芥川賞受賞作。それだけで素晴らしい小説なんだろう…というフィルターがかかりながら読む。
児童養護施設で暮らす小学5年生の男の子、集(しゅう)の一人称語りで綴られた日記のような小説。
小5の心理ってこういうものか、本当にはわからないし個人個人でもちがうはず。ただ、非常に生々しくリアルには感じた。
思春期のわずかに手前の年齢で、すでにかなり思春期。でも子どもの頼りなさや寄る辺なさをさざ波のように感じて切ない。
子どもの視点で貫かれているから、分からないことはわからないまま。それが子どもの世界ということなんだろう。わからないなりに、大人の顔色から大人の真意を見透かすようなところもある。若い実習生には期待しない(というか、大人全般に失望している)。おばあちゃんには気を使う。
園長先生を追いかけて、答えのない問いを続ける場面に胸が詰まった。子どもの苦しみ、この子個人の辛さや、理不尽と闘っている様が強く伝わってくる問いの連続。
塩を撒いたような地面をじっと見つめる描写に、なんとも言えない哀愁と子どもの無力感が伝わってきた。
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夜、配信で『星降る夜に』4話をみて再び二人のラブラブぶりにうっとりしていた。それは素敵なBGMの演出効果も大いにあるんだなと。
というのも、そこでこの小説のこの文章を思い出したから。
“今日のテレビは知らん映画が映ってる。いいところでそれしかないって曲が流れて、背景だけがあんなにぼんやりして人物を目立たせて。
(中略)
たとえば今悲しいんは、お父さんのせいではないな。映画と違って、広がっていく音楽なんか鳴りはせんのやから、自分の中で流すしかない。”
p62
孤独な少年の観察眼や生き方への覚悟みたいなものを感じて秀逸だと思う。