私は、埼玉県の行田市で生まれ、小学校に入るまで、そこで暮らしていました。
私たちの家は、母の実家の近くにありました。
なので、私は、毎日のように母の実家に行っていました。
両親が家庭内工業を営んでいたので、私はつまらなくなるといつも母の実家に遊びに行きました。
そこには、年の離れたいとこがいて、祖母もいたので、それなりに私の相手をしてくれました。
今は、何てことないけれど、子供の頃にとても怖かったものってありませんか?
私は、母の実家に行く途中にある木のトンネルが怖かった。
そこは、うっそうと茂った林と林の間の暗い木のトンネルでした。
誰かが林を切り開いて、通り道を作ったんだと思います。
大人の身長ぎりぎりくらいの高さの低い木が密集した林だったので、その木のトンネルは、かなり暗い感じがしました。
子供が秘密の花園へ向かう途中の木のトンネルのような感じです。
母から
「あそこは怖いから行ってはダメ」
と言われていました。
何が怖いのか、何か怖いものが出るのか具体的な話がなかったので、余計にその怖いものを想像して怖さが倍増していたように思います。
当時は、そのトンネルに近づくこともできなかったので、中がどうなっているのかすらわからず、それが、また怖さをつのらせました。
本当は、母の実家に行くには、その木のトンネルを通るとかなり近道だったのですが、私は、わざわざ遠回りをして広い大通りを通って母の実家へ行っていました。
今思えば、「あそこは、怖い場所」というのは、仕事が急がしく、十分私に眼が行き届かなかった母の知恵だったんだろうと思います。
というのも、そこは人気がないので、幼い娘が一人で通って誰かにいたずらされるような事故が起きたら大変・・・そんなことを母は心配して、私を近づけないようにしていたんだろうと思います。
もしかしたら、実際、何か小さな事件があったのかもしれません。
ある程度の年齢になってそこへ行ってみたとき、確かに木で覆われて暗かったけれど、すぐに出口が見えるようななんてことのない場所でした。
木のトンネルは、私の子供の頃の怖いものでしたが、まめたろうにとって怖いものは、『帽子のおじさん』でした。
どうしても言うことを聞かない時の奥の手が『帽子のおじさん』です。
初めに言い始めたのが近所の先輩ママさんでした。
近所のお兄ちゃんが「帽子のおじさんが来るよ」と言われると、怖がってすぐに言うことをきくのをまめは見ていて、帽子のおじさんなるものが、よほど怖いものとしてインプットされたようです。
まめの頭の中でその帽子のおじさんがどんなイメージとしてあるのか、全くわかりませんが、とにかく怖い存在だったようです。
道で帽子をかぶったおじさんに出会っても、どうってことはないんです。
まめの中の帽子のおじさんは、自分なりにイメージを膨らませた怖い存在だったようです。
夕方、いつまでも外で遊んでいて、なかなか家に入らない時
「帽子のおじさんが来るよ!」
というと泣きながら家に入ってきました。
外出先で、ダダをこねられて困り果てたとき、
「帽子のおじさんが連れに来るよ。あっ!あそこにいる!」
と言うと、ぴたっと泣き止みました。
現在、まめたろうは、5歳になり、帽子のおじさん効果もまったくなくなりました。
効果があったのは、3歳半くらいまでだったかなぁ。
当然、今ではへの河童。
扱いにくくなりました。
そして、ツブには『帽子のおじさん』は通用しません。
ツブには怖いものはないようです。
魔の二歳児、
何か、怖いものがあれば良いのに。