ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

新・なんでもかんでもエクセルで作るな!

2020年07月17日 | 情報・通信システム

パソコンで資料を作るとき、なんでもかんでもエクセルで作ってしまう人、組織が存在します。しかしこれは、結果的に大変非効率であると同時に、迷惑ですらあります。個人事業主ならまだしも、小なりとはいえ組織やチームでこんな状態なのだとしたら、少なくとも事務処理に関しては「ダメ系組織(チーム)」なのです。

1.エクセルとは

一般に「エクセル」と呼ばれているものは、米国マイクロソフト社製の表計算ソフトです。もともとはパソコン向けの事務系アプリケーションとして世界的に普及してきたもので、いまではスマートフォンでも利用できますし(一部機能を除く)、ウェブブラウザ上で利用できる、無料版のMicrosoft Excel Onlineもあります(機能制限あり)。

エクセルは基本的に、縦横に区切られたマス目に数字(数値)や計算式などを入れておいて、自動計算させることが出来るものです。しかし、それだけではありません。
入力されたデータを様々な角度から分析できる機能や、グラフ化する機能、利用者が独自に組み立てた動作を自動実行させるマクロ機能、別のソフトウェアと連携させる機能など、使いこなせればかなり高度なこともできます。

さてここで問題なのは、高度な機能は利用していないにしても、「主要ではない機能を活用し過ぎてしまう」ということなのです。
エクセルは表計算ソフトと言いながら、マス目にテキスト(文章)を書き込むこともできますし、付箋紙や写真などを表に張り付けるようなこともできます。いきおい「なんでもかんでもエクセルで」という発想になりがちです。

しかし、この発想こそが大きな問題です。
事務処理効率の低下はもちろん、仕事の意味や内容そのものが個人や組織レベルでぼやけてしまったり、場合によっては「仕事をしているふり」さえできてしまったりするからです。

2.悪い例「エクセルで文書をつくる」

ここからは「エクセル」を「Excel」と表記します。

たとえば、何かを説明したり案内したりする文書を作る場合を考えてみましょう。
ここでまず考えなければならないのは、「文書」とは一定の構造や流れといった、文を紡(つむ)いでいく上での規則があるのだということです。
すなわち、タイトルがあり、大見出しや中見出しなどがあり、本文があり、注釈があったりするということです。図や写真を適切な位置に挿入するということもあるでしょう。

また話の前後関係や展開、つまり流れというものも大切で、どういった順序で文章を進めていくかということや、中項目であるべき事柄が大項目に上がってしまうようなことの無いよう、文章のかたまりごとの「重み」を揃えて構成しなければ、人に読んでもらうための文章とはなりません。

であれば、文章を編集するという作業こそに焦点を当てた、使いやすいアプリケーションであることが求められます。
話の流れを考えてすぐに入れ替えてみたり、大項目や中項目を差し替えてみたり、あるいは文章の配置を変更しても、関連する図がついて回るように場所を変えるといったようなことも必要です。

しかしExcelで作る場合は、そうはいきません。
そもそもいま述べたような文章編集の考え方自体がExcelには存在しないからです。その結果、画面上であれ印刷した紙面上であれ、かなり見づらい「文の羅列」になってしまいます。
セルのサイズなどを細かく調整したり、セル内の文字位置を揃えるのにスペースなどを使ったりしても、それは単に画面上での見た目を揃えているだけであり、文章としての論理的な構造などは一切考慮されていない状態です。

そのため文章全体の構成を検討することも困難となり、修正しようとすればおそろしく長い時間がかかり、とても現実的ではありません。
読む人にとっても、自分の中で整理整頓しながら理解を進めることが難しく、結局は肝心の内容がきちんと伝わらないものになってしまいます。

まして、職場などで他の人(や後任の人)と共同して作業を行うシーンでは、その「文書」の修正や編集といった再利用がほぼ100%不可能となり、迷惑なことこの上ありません。仮にこれが組織レベルで常態化しているようであれば、組織としての事務効率は著しく下がっているはずです。見えない人件費といえるかもしれません。

3.ハウツー本の功罪

既述のようにExcelはとても高機能で柔軟であり、「一般事務作業ならなんでもできる」と考えてしまうのも、無理はないかもしれません。
事実、書店に行くとExcelに関する入門書や応用本などがとても多いことに気づきます。Excelだけを一生懸命勉強しておけば、ほかのソフトを覚えなくても問題なさそうな気分にすらなってしまいます。

なかには、「まずは縦横のマス目を細かい正方形に設定しましょう」というものまであります。これはおそらく、Excelを描画ツールとして活用しようという考え方の表れでしょう。しかしマス目の表(スプレッドシート)は、一つひとつのマス目に機能を持たせるためのものであって、図表を配置したりするためのレイアウトグリッドなどではありません。こういった使い方は、あくまでExcelの特殊な応用例です。

こうした関連書籍の充実なども手伝ってExcel研究家が増えていくためか、「ほかのソフト覚えなくてもExcelだけで何でもできんじゃん」とか、「オレはExcelの高度な使い方を知っているゼ」といったような、やっかいな人々が現れてきます。
新しく入った会社や部署で、「このデータはこのExcel(ファイル)で管理しているから」などといわれ、事務作業の方法がExcelで「岩盤管理」されている場合がよくあります。

おそらく最初の段階で、職場の「パソコンに詳しい人」、「Excel博士」がつくった雛形を何年も使いまわし、パターン認識的に仕事をしてきたのでしょう。そのため、ひとつのExcelファイルが膨大なファイルサイズになってしまっていて、開いたり閉じたりするだけで時間がかかっている例もよく見聞きします。
さらに、そのExcelファイルを場当たり的に修正しつづけたため、「あ、そういう時はウチの場合、こうやってんのよ」といった、(情報処理的に)わけのわからない作業が増えていたりします。

最悪なのは、Excel博士が作り上げた複雑なマクロです。なにか修正しようにもその人がいないと困難ですし、辞めてしまった場合などはそれを使い続けるしかありません。仮に新しいExcel博士が入ってきたとしても、他人がつくったマクロ(VBAコード)を修正するのは「ほぼ無理に近い困難」なことです(個性が現れやすい部分でもあり作成者が何をしようとしていたのか意味不明だったりするため)。 そして、Excelのバージョンアップなどでそのマクロが正常に機能しなくなった場合は、もうお手上げです(「バージョンアップ」は和製英語。正しくはUpgradeまたはVersion Upgrade)。

4.使い分けと連携こそがオフィス製品のキモ

Excelという「ある一つのオフィスソフト」だけを、あれこれ活用・応用して仕事に使うことは、誤ったIT化です。
Excelは本来、「オフィス・スイート」と呼ばれる複数の事務系ソフトウェアを、パッケージにしたものの一部です。そして、これら複数の事務系ソフトウェアを正しく使い分けたり、データ的に連携させたりして使うことで最大の効率化を生むものです。

そもそも、個々のオフィス製品が、どういうふうに使用されることを想定して開発されているか、その主要機能を端的に説明できるでしょうか。

Word(ワード)
紙に印刷する文書を作成する。「大・中・小項目」といった構造的な文章を作成しやすいアウトライン編集など、強力な編集機能を備える。
Excel(エクセル)
表形式の電子シートで多種多様な「計算」を行う。電子帳簿と言い換えても過言ではない。
PowerPoint(パワーポイント)
プロジェクター等を使用して大勢の人の前で何かを説明するときのスライドを作る。
Access(アクセス)
一定の規則でまとめられた大量のデータを保存、加工、抽出する。ただしその規模は1台のパソコンで扱うレベル。
Publisher(パブリッシャー)
はがき、張り紙、ちょっとした看板など、多様な印刷物をデザインし作成する。
OneNote(ワンノート)
多機能なメモ帳。文字や画像、音声までも、バインダー感覚の画面に放り込んでおいて、整理・再利用する。

確かに各アプリケーションは機能が豊富であるため、たとえばワードで(簡単な)表計算を行ったり、エクセルでちょっとした手順書のような文書を作成したりすることも可能ではあります。
しかし、このように主要ではない機能を主要機能として使ってしまうことは、本来のオフィス製品の使い方ではないのです。

5.まとめ

オフィス製品はなにも「Microsoft Office」だけに限りません。しかし、いずれのものであっても共通することがあります。一般事務作業の効率化を目指すのであれば、ひとつのアプリケーションを徹底的に使いこなすという考え方ではなく、それぞれのアプリケーションを使い分けることが大切です。

使い分けが出来るようになって、さらに組織やチームのスキルが上がってくれば、つぎはデータ連携という方法も見えてきます。
データ連携は技術的な説明がやや複雑になるためここでは省略しますが、もし「なんじゃそれ?」と興味を持った方は、Wordを起動し、[挿入]-[表]-[Excelワークシート]と操作して、いじってみるのもいいかもしれません(あくまで連携イメージを感じるための一例です)。

いずれにしろ、「なんでもかんでもエクセル」という発想から抜け出せないのであれば、厳しい言い方をすれば「パソコンごっこ」のレベルです。仕事としてオフィス製品を使うのであれば、適切な使い分けがとても大切です。
もちろん、雇用創出を第一に考えている企業であれば、二度手間三度手間をやったり、意味不明な文章の読解に、有能な社員が時間を費やしたりすることも許されるのかもしれません。

※今回のスレッド(投稿)は、2017年03月26日に投稿した「何でもかんでもエクセルで作るな!」を再編集したものです。


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