たかが500円、されど500円

ある日の買い物でのことです。
息子と娘と三人で買い物に出かけました。
私と息子と娘、それぞれに別々の用事があり、３人で一緒に出かけることになりました。
私はツブを寝かしつけていたので、抱いたまま車に乗ってしまい、気づいたらお財布を持たずに家を出てきていました。
息子も娘もお金は持っているから大丈夫ということで、そのまま出かけることにしました。

私の目的の安売りのお店に入りました。
掘っ立て小屋に毛が生えたような店です。
お店に入ってから、娘に１万円札を借りました。
買い物をして、おつりを４６０２円もらいました。
千円札が４枚に５００円玉が１枚と百円玉１枚と１円玉が２枚です。
幸か不幸か、私がその日着ているものにはポケットがなく、おつりはレシートと共に手に持つことになりました。

そのままお店を出ようとしたのですが、もう一つ買い忘れているものに気づき、その品物を持ってレジへ行きました。
５００円でした。
手には、４６０２円持っていたので、その中から５００円玉をレジに出しました。
品物は、それまでに買った品物が入っている袋があったので
「ここに入れてください。」
と言って、持っていた袋にそのまま入れてもらいました。
品物を袋に入れてもらって立ち去ろうとしたところ、レジの人が、
「代金をもらっていません。」
と言います。
「はぁ？」
でした。
「間違いなく、お金をここに置きましたよ。」
と私は言ったのですが、レジの男の子は、納得しません。

そんなやり取りをしているうちに、私の列は、大行列になりました。
私は、手に持っているお金を再確認しましたが、先ほどもらったおつりの中に５００円玉は入っていません。
やっぱり思い違いではなく、５００円はレジの台に置いたと思いました。
手に持っているお金がすべてなので、すぐに確認できてこの時ばかりは、財布を持っていなくて良かったと思いました。

レジの人に品物を袋に入れてもらったりしてごちゃごちゃしている間にお金が落ちたかもしれないと思って、台の下も覗いてみましたが、お金は落ちていません。
面倒だからもう一度５００円を払っちゃおうかなぁという考えが頭をかすめましたが、それも納得がいきません。
たかが５００円ですが、二重払いする必要なんてないはずです。
５００円といえば、今や３８０円を足せばジーンズが買えちゃう時代ですよ～

他の人がやってきて、
「今、カメラでレジの様子を調べていますから」
と言います。
「へぇ～、こんな店にカメラなんて設置してあるんだ。
どこにそんなものがあるんだろう？」
と、きょろきょろあちこちを見て探しましたが、カメラの存在はわかりませんでした。

その店はカードは使えず、現金だけしか扱わないので、
「レジの中の現金と売り上げ金額を調べてもらえば、払ったかどうかすぐにわかるでしょう？」
と私は、言ったのですが、
「今、カメラを調べていますからもう少し待ってください。」
と言われました。

ずいぶん待たされました。
嫌になるほど待たされました。
幸いにも気の短い息子は、たまたま外にタバコを吸いに行っていたので、その騒動は知りませんでした。
「ずいぶん買い物に時間がかかるなぁ」とは、思っていたようです。

それだけ待たされた挙句、何人かお店の人がやってきて、手分けしてレジのお金を数え始めました。
そして現金とレジの合計を差し引くと、ぴったり５００円の誤差が出ました。

レジの男の子が、私が置いた５００円を無意識のうちにレジの中に入れてしまっていたのでした。
そういえばちょうどその時、お店の中でちょっとした事がありました。

私の前でレジを済ませた男性がお店を出るときに、入口付近にいた子供たちに向かって
「邪魔だ！どけ！」
と言って大声を上げたので、私を含めてお店の中にいた多くの人がそちらに気を取られていました。
それで、そのレジの男の子も５００円の存在を忘れてしまったのかもしれません。

それにしてもお店の人は全員誰も『すみません』でも『申し訳ありません』でもなく、いったい何なんだ？という感じでした。

帰りの車の中でそんな話をしていたら、息子に
「そういうことをここで言っても始まらないんだよ。
何で黙って出てきたんだよ。
そのときにはっきり『何なんだ？この店は？』って事を言ってこないと相手には伝わらないんだよ！」
と言われてしまいました。
なかなか面と向かっては言えない、気の弱い母です。

それにしても、考えてみて、あの店に本当に監視カメラなんてあったんだろうかと思うんですよね。
あの時もあちこちずいぶん見回したけれどカメラらしきものは、なかったように思うんです。
何のためにあんなに長い時間待たされたのか・・・ナゾだ！