19世紀末のイギリス。上流階級で美貌の青年ドリアン・グレイは、画家である友人バジル・ホールワードの絵のモデルをしていて、年上の男性ヘンリー・ウォットン卿に出会う。彼によって自分の美貌や若さの価値、その儚さを自覚したドリアンは、美しい自分の肖像画を前に泣きながら「自分の代わりにこの絵が老いればいいのに」と願う。すると、後にそれが現実となってしまい…。
ヘンリー卿の若さと美貌礼賛があまりにも振り切れているので反感よりむしろ感心してしまった。自分も若くて美しい人には惹かれがちなので、本音は肯定する部分があるんだろう。
しかし小説の展開は、それらに溺れた者の末路やいかに、という話だった。10代の頃読んだつもりだったけど、すっかり忘れてて新鮮な驚きで楽しめた。新訳の読みやすさも大きいと思う。
ヘンリー卿の会話の妙やドリアンが若い女優を不幸にしてしまったときの葛藤、命を狙われる展開などが面白い一方で、ドリアンが芸術や美術品に凝ったという羅列はすごく退屈だった。
しかし、実はそれらに耽溺し収集する裏側で、ドリアンが男女問わず他人を弄んでいたんだな…と後から気がつき驚愕。具体的な描写はないのにドリアンが醜悪な自分の悪行から逃げていたことがよくわかった。
ドリアンは常に嫌なものを見ないようにする姿勢で、それは罪悪感から逃れたいという素朴な青年の一面を残しているとも言える。
しかし、老いを拒むということは、あらゆる現実から目をそむけ、自分の成長も拒むということだ。結局ドリアンは最後までアホな子のままだったという気もする。
怪奇小説というイメージがあったけど、結末をみると意外とまっとうというか、ワイルド実はすごく道徳的だったのねと思った。もしくはこういう風に道徳的な展開を読者の望む通り技巧的に書いたということだろうか。
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