『雪女』

こんにちは、やや半次郎です。

早速、やや半次郎の可笑しな世界をお楽しみ下さい。

………………

『雪女』

フ・フ・フ、ワタシ、誰だか分かるぅ？
そう、オカマ！…って、誰よ、変なこと言うの！
オカマじゃないわよ、雪女よ！

あっ、今、サラッと言ったけど、聞き取れたぁ、ねぇ？
リアクションがないんですけど…。どうして？

聞こえたでしょう、ゆ・き・お・ん・な、なの！

えっ、何、何処へ往くのかって？
何それ？
違うわよ、その“往き”じゃ無いわよ、やぁねぇ。
降る雪よぉ、いやだぁ。
もう、時期じゃないよぉ。

知らないの、雪女？
何よ～、テレビ観たことないの？
えっ、テレビでやってないって？
そうねぇ、ここんとこ出演交渉も無いわねぇ。

じゃあ、映画とか絵本とかはどうなの？
見たことないの？
いやだぁ、何よ～、じゃあ、パッと見てどうなの、怖くないの？

えっ、怖くも何ともないって？
美人だって？

え～、照れるぅ～。
困ったわねぇ。
雪は見たことあるわよねぇ？
えっ、無いの？
…ハワイ生まれの日系三世？

あっ、そう。日本語上手いから勘違いしたわよ。
そうなの？…それはそれは…。

雪は見たこと無くても、雪と言うものがあることは知ってるわよねぇ？
あぁ、良かったわ～。
雪を知らなかったらどうしようかと思ったもの。
えっ、チーズを作ってる会社でしょ、ですって？

何よ～、雪印食品じゃない、それ。
ワタシまだ賞味期限切れてないわよ～、何よ～！
“印”が付いてる訳でもないし。

スキーとかやらないの？…ウインタースポーツ？
えっ、サーフィン命？
え～っ、そりゃあいいことよ、いいことだけど…ねぇ。
…知らないの、雪？

ワタシねぇ、みんなから怖がられてるのよ。
ワタシを見た人は、凍え死んでしまうの。
…でも、ワタシのこと知らない人には効果無いみたいね。
この白い衣装を見ても寒気はしない？

えっ、白がとても良く似合ってるって？
あなた、何なの？
どうしてそんなに正直なのよぉ。
困っちゃうわ、ワタシ。

えっ、長い髪も素敵だよって？
ウ・フ・フ、何よ、そこも褒めてくれんの、ねぇ。

いやだぁ、ホント、あんた嘘が吐けない人ねぇ。
ワタシ、熱くなって来たわ。
とろけそうよ。

溶けた姿も美しいって？
もう、アンタったらぁ。
ワタシ、初めてよ、そんな風に言われるの。
照れちゃう…。

あっ、もう溶けて来ちゃったみたい…。
どうしよう。
えっ、可愛い？

そ～ぉ？
ワタシもう、メロメロ…。

あぁ、切ないわ～。
これが恋なのね。

あぁ、もう下半身が溶けて無くなったわ。
そろそろ上半身もヤバいわ。

アナタに逢えて良かったわ。
こんな気持ちになったの初めてよ。

気を付けてね。
ワタシを忘れちゃダメよ。
ワタシも忘れないから、ねっ。

溶けてしまう前に、山に帰るわ。
これじゃあ、“往き女”じゃなくって“帰り女”よね？

それじゃあ、また来年ね。

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