ハナウマ・ブログ

'00年代「ハワイ、ガイドブックに載らない情報」で一世を風靡した?花馬米(はなうま・べい)のブログです。

「エクセル年表」の愉しみ(その2)

2020年12月02日 | 情報・通信システム

以前に投稿した「『エクセル年表』の愉しみ」の余聞を中心に、続編を書いてみる。なお本稿は、前の投稿をお読みになっているという前提で開始する。

作りはじめは項目列を少なめに

前回、私の作っているエクセル年表の項目名を紹介したが、作り始めはやはり項目数は少ない方がいい。ある程度情報が埋まってきて、列を分けたほうが見やすいと感じたら、そこではじめて作業を行えばいいと思う。はじめからあまりに項目数が多いと「横スクロール」が頻繁に必要となり使いにくい。また列を「非表示」にしたり「再表示」したりするのも面倒くさいし、操作ミスも起きやすくなる。
それに、ある程度内容が増えてきて列を分ける作業もまた楽しいものだ。例えば初めは日本史と世界史を同じ列に記入しておいて、ある程度埋まってきたところで世界史だけを新しい列に移動するということもあるだろう。あるいは「世界史」という一つの列を、ヨーロッパ、米大陸、ユーラシア・中東、東アジアなどと分けていくなんていうこともあるかもしれない。
細かい作業にはなるけれど、あらためてその年その頃が、まさに地球儀を俯瞰するような感覚で立体的に浮かび上がってくる。

ところで、こういったセル内テキストの一部だけを別のセルに移す作業というのは、落ち着いて丁寧にやる必要がある。特にノートパソコンなどの場合、気づかないうちにタッチパッドに親指の付け根が触れていたりして、誤った作業を一生懸命やっていたりする場合もある(マウスを使用し、タッチパッドが無反応になるようにするとよい)。
マウスを使う場合でも、ワイヤレスマウスでは電池の消耗などが原因で、スムーズに「ドラッグ」→「切り取り」→「貼り付け」と進まないことがある。手元操作系は常によい状態に整備しておきたい。
また、エクセル画面の下辺右端にあるスライダーを使って、一時的に画面表示の拡大率を変更して作業するのもいい。

過去へ行くほどアバウトでOK

いったい、縦横の線で区切られた表に文字を入力する作業をしていると、正しい場所に正しく整理していきたくなるものだ。これはまぁ当然の感覚だし、そうでなくては意味がない。しかしあまりにこだわりすぎると、逆に歴史の大きな流れをつかむことが出来ず、ひどい場合はパソコン作業を自らに課しているだけの苦しい作業になってしまう。
より正確な歴史年表を目指すならともかく、筆者は歴史の流れやリズム、転換点のようなものを(自分なりに)つかむことこそが重要だと考えているので、その出来事が西暦何年に起きたかということ自体にはあまり重きを置いていない。まして自分が生まれる以前の期間なら、過去に遡ればさかのぼるほどアバウトでいいと考えている。

筆者の場合、歴史に関する情報ソースはおもにテレビ、書籍、新聞、Wikipedia、信頼できると判断したその他のウェブサイトだが、それらのコンテンツを制作・記述している人々も、その根拠を別のどこかから得ているはずだ。
つまりそれらの情報は、いつの時点での何を根拠にしているかによって年代のズレ、呼称の違いなどが生じてくる可能性はあるわけだ。
最近急にスピードアップしてきた歴史研究の進展にともなう新説、また物事の定義や解釈の違いなどが話題になったりしている。そうするとひとつの出来事を異なる年代に複数記入するようなことも起きてくる。そんな時筆者はそのまま複数年(複数行)に同じ出来事を記入しておくことにしている。以前から諸説あるもの、時を経て「定説」が変更となったものなどいろいろだが、とにかく決めつけないようにしている。

いい例が鎌倉幕府の成立時期である。
筆者の世代の「常識」は1192年であって、最近有力になってきたらしい1185年説には正直なところ違和感というか、大げさに言えば「信じていたものに裏切られた」かのような気持ちにすらなってしまう。しかしよく調べてみると、「なにをもって幕府成立と定義するのか」「そもそも幕府とはなにか」といった問題になってくることに気づく。筆者がちょっと調べた範囲でも、鎌倉幕府成立時期についてはザっと6つものとらえ方があるようだ。

ここでちょっと鎌倉幕府成立に関する寄り道をお許しいただきたい。
1180年説では、源頼朝が鎌倉の地で最初の公式文書を発したことを理由としている。
1183年説では、後白河法皇が頼朝に東国の支配権を認めたことを理由としている。
1184年説では、統治組織といえる公文所(くもんじょ:財政担当)、問注所(もんちゅうじょ:裁判機関)などを設置したことを理由としている。
1185年説では、壇ノ浦で平氏を滅亡させたあと、後白河法皇から守護(軍事警察権を持つ地方官)と地頭(土地の管理や年貢の徴収、治安維持)の任命権を授けられたことを理由としている。
1190年説では、頼朝が初めて朝廷に出向き、後白河法皇から右近衛大将に任命されたことを理由としている。
そして1192年説では、頼朝が征夷大将軍となったことを理由としている。

しかし考えてみれば、源平の戦いは5年の期間にも及んでいる。その長い期間をかけて西へ西へと平氏を追い詰めながら、少しずつ武家政権の形を整えていったのである。こうみると6ついずれの鎌倉幕府成立説も、あながち間違いだとは言い難い。
だいいち当時の日本において武家が政権を取るなんてことは前代未聞、史上初のことである。それまでこの世に存在しなかった統治組織の出来始めを定義しようとするのだから明確な一線を引くことは難しいといえる(ちなみに鎌倉時代直前の平安末期、平清盛の時期が武家政権のはじまりだとする見方もある。しかし彼ら伊勢平氏は天皇の外戚として朝廷の官位を占め、権勢をふるっていただけで、政治体制はほとんど旧来のままだった)。
さらに「幕府」という言葉自体、鎌倉時代はおろか明治時代ごろまでは一般に使われない言葉だったらしい。源氏、北条家、御家人たちは、「自分たちは幕府である」という意識すらなかったようなのだ。江戸時代以前を描いたドラマや映画で出てくる「幕府としては...」などというセリフは、時代考証的には正確ではないのかもしれない。

まぁこんなわけだから、歴史について自分説(あなた説)を唱えながら整理したって「全然OK」だと思うのだ(賛意が集まるかどうかは別)。
最近、テレビ番組でもやたらと「諸説あります」という文字が表示されるようになってきたが、そもそも人の世はこういうものなんだろうと筆者は思うことにしている。

そういえば筆者が中学生の時、縄文時代の遺跡から稲作を裏付ける発見があり大きなニュースになったことがあった。その少し後に行われた歴史のテストで筆者は、「稲作は何時代から始まったか」という設問に対して「縄文時代」と書いて見事に×をもらった。歴史担当の女性教師に抗議したところ、「確かにそれが本当なんだけど、試験の時は授業で習ったとおりにしてね」と言われた。幼い筆者はそのとき、この世でいう「正解」とは、こういうものなのだと悟ったような気がした。

クラウド・ストレージのしくみ

「エクセル年表」に関する前回の投稿で、ファイルの保存場所をクラウド・ストレージにすることをお勧めした。ところがある知人から「インターネットが切れたらどうにもならないじゃないか」という声を聞いた。
筆者は、「こりゃぁクラウド・ストレージの基本的な仕組みを説明しておかないと、不安ばかりが募ってしまう」と思ったので、ちょっと簡単にそのしくみを解説しておきたい。もちろん細かいことを解説しだせば辞典のような本が出来てしまうほどになってしまうから、初心者向けに大づかみなレベルにとどめておく。 またここでは、マイクロソフト社が提供するワン・ドライブ(以下、OneDrive)を例に解説するが、他社の同様なクラウド・ストレージ・サービスも基本的な仕組みはほぼ同じといえる。

まず、「インターネットが切れたらどうにもならない」というのは、おそらく「手元のパソコンやスマホの中にはエクセル年表のファイルが存在しておらず、インターネットの向こう側のクラウドにしか存在していない」というイメージからくるものだと思う。しかし心配はいらない。ちゃんとシカケがある。
じつはインターネットの向こう側、クラウド側に預けてあるファイルは、必要に応じて手元のパソコンやスマホにも保存されるようになっているのだ。そしてそれら「複数の同一ファイル」は、自動的に最新の状態を保つよう「同期」が行われるようになっている。

ただし、すべてのファイルが手元の端末にも保存されるとすれば不都合なことも起きてくる。端末側の保存容量の問題だ。部屋に据え置きのデスクトップ型パソコンなどではそれほど心配ないかもしれないが、ノートパソコンやタブレット、スマートフォンなどは保存容量が少ないため困ることになる。
そこで、「手元端末には必要なファイルだけをコピーする」ということができるようにもなっている。というか基本的にその設定が標準的だ。端末内の容量が逼迫(ひっぱく)してきた場合にも、対象のファイルを選んで端末内のファイルを消す(クラウド側は消えない)ということも可能だ。

なお、便利な即時自動同期のしくみも場合によっては不都合なこともある。たとえばスマホなど操作しにくい端末を使っている時に大きな誤操作をしてしまい、直後にサッと自動的に上書き保存されてしまうという悲しいパターンだ。そんなときはPC上のExcelであれ、スマホ上のExcelアプリであれ、「自動保存(自動上書き保存)」を停止しておくこともできる。この場合はExcelファイルを閉じようとしたときに「いまの作業で加えた変更を保存するか、それとも破棄(なかったことに)するか」といった旨のダイアログが表示されるので、ここで判断することができる。

なおごくまれに、通信障害などの理由で同期がうまく行かないことも起こり得る。しかしそういう時でもちゃんと複数のバージョン(新版・旧版)を表示してくれるので、自分で判断して選ぶことが出来る。

それから、知っておくといざという時に助かるのが「バージョン履歴(改版履歴)」だ。
じつはクラウド・ストレージ側では、過去のいくつかのバージョンを「こっそり」保管してくれている。なんと、これまで何度も上書き保存してきたファイルの過去の姿を取り戻すことが出来るのである。たとえば、「この週末にやった作業を全部取り消して、前の週の状態に戻りたい!」と願う場合、それが可能ということだ。
この場合、最新バージョンのファイルと、過去のある時点の状態のファイルを独立して取り扱える(別の場所に保存、あるいは同じ場所で別の名前にして保存できる)ので、なにも最新の状態のファイルが失われてしまうわけではないので安心だ。

「バージョン履歴」は、パソコンで「Windows」+「E」のキー操作をしてWindowsエクスプローラーを表示させ、対象の(OneDrive上の)ファイルを右クリックし、「バージョン履歴」を選択する。
過去のバージョンが(存在していれば)一覧表示されるので、選んだバージョンの右端のポツポツをクリックすれば「復元」と「ダウンロード」が選択できる。
「ダウンロード」を選ぶと、過去のその時点のファイルが手元のパソコンの既定の場所にダウンロードされる。その際ファイル名は同一の状態なので、たとえばデスクトップ上に並べて比較検討したい場合などは、どちらかの名前の一部を変化させる必要がある。
なお「復元」を選ぶと、最新バージョンのものは失われ、単純に過去のある時点へ戻ってしまうので注意が必要だ。

クラウド・ストレージの費用

クラウド・ストレージは、いわば便利で安全な保存場所を借りるということだ。ここで気になるのは「借りる費用」と「発生する通信料」である。

現在、個人向けで有名なクラウド・ストレージ・サービスは、無料版(無償版)が提供されている場合がほとんどだ。ただし保存できる容量に制限があったり、紹介してきたような便利な機能が利用出来なかったりする。
とはいえ、まず無料版で始めておいて必要性を感じたら有料契約に移行すればいいのではないだろうか。有料版に移行する場合でも、なにか引っ越し作業のようなことをする必要はない。サービス提供会社との契約内容と、クラウド側の設定が変更されるだけのことである。
ただし、試しにつくったアカウント名が気に入らないからといって、新しいアカウントを作って契約しようというような場合は別だ。いったん自分のパソコンを経由するなどの「引っ越し作業」が必要となる。

通信料は個別の契約内容、通信環境によって一概には断言できないが、ちょっと気をつけておけばそれほど心配ないといえる。
まず、自宅など定額インターネット回線の環境下や無料接続環境であれば心配はいらない。問題は外出先などで通信キャリア(NTTドコモ、au、SoftBankなど)の回線を従量制で使っている場合である。
ただクラウドとの通信というのは、ちょっとした編集のたびにそのファイル全体がやり取りされているわけではなく、変更部分についてのみ通信が発生するようになっているようなので、あまり神経質になる必要もなさそうだ。
筆者の場合、基本的に外出先でスマートフォンを使ってあれこれ細かい作業をする人間ではないので、それほど毎月の請求は上がっていない。作業は基本的に自宅(の定額接続環境)で行うと決めているからだ。

私のエクセル年表

あらためて自分のエクセル年表を眺めてみた。
今年も残すところ1か月となり、来年は西暦2021年、令和3年である。
「換算」してみると来年は、平成33年、昭和96年、大正110年、明治154年である。昭和生まれの筆者は思わずため息が出てしまう。
ところがこの基準でさかのぼって調べていくと、明治151年にあたる2018年(平成30年)に政府は「明治150年」のイベントをやっている。さらに明治101年にあたる1968年(昭和43年)も政府は「明治百年記念式典」を行っている。
このズレは明治の齢(よわい)を「満」で数えるか、「数え」で数えるかの違いである。

明治の話題でつけくわえるならば、明治5年の12月はたった2日間しかなかった。なぜなら明治5年12月3日になるとともに、この日本は明治6年1月1日になったからだ。
これは日本がそれまでの天保暦(太陰太陽暦、旧暦)からグレゴリオ暦に切り替えたために起こったことである。それまで日本人が明治5年12月2日だとばかり思っていた日は、(グレゴリオ暦を使用している)世界から見れば、1872年の12月31日だったのである。今でいうならば、クリスマスも紅白歌合戦も日本レコード大賞もすっ飛んでしまったといえようか。
じつは当時きびしい財政難だった明治政府にとって、暦の変更は官吏(公務員)への報酬を減らすのに好都合だった、という話もある。

筆者のエクセル年表は、西暦3000年まで作ってある。そこに記入してあるのは「日本」の列にただ1行、「日本列島に住む人はわずか2,000人」とだけある。エクセル年表の未来を見てみると、正直なところ悲観的なことが圧倒的に多い。しかしこれは、悲観的な資料だけをもとに記入したからに過ぎない。
それに2019年に日本で出版され話題となった書籍「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」にもあるように、ゆっくりと改善されていく人類社会の進化は、センセーショナルな悪いニュースの前でかき消されてしまいがちである。古今東西いつも通りの日常や、少しずつよくなっている事柄というのはニュースにならないし、ほとんど話題にのぼらない。
だから悲観的になることはまったくない。それに希望というものは、統計や計算、論理的思考からのみ生まれてくるものではない。

それにしてもこのエクセル年表、ちょっとした思いつきで始めたものだったが、なにかライフワークのようになりそうな気がしている。
それは考えようによっては、この「私」という、せいぜい100年ちょっとしか生きられないホモ・サピエンスひとりの思考でもって、広大無辺な時空を旅してみようということでもある。とてつもなく柔軟な発想や思考で取り組むのが大切なのかもしれない。

関連リンク


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 甘すぎる情報セキュリティへ... | トップ | 「エクセル年表」の愉しみ(... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
5〜7年後の有用性は (おーじーうえもん)
2020-12-02 11:28:10
こんにちは
おーじーうえもんと申します
エクセルはここ20年ほど使っていて
非常に便利なソフトだと思っています
しかし、長く使うことにより
機能が陳腐化してしまう危険を抱えています
昨今のPC環境を見ると
5GなどCPUの高速化、OSのバージョンアップ、ソフトの対応、既存エクセルの陳腐化が起こっています
せっかく最新のエクセルでデータベースを設計しても
動画や3D対応、またはAIの影響を受けて古いエクセルは
廃棄されてしまいます
表計算には動画も3Dも必要ないのにです
そうして、古いエクセルで膨大なデータベースを構築しても、新しいエクセルではひらけなくなる恐れがあります
バージョンアップごとに費用がかかったり
クラウド化で1年ごとに使用料がかかると
データベースの維持だけでも膨大なコストがかかることになります
そのへんをどうクリアしたら良いのか
アドバイスいただけたら幸いです
エクセルだけの問題だけではなくPCのOSも問題となりますので
せっかく作ったデータベースが
OS側の問題でひらけなくなる可能性もあります
データベースの構築でこまっています
返信する
【新しい記事を練ってみます】 (花馬 米)
2020-12-02 12:27:22
おーじーうえもん様

コメントありがとうございます。
ご指摘の内容は、おそらく少なくない方が困っていることではないかと思います。
いただいた内容にお応えして、近いうちに記事を投稿させていただきたいと思います(その際は、この欄でもお知らせします)。
返信する
ありがとうございます (おーじーうえもん)
2020-12-02 12:57:00
花馬 さん
ありがとうございます
ご負担にならない範囲でけっこうです
私も実際に過去データを
デジタル化していますが
エクセルにふらふらされると
困ってしまいます
けっきょくノートに整理した
データ記録が唯一のよりどころとなってしまいます

貴ブログのテーマから外れるようでしたら
スルーしていただいてもけっこうです
ご親切なご対応ありがとうございます
返信する
【ヒントになれば】 (花馬 米)
2020-12-06 17:54:03
「エクセル年表」の愉しみ(その3)を投稿いたしました。何らかの参考、ヒントになれば幸いです。

https://blog.goo.ne.jp/hanauma-bay/e/9a70330f2b387e174886a5dbf0b90942
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。