からたちばやしのてんとうむし 作・絵:かこ さとし出版社:偕成社 |
「からたちばやしのてんとうむし」
からたちばやしの森の奥に暮らすてんとう虫たちのなかに、「てんとだいじん」と呼ばれ嫌がられている、いじわるで欲ばりのにじゅうやほしてんとうがいました。
春、このてんとだいじんに子供が生まれると、みんな意地悪されるのが嫌でご祝儀を持っておいわいにかけつけ、おべっかを使います。そこでひとり、つい本音を漏らしてしまったふたほしてんとうは、見せしめに「ひりひりけがわのけむし」の前に投げ出されてしまいます。
夏になって、また事件が起こります。
「じゃがいもアイスでもたべすぎたのか、うまれたばかりのてんとだいじんのこどもがぽっくりしんでしまいました」
みんなは困りました。
「このまえのおいわいのときはせんえんだったけど、こんどはおそうしきだから、はんぶんじゃいけないかね」
「ぽっくりしんで」にも驚きましたが、子供が死んだのを気の毒がる者はおらず、金額に悩むとか、生々しくて、「エー!」と声に出して驚いてしまいました。
息子も、私が読む前「それ悲しいよ…」と予告してましたが。
その後、黒装束の偽装がバレてよつぼしてんとうがありじごくに落とされ、殺されてしまいます。なんというか、容赦ありません。
てんとだいじんの暴虐におびえながらも秋祭りを迎えたテントウムシたち。てんとだいじんの気分を損ねないよう祭りの装いでがんばりますが、またしてもてんとだいじんの怒りを買う出来事が起こります。
ただ、このとき「きゅうりざけでげんきになっていた むつぼしてんとう」が、いいかげんにしろ!と抗議する急展開。だんだらぐもの巣にほうり投げられ、あわや食べられてしまうというそのとき、強風が吹いてだんだらぐもも、むつぼしてんとうも、てんとだいじんも、みんな吹き飛ばされてしまいます。
冬になり、のこったみんなは寒さに凍えながら落ち葉の下でからだをよせあい、春を待ちます。
皆を脅かしてきたものはすべていなくなり、春になったら、からたちばやしは「たのしいあそびばになることでしょう」と終わります。
息子は、「最後はヤッターで終わるよ」と言っていました。
かこさとし先生は、「四季の変化と身近な虫たちを描き、テントウムシの紋様や種類を織り込んだ理科教材としてこの絵本を描いた」そうですが、私が最初に読んだときには理科的な要素はまったく頭に入ってきませんでした。こうやって書き出してみると、たしかにな…という感じはするのですが。