造が同じです。
●第六魔法/第六法
そこでこういう疑問が生じそうです。
「ようするに『FGO』の第一部は、第五魔法をメインで扱った作品というわけなのか?」
私は、どうもそうではなさそうだよね、と感じます。
以下のように考えたいのです。
「『FGO』は、ゲーティアがやろうとしたことも、それを阻止しようとしたカルデアの面々の努力も、あらゆることをひっくるめて全てが『第六魔法』なんじゃないかな」
そういう意味のことを次回で言おうとしています。続きます。
続きはこちらです。TYPE-MOONの「魔法」(5):第六法という人類滅亡プログラム
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※ご注意●本稿は現実に存在する筆者(Townmemory)の思想・信条・思考・研究結果を表現した著作物です。内容の転載・転用・改変等を禁じます。紹介ないし引用を行う際は必ず出典としてブログ名・記事名・筆者名・URLを明示しなければなりません。ネットで流布している噂ないし都市伝説の類としての紹介を固くお断りします。これに反する利用に対して法的手段をとる場合があります。
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TYPE-MOONの「魔法」(4):第五の継承者はなぜ青子なのか
筆者-Townmemory 初稿-2022年3月16日 11時30分07秒
今回は第五魔法を取り上げます。
本稿はTYPE-MOON作品の世界観に設定されている「魔法」に関する仮説です。四回目です。第一回から読まないと意味をなしません。以下のリンクから順番にお読みください。
これまでの記事は、こちら。
TYPE-MOONの「魔法」(1):無の否定の正体
TYPE-MOONの「魔法」(2):初期三魔法は循環する
TYPE-MOONの「魔法」(3):第四魔法はなぜ消失するのか
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●第五魔法:青
第五魔法というものがあり、使用者が現存しています。
「魔法:青」と呼ばれています。
現在の使用者は蒼崎青子(蒼崎橙子の妹)。
この魔法を開発したのは蒼崎姉妹の祖父にあたる魔術師で、蒼崎青子は祖父から魔法を継承したという扱いになっています。
姉の青崎橙子は天才で、生まれ持った魔術刻印も芸術品クラスの一級品。いっぽう妹の青子は凡才で魔術刻印も平凡。しかし、「この魔法には青子の魔術刻印のほうが向いてる」という祖父の判断で、魔法は青子のほうに継承されました。
そのことで姉妹はいがみあって、しょっちゅう殺し合いをしているという感じです。
『魔法使いの夜』で、青子は魔法らしき現象をいくつか発生させています。
ひとつは、彼女の友人静希草十郎が致命傷を受けたとき。彼の「死の瞬間」をはるか未来へ吹き飛ばすということをしています。草十郎が死ぬ瞬間をどっか知らない未来に置いてきてしまったため、彼は「いずれ絶対に死ぬけどまだ死んでない」という状態がずっと継続しており、事実上、「死の結末をのがれた」ことになりました。
もうひとつは、「10年の経験を積んだ未来の自分」を現在に取り寄せる、という現象です。これにより彼女は「成長しきって完全な戦闘力をそなえた状態」になり、青崎橙子の撃退に成功しました。
さて、こうした現象を可能とする「魔法」とは、いったい何なのかを知りたい。
●パラドキシカルな方法論
ここで前回のおさらい。
第四魔法は、
「根源に到達するために、根源の存在しない世界を求める」
という、きわめて深刻な矛盾をはらんだ方法論でした。
(前回をご覧下さい)
これはきわめてパラドキシカルな発想です。
だって「根源が存在しない世界があれば根源に到達できる」って言ってるのですものね。言葉尻だけとらえれば、なんじゃそりゃって話です。
そんなんアリなんか……。
それがアリなら結構なんでもアリなんじゃないか?
……と考えた、お調子者の魔術師がいたのだと思います。
それは私の説では蒼崎姉妹のおじいちゃんです。
●根源に到達するためのエネルギー
このシリーズでは何度も同じことを言っていますが、
「無限に近い膨大なエネルギーがあれば、根源へつながるルートが作れる」
という大前提があります。
ゼルレッチは「並行世界から魔力を収集して膨大なエネルギーをためる」という方法で根源へのルートを確立しました(推定)。
第三魔法の産物であるジーザスは「物質化された魂でである自分自身」から膨大なエネルギーをくみだして、世界の外殻に風穴をあけ、根源を見いだしました(推定)。
冬木の聖杯システムは、「英霊6名の魂を集めてひとかたまりにし、膨大なエネルギーに変えて、世界の外殻に穴をあける」という方法で根源に到達しようとしました(事実)。
ようするに常識外れの巨大なエネルギーがあれば、根源に到達できる。
魔法使いになりたい魔術師たちは、なんとかして膨大なエネルギーを一カ所に集めることはできないか、ということを模索しているはずだ。
どうして根源になかなか到達できないかというと、ほぼ無限に近いような膨大なエネルギーを集めることが困難だからだ。
そうして根源に到達した場合、何が手に入るかというと、根源はエーテルの発生源なので(推定)、膨大なエネルギーが手に入るのです。
魔術師たちがやっきになっている「根源への到達方法の探求」は、
「根源に到達すれば無限のエネルギーが得られるが、到達するためには無限のエネルギーを必要とする」
という、ニワトリタマゴのとんちのような、きわめてパラドキシカルな問題になっている。そのように評価できます。
●トンチのきいた蒼崎祖父
さて、ここに蒼崎姉妹の祖父にあたる魔術師がいました。
この人も魔術師なので、根源への到達を最終目的にしていた。
なので彼は、どうしたら根源に到達できるのか、どうして今まで根源に到達できないのかということを本質的なところで考えた。
・膨大なエネルギーがあれば根源に至れる。
・根源に至れば膨大なエネルギーを得られる。
そこでトンチのきいた蒼崎のおじいちゃん、こういうことを言い出したとしたらどうでしょう。
「根源に到達しさえすれば、膨大なエネルギーが手に入るんだからさぁ……」
「根源に至ったときに得られるエネルギーを使って根源に至ればいいんじゃね?」
つまりは、「因果」(原因と結果の関係性)を操作することができればいい。
この場合は、原因と結果の順序をひっくり返すことができればいい。
まず「根源に到達した」という結果を発生させてから、そのあとで「根源に到達するための膨大なエネルギーを放出する」という原因を発生させればいい。
(根源に到達すれば膨大なエネルギーが得られるのだから、まず根源に到達してエネルギーを得てから、それを放出すればよい)
だけどそんなことどうやって実現するんだ……という話になりますが、この「因果の逆転現象」、どうやら神々の住まう神代においては部分的に実現できていたらしいじゃん、ということに蒼崎祖父は気づく。
たとえばクー・フーリンが持っていた宝具ゲイボルグ。これは「因果を逆転し、まず『目標に当たる』という結果を発生させてから、原因となる槍投げを行う」なんていう特殊効果を持った槍でした。
また、バゼットが代々受け継いでいた法具フラガラックも、よく似た因果逆転の能力を持っていました。
こういうのを研究して、
「根源に到達するという結果を発生させてから、膨大エネルギー放出という『原因の槍投げ』を行う」
という現象を、たった一回限りでよいから大々的に再現することができれば、根源に到達することができる。
上記のようなことを蒼崎祖父は実現したんだろう、と、私は考えます。
だから私の説ではこうなります。
「魔法:青の正体は『因果の操作』である」
この魔法のメソッドは、「根源に到達したという結果を得てから、根源へ向けて旅立つ」ので、なんと、
「第五魔法は“根源に到達した結果”獲得された」
という命題は真となります。
(ただし、「第五魔法は“根源を目指すための手段”として開発された」も真となります)
●青子が実現した奇跡のしくみ
なぜ「因果の逆転」ではなく「因果の操作」なのかというと、
「静希草十郎の死の瞬間をはるか未来へふっとばす」
ということをしているからです。
静希草十郎の死を遠くに吹き飛ばすためには、「静希草十郎が致命傷を受ける」という原因と、「静希草十郎が死ぬ」という結果を結んでいる細い糸を、びよんびよんに引き伸ばして遠くに放り投げる、ということができないといけません。
これは単純な位置の入れ替えでは説明がつきません。
だから「操作」だとしています。
「10年後の自分を今ここに取り寄せる」という現象は、「今の自分という原因」と「未来の自分という結果」の間に結ばれている糸を、きゅっとたぐりよせることで実現しているのかなと思います。
(今の自分と未来の自分を「逆転」させることでも同様の現象は起こせそうな気がする)
おそらく、根源に至るために使用されたメソッドが「因果の逆転」で、根源に至ったことで手に入った魔法が「因果の操作」なのじゃないかな、と考えます。
(「因果の操作」の中に、逆転も含まれる)
「因果関係をいじくる術」を開発して根源に到達してみたら、そこで手に入ったのは「因果関係をいじくる術」だった……いわば「宝は宝の地図だった」ということになるので、結末としても、ますますトンチがきいている。
(ひょっとしてこれが、「そして終わりの五つ目は、とっくに意義(せき) を失っていた」というフレーズの意味かもしれない)
●青子が後継者に選ばれた理由
蒼崎青子は、「静希草十郎が死なないという別の結果」を用意することはできなかったようなので、「ひとつの原因から発生しうる別の可能性を選ぶ」というようなことは、おそらくできないっぽいですね。
おそらく、青子の第五魔法の範疇では、「原因と結果は一意に紐づいていて、それを任意に切り離したりはできない」ように見えます。
そしてそのこと自体が、
「第五魔法の後継者として青子が選ばれた理由」
(天才・蒼崎橙子が選ばれなかった理由)
だと考えます。
奈須きのこさんはウェブメディアのインタビューでこんなことをおっしゃってました。
4Gamer:TYPE-MOONの原点を辿る「魔法使いの夜」インタビュー。奈須きのこ&こやまひろかず&つくりものじ氏の3名に聞く,ノベルゲームの未来と可能性
続編があるということで,どうしても気になってしまうのですが,橙子ではなく青子が蒼崎の後継者に選ばれた理由というのは,作中では明確に語られていませんよね? これは今後のお楽しみ,ということなんでしょうか。
奈須氏:
ヒントは散りばめてますから,勘のいい人は気付くと思いますけど。青子の魔術回路の構造がヒントです。橙子の魔術回路は業界屈指のものだけど,蒼崎の第五魔法にはそんなもの必要なかった。むしろ青子の単純さこそもっとも適している,みたいな。
(4gamer.net)
これはたとえばの話なんですが、もし仮に第五魔法が、
「十択の選択肢を百回連続で正解したら望む結末が得られる、その百回の正解を計算で導き出す」
というような、アトラス院がやってるような方法論だった場合、ものすごく複雑で精緻で計算力が高そうな魔術刻印を持った蒼崎橙子がまちがいなく後継者として選ばれたでしょう。
だけど本稿で提案している「第五魔法:青」の正体は、そんなややこしいしろものじゃありません。
一対一で対応している「原因」と「結果」を、最短距離で、なるべく力強く「直線的に」結ぶことができればOKなのです。
蒼崎青子の魔術刻印は、性能としては人並み程度とされていますが、そのかわりシンプルで頑丈で、ひじょうに燃費が良いといわれています。
そして蒼崎青子は、「ものを壊すという分野に限っては超一流の魔術師」といわれており、彼女の得意技は魔術の弾丸やビームを撃ち出すことなのです。
あえて恣意的に言い換えれば、蒼崎青子の生まれ持った魔術刻印は「砲弾を撃ち出す大砲の砲身」のような構造であって、「自分と攻撃対象の間を直線的に最短距離で結ぶ」ことに特化したかたちをしているのです。
これは本稿で想定している「第五魔法:青」を扱うために生まれてきたような特質だといえそうです。
●逆行運河・創世光年
対戦格闘ゲーム『メルティブラッド』シリーズに登場する蒼崎青子は、ラストアーク(条件が揃ったときに発動できる高威力の必殺技)として「逆行運河・創世光年」という技を使います。
本稿の説では、第五魔法の獲得メソッドは、
「通常なら原因→結果という方向にだけ流れる運河のごとき因果を『逆行』し、『創世』の力が流れ出す根源に到達する」
というものなので、整合している感はある。
ところで、『FGO』の1.5部ティザームービーにて、ゲーティアの企みの計画名が「逆行運河 / 創世光年」である、と明かされました。蒼崎青子のラストアーク名と、ゲーティアの大計画の名称がほとんど同じであるということになります。
極点へ至る試みFate/Grand Order【新章】 -Epic of Remnant- PV
人類史全てを用いた彼方への旅
魔術王を名乗ったモノの計画
逆行運河 / 創世光年は失敗に終わった
これについて、奈須きのこさんは、前述のウェブメディアでこうおっしゃっています。
奈須氏:「Fate/Grand Order」がもたらす新しいスマホゲームの形――奈須きのこ×塩川洋介が語るFGOの軌跡と未来とは
一方で,人類悪であるゲーティアは,なんだかんだ言っても人間が大好きなんで,彼なりに人間のための最適解を考え,人間が持つ苦しみをなんとか乗り越えようとした。その結果が,「もう一度,死の概念を持たない知的生命体を,ゼロから造り出して解決する」という選択だった。
4Gamer:
その行為が,「逆行運河/創世光年」(※)なのですか?
※1.5部のティザームービーより。ナレーションにて,魔術王を名乗ったモノの計画が「逆行運河/創世光年」であると語られた。この名称は,「MELTY BLOOD」シリーズに登場する蒼崎青子のラストアークと同名である。
奈須氏:
ええ。「ゼロに戻ってから良い前提を作り直す」というゲーティアの選択は,ある意味,魔法に近しい行為だった。あのPVはむしろ,ゲーティアを知ることで青子の痕跡や第五魔法の一端が知れるという,逆の伏線というか……。奈須きのこの,ささやかなサービス精神です(笑)。
(4gamer.net)
奈須きのこさんがここでおっしゃることによれば、「技名が同じなのは、第五魔法の中身を類推するためのヒントであるからだ」と。
ゲーティアがやっていることを解析すれば、第五魔法の正体や、青子のやろうとしていることがわかるはずだと。そういうことをおっしゃっている(というふうに読める)。
ゲーティアというのは『FGO』第一部のラスボスでした。
作中、彼はこういうことを考えた。
「人類というのは、もはやこれ以上の進歩は見込めないし、何より、苦しんで生きて死んでいく姿が見るにたえない」
「そもそも、人類が『こういう生き物』として発生したこと自体がまちがいだ」
「いったん地球をリセットして、ゼロから人類をデザインしなおすことができたらいいのに」
「そうだ、現行の人類が積み上げてきた文明や、歴史の厚みそのものを燃やして燃料にすれば、その膨大なエネルギーを使って、46億年前という『地球が生まれたとき』にまで、戻ることができるんじゃないのか」
「よし、人類の歴史を燃やしたエネルギーで地球をゼロからやりなおそう」
こういう突拍子もない計画の名前が、「逆行運河 / 創世光年」である……ということになっている。そしてこの計画名は、第五魔法の使い手の必殺技名と同名である。
このゲーティアの計画、よく考えてみると、本稿で論じている「第五魔法獲得メソッド」と酷似しています。
因果関係をごく単純に記述するとこうなります。
■原因:地球が誕生した。
■結果:地球上で人類が歴史の厚みを積み上げた。
「因果関係」ですので、通常、原因から結果へ、川の流れのように一方向に流れます。
しかしゲーティアは、結果の位置に「人類の歴史の厚み」という「膨大なエネルギー源」が置いてあることに着目した。
この膨大なエネルギーがあれば、「因果の逆転」現象を発生させることができるんじゃないのか。
つまり、結果が先にあり、そのあとに原因が来るように、入れ替えることができるはずだ。
人類の現状という「結果」が先にあり、そのあとに地球の誕生という「原因」が来るようにできるはずである。
ゲーティアの行おうとしたのが、上記のようなメソッドであった場合、これは「第五魔法獲得メソッド」とほぼ構造が同じです。
●第六魔法/第六法
そこでこういう疑問が生じそうです。
「ようするに『FGO』の第一部は、第五魔法をメインで扱った作品というわけなのか?」
私は、どうもそうではなさそうだよね、と感じます。
以下のように考えたいのです。
「『FGO』は、ゲーティアがやろうとしたことも、それを阻止しようとしたカルデアの面々の努力も、あらゆることをひっくるめて全てが『第六魔法』なんじゃないかな」
そういう意味のことを次回で言おうとしています。続きます。
続きはこちらです。TYPE-MOONの「魔法」(5):第六法という人類滅亡プログラム
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