ウィリアム・フォークナーの『野生の棕櫚』読書会の備忘録、続きです。(ネタバレありです)
●風太さん
確かに最初はすごく読みにくいというか、何が起こっているかよくわからなかったんですけど、読み進めるうちに特に「オールド・マン」の洪水の描写がすごくて盛り上がり、アクションアドベンチャーのワクワクする感じで、こっちの方が面白いと思って読んでました。
でも読み終わってしばらく経つとすごく「野生の棕櫚」が気になってきて、これもしかしたら面白かったのかなと思い始めて。
多分「野生の棕櫚」だけを読んでいたらとてもじゃないけど読みきれないと思ったんですね。
ちょうどそこに「オールド・マン」が挟まると、うまいことリズムが変わる。
これはこの小説の作りがうまく作用しているんじゃないかと思ったんですよ。一つずつ別々に読めるだろうけど、交互に読んでいく方が面白かったなと感じましたね。
「野生の棕櫚」の方は、男性(ハリー)が意図して流されていて、オールドマンの方が意図しないのに流されてしまっている。そこら辺を対比しているのかなと読み終わって思いました。
女性も同じように妊娠していたけれど、一方はあんな不潔な状況でちゃんと立派に産んで、一方、それよりは多少衛生的には大丈夫だったはずのシャーロットの方が結局堕胎に失敗して。ここら辺も対比されているのかなと。
オールドマンの方が健康的で、野生の棕櫚はひたすら病んでいる。
ハリーはずるずる流されていて何を考えてるか分からないけど、その割に友人に長々と自分語りをしますよね。最後の決断が遅くて、だからこそ失敗しちゃった部分もあるんでしょうが、最終的にこのままどうするのかなと思った時に、青酸カリを渡されて。
ハリーはずるずる流されていて何を考えてるか分からないけど、その割に友人に長々と自分語りをしますよね。最後の決断が遅くて、だからこそ失敗しちゃった部分もあるんでしょうが、最終的にこのままどうするのかなと思った時に、青酸カリを渡されて。
このまま飲むのかなと思ったら、それをバンバンなくなるように砕いて。そこに初めてこの人の意思の力を感じました。
ここでこの主人公はやっと自分の足で立って、罪を背負ったまま生きていく決心をここでしたのかなと。だらだら流されてきたモラトリアムというか自分探していたような子が、ここで初めて自分の存在意義を見つけたというか、生き方を確信したというか。この子の成長の話だったのかなと読めなくもない。
ここでこの主人公はやっと自分の足で立って、罪を背負ったまま生きていく決心をここでしたのかなと。だらだら流されてきたモラトリアムというか自分探していたような子が、ここで初めて自分の存在意義を見つけたというか、生き方を確信したというか。この子の成長の話だったのかなと読めなくもない。
だから「オールドマン」の方が面白いと思っていたけれど、だんだんいろんなことを考えていくにつれて「野生の棕櫚」ってすごく面白い話なんだなと思ったんです。
■妊娠出産は辛くて嫌だ、と表明してくれた
両作妊娠が出てきて、このシャーロットがどうしてそんなに出産を嫌がったのか。「妊娠は簡単にするんだけど、出産が苦しくて」と言っていましたよね。
この人にとってものすごくつらい出産を2回もしなきゃいけなかった。この時代だから、カトリックは避妊はもちろん堕胎もしちゃいけない。産まなきゃいけないのでやむを得ず産んだけれど、それがひたすら苦しかった。
その苦しい果てに産まれたものだから本当は母性で愛さなきゃいけないんだろうけど、もしかしたら愛せなかったのかもしれない。
そんなことが2回も続けられて、またもう一度そんな思いはしたくないというのがあったのかも。
当時も今も、そういう女性は母親としての自覚がないとか、世間的にはすごく責められる。でも、この時代に「こういうふうに感じる人もいる」ということを書いたのはすごいなと思うんですよね。
実際確かに出産は苦しいけど、これが女の仕事だし、母親になったら子供を可愛がって…というのが当たり前のように言われているけども、でも実際問題女の体としてすごくつらいこと。
それをはっきり「つらい」と表明したのはとても珍しいし、一つの真実だと思う。
女帝カテリーナも(ある作品で)「女の体ってなんて厄介なもんだろう」と言っていたように、妊娠と出産があることが、どれだけ女の体と行動を規制するものか。
いいことのように言われているけど、実際女性の体と生き方についてものすごい枷をはめているものだってことを、ここではっきり、この時代に書いてもらえるのがよかったなってすごく思うんですね。
そういうことを考えていると、これすごく面白い話だったんだなってことを感じました。
あとすごく印象に残ったのが、鉱山に行った時に「ゼリーのような冷気に包まれる」という表現があって、すごいなと。本当に体がグワッと冷気に包まれている感じがものすごくわかる表現だと感じました。
■妊娠出産は辛くて嫌だ、と表明してくれた
両作妊娠が出てきて、このシャーロットがどうしてそんなに出産を嫌がったのか。「妊娠は簡単にするんだけど、出産が苦しくて」と言っていましたよね。
この人にとってものすごくつらい出産を2回もしなきゃいけなかった。この時代だから、カトリックは避妊はもちろん堕胎もしちゃいけない。産まなきゃいけないのでやむを得ず産んだけれど、それがひたすら苦しかった。
その苦しい果てに産まれたものだから本当は母性で愛さなきゃいけないんだろうけど、もしかしたら愛せなかったのかもしれない。
そんなことが2回も続けられて、またもう一度そんな思いはしたくないというのがあったのかも。
当時も今も、そういう女性は母親としての自覚がないとか、世間的にはすごく責められる。でも、この時代に「こういうふうに感じる人もいる」ということを書いたのはすごいなと思うんですよね。
実際確かに出産は苦しいけど、これが女の仕事だし、母親になったら子供を可愛がって…というのが当たり前のように言われているけども、でも実際問題女の体としてすごくつらいこと。
それをはっきり「つらい」と表明したのはとても珍しいし、一つの真実だと思う。
女帝カテリーナも(ある作品で)「女の体ってなんて厄介なもんだろう」と言っていたように、妊娠と出産があることが、どれだけ女の体と行動を規制するものか。
いいことのように言われているけど、実際女性の体と生き方についてものすごい枷をはめているものだってことを、ここではっきり、この時代に書いてもらえるのがよかったなってすごく思うんですね。
そういうことを考えていると、これすごく面白い話だったんだなってことを感じました。
あとすごく印象に残ったのが、鉱山に行った時に「ゼリーのような冷気に包まれる」という表現があって、すごいなと。本当に体がグワッと冷気に包まれている感じがものすごくわかる表現だと感じました。
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ありがとうございました〜。ほんとに、私も読後に色々と考えさせられて、あとで考えると面白かったと思う作品でした。描写力にも度々唸らせられましたね。(スウ)
続きます!