本日、今学期3回目のどこでも学校を開講しました。
今学期、これまでやって来た『西游记』の日本語訳とは別に『ひよこの眼』の中国語訳を始めることになりました。
『西游记』は、中国の学生なら誰でも知っている話で、日本語に翻訳するという語学的な面白さ(面白くなさ?)しかなく、それよりは日本や日本人のことがいろいろ発見できる日本の小説を中国訳した方が面白いと、ある学生が言ったことがきっかけでした。
『西游记』の場合は担当の学生が日本語訳したものを私が読み、日本語表現として不敵であったり、わかりにくいところを指摘し、みんなで考え、それに代わる表現を出しながら日本語訳を決定するという方法で進めて来ましたが、今回は、まず日本語を読み、それを理解しながら、Aさんが既に中国語訳したものをもとにみんなで考え確定していくという方法で進めることにしました。
本日確定した中国語訳を掲載します。
『ひよこの眼』①
その男子生徒の目を見た時、なぜか懐かしい気持ちに包まれたのだが、それがいったいどのような記憶から端を発しているのかが、私にはとっさに思い出せなかった。私は、その時、まだ中学三年生だったし、その年齢で懐かしがるべきことなど、ひとつもないように思えたから、せつない感情が霧のように胸を覆い、心を湿らせた時、私は驚き、そして混乱した。
当我看到那个男生眼睛的时候,不知为何有一种似曾相识的感觉,一时间我突然想不起来在记忆里的那种似曾相识来自何处。我那时还是初三的学生,在那个年龄段里,并没什么有可供我怀念的东西,可是当难过的心情就像水雾一样覆上心头并浸湿了我的心田的时候,我感到了惊讶并有些慌乱了。
彼、相沢幹生は、教壇に立ち、澄んだ瞳で、教室を見下ろしていた。私たちは、好奇心にあふれた様子で、その転校生を見つめて、ひそひそと内緒話を続けていたが、彼は、まったく動じない様子で、担任の教師が自分を紹介するのを聞いていた。
他叫相泽干生。班主任正在向我们介绍着他,我们看着这位转校生,大家按捺不住好奇心,在下边小声私语地谈论着他。而他则不动声色,用清澈的眼眸俯视着讲台下的一切,听着老师介绍。
「……というわけで、相沢は、きみたちと同じ場所で学ぶことになったわけだ。卒業までの短い間だが、どうか仲よくしてあげてくれたまえ。じゃ相沢、きみからも何か挨拶があるだろう。」
“……所以说,相泽要和你们在一起学习,距离毕业还有一段时间,大家要和他友好相处。那么,相泽,你也跟大家打声招呼吧。”
教師は促すように彼を見た。けれど、彼は、ただ立ち尽くしているだけだった。緊張してしまったのだろうかと、私は顔を上げて彼の顔を見た。ところがそうではなかった。彼は、落ち着いていた。そして、その澄んだ瞳をまばたきもせずに大きく見開いて何かを見ているようだった。何を見ていたのかは、まったくわからない。私には、彼が、空気中にある彼自身にしか見えないものを見つめているように思えた。つまり、彼は、教師のことばなどまったく耳に入れていないのを明らかに周囲にわからせてしまうほどに、うわのそらだったのだ。
老师投来殷切的目光,但是他还是一言不发地站在那里。我心想他一定是紧张了吧,于是抬起头来看了他一眼。然而并不是那么回事。他很镇定,而且,他一眨也不眨地睁大那双清澈的眼睛,好像是在看着什么。至于他看到了什么,我完全无从得知。我想是他在看空气中看到了只有他自己才能看到的东西。也就是说,老师说的话他完全没有听进去,大家都能看的出来,他一副心不在焉的样子。
教師は、顔を赤らめて、咳払いをした。
「おい、相沢、おい、聞いているのか」
彼は、ふと我に返ったように、怪訝な表情で、教師を見た。
「挨拶ぐらいできんのか、おまえは。」
老师脸有点泛红,他清了清嗓子继续说道:“喂,相泽,喂,你有在听我说话吗?”
他这才一下子回过神来,用诧异的眼神看向老师。
“你连跟大家打声招呼都做不到吗?”
彼は、小さく肩をすくめて、頭を下げた。私たちは、いっせいに吹き出した。同じ年齢にしては、妙に超然とした雰囲気が、おかしかった。私たちのほとんどが、担任教師を嫌っていたので、彼のような態度は、私たちの気に入った。教室のいちばん後ろに用意された席に、彼が歩いて行く時、私たちは、目配せを交わし合った。こうして、幹生は、私たちのクラスの一員になった。
听了老师的话,他缩紧小小的肩膀,低下了头。我们一齐笑出了声。他明明跟我们一个年纪,对此却毫不在乎的样子,真的很奇怪。班上大部分人都不喜欢班主任,所以我们对他不把老师当回事的态度很满意。在他走向教室最后一排为他安排的座位时,我和周围的同学们互相使了个眼色。此后,干生成了我们班的一员。
幹生は、自分から、他の生徒と積極的にことばを交わそうとはしなかったが、そのひょうひょうとした様子は、みんなの気を引くのに十分だった。休み時間になると、何人かの男子生徒が彼のところに行き、彼を質問責めにした。そして、少し離れた場所で、女子生徒が彼らの会話に耳を傾けた。みんな、季節外れの転校生の秘密を知りたがっていた。けれど、幹生は、個人的な事情などは、うまいぐあいに、避けてことばを選びながら会話を交わしていたので、私たちは、彼の前の学校でのことを少しばかり知るだけだった。
干生在班级里并不会主动地和其他同学聊天,但他悠然的样子足够引起大家对他的兴趣。一到课间休息时间,就会有几个男生去他座位边上,问他一些问题。然后,在离他不远的地方,女生们就聚在一起细听他们在聊什么。大家都想知道,不在开学季转学的转校生有什么秘密。可是,干生总是巧妙地避开自己事情和男生聊天。因此我们对他在之前的学校里发生过什么事情知之甚少。
今学期、これまでやって来た『西游记』の日本語訳とは別に『ひよこの眼』の中国語訳を始めることになりました。
『西游记』は、中国の学生なら誰でも知っている話で、日本語に翻訳するという語学的な面白さ(面白くなさ?)しかなく、それよりは日本や日本人のことがいろいろ発見できる日本の小説を中国訳した方が面白いと、ある学生が言ったことがきっかけでした。
『西游记』の場合は担当の学生が日本語訳したものを私が読み、日本語表現として不敵であったり、わかりにくいところを指摘し、みんなで考え、それに代わる表現を出しながら日本語訳を決定するという方法で進めて来ましたが、今回は、まず日本語を読み、それを理解しながら、Aさんが既に中国語訳したものをもとにみんなで考え確定していくという方法で進めることにしました。
本日確定した中国語訳を掲載します。
『ひよこの眼』①
その男子生徒の目を見た時、なぜか懐かしい気持ちに包まれたのだが、それがいったいどのような記憶から端を発しているのかが、私にはとっさに思い出せなかった。私は、その時、まだ中学三年生だったし、その年齢で懐かしがるべきことなど、ひとつもないように思えたから、せつない感情が霧のように胸を覆い、心を湿らせた時、私は驚き、そして混乱した。
当我看到那个男生眼睛的时候,不知为何有一种似曾相识的感觉,一时间我突然想不起来在记忆里的那种似曾相识来自何处。我那时还是初三的学生,在那个年龄段里,并没什么有可供我怀念的东西,可是当难过的心情就像水雾一样覆上心头并浸湿了我的心田的时候,我感到了惊讶并有些慌乱了。
彼、相沢幹生は、教壇に立ち、澄んだ瞳で、教室を見下ろしていた。私たちは、好奇心にあふれた様子で、その転校生を見つめて、ひそひそと内緒話を続けていたが、彼は、まったく動じない様子で、担任の教師が自分を紹介するのを聞いていた。
他叫相泽干生。班主任正在向我们介绍着他,我们看着这位转校生,大家按捺不住好奇心,在下边小声私语地谈论着他。而他则不动声色,用清澈的眼眸俯视着讲台下的一切,听着老师介绍。
「……というわけで、相沢は、きみたちと同じ場所で学ぶことになったわけだ。卒業までの短い間だが、どうか仲よくしてあげてくれたまえ。じゃ相沢、きみからも何か挨拶があるだろう。」
“……所以说,相泽要和你们在一起学习,距离毕业还有一段时间,大家要和他友好相处。那么,相泽,你也跟大家打声招呼吧。”
教師は促すように彼を見た。けれど、彼は、ただ立ち尽くしているだけだった。緊張してしまったのだろうかと、私は顔を上げて彼の顔を見た。ところがそうではなかった。彼は、落ち着いていた。そして、その澄んだ瞳をまばたきもせずに大きく見開いて何かを見ているようだった。何を見ていたのかは、まったくわからない。私には、彼が、空気中にある彼自身にしか見えないものを見つめているように思えた。つまり、彼は、教師のことばなどまったく耳に入れていないのを明らかに周囲にわからせてしまうほどに、うわのそらだったのだ。
老师投来殷切的目光,但是他还是一言不发地站在那里。我心想他一定是紧张了吧,于是抬起头来看了他一眼。然而并不是那么回事。他很镇定,而且,他一眨也不眨地睁大那双清澈的眼睛,好像是在看着什么。至于他看到了什么,我完全无从得知。我想是他在看空气中看到了只有他自己才能看到的东西。也就是说,老师说的话他完全没有听进去,大家都能看的出来,他一副心不在焉的样子。
教師は、顔を赤らめて、咳払いをした。
「おい、相沢、おい、聞いているのか」
彼は、ふと我に返ったように、怪訝な表情で、教師を見た。
「挨拶ぐらいできんのか、おまえは。」
老师脸有点泛红,他清了清嗓子继续说道:“喂,相泽,喂,你有在听我说话吗?”
他这才一下子回过神来,用诧异的眼神看向老师。
“你连跟大家打声招呼都做不到吗?”
彼は、小さく肩をすくめて、頭を下げた。私たちは、いっせいに吹き出した。同じ年齢にしては、妙に超然とした雰囲気が、おかしかった。私たちのほとんどが、担任教師を嫌っていたので、彼のような態度は、私たちの気に入った。教室のいちばん後ろに用意された席に、彼が歩いて行く時、私たちは、目配せを交わし合った。こうして、幹生は、私たちのクラスの一員になった。
听了老师的话,他缩紧小小的肩膀,低下了头。我们一齐笑出了声。他明明跟我们一个年纪,对此却毫不在乎的样子,真的很奇怪。班上大部分人都不喜欢班主任,所以我们对他不把老师当回事的态度很满意。在他走向教室最后一排为他安排的座位时,我和周围的同学们互相使了个眼色。此后,干生成了我们班的一员。
幹生は、自分から、他の生徒と積極的にことばを交わそうとはしなかったが、そのひょうひょうとした様子は、みんなの気を引くのに十分だった。休み時間になると、何人かの男子生徒が彼のところに行き、彼を質問責めにした。そして、少し離れた場所で、女子生徒が彼らの会話に耳を傾けた。みんな、季節外れの転校生の秘密を知りたがっていた。けれど、幹生は、個人的な事情などは、うまいぐあいに、避けてことばを選びながら会話を交わしていたので、私たちは、彼の前の学校でのことを少しばかり知るだけだった。
干生在班级里并不会主动地和其他同学聊天,但他悠然的样子足够引起大家对他的兴趣。一到课间休息时间,就会有几个男生去他座位边上,问他一些问题。然后,在离他不远的地方,女生们就聚在一起细听他们在聊什么。大家都想知道,不在开学季转学的转校生有什么秘密。可是,干生总是巧妙地避开自己事情和男生聊天。因此我们对他在之前的学校里发生过什么事情知之甚少。
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