『１０分先が見通せる能力』（後編）

こんにちは、やや半次郎です。

それでは早速、３部作の完結編をお楽しみ下さい。

………………

『１０分先が見通せる能力』（後編）

《ジャパンカップ》
ここまで連戦連勝…と。気持ちいいね。

次は、今日のメインレース、ジャパンカップだぞ。
外国からは凱旋門賞でオルフェーブルを破ったソレミアが来るけど、牝馬だし日本の高速馬場には対応出来ないだろうな。
さて、ソロソロ始めるか…。

アジャラカ・モクレン・ハイセイコー・テケレッツのパ…と。
おっ、見えて来た見えて来た。
ゴール前の叩き合い…。
ヤッパリ、オルフェーヴルかよ。
いや違うジェンティルドンナだ！
やはりここぞと言う時には力を発揮するよな～。
２着が、オルフェーヴルか。
へへへ、単勝は面白くないから、馬単にしよ。

いや、待てよ、審議のランプが点いてるぞ。
岩田はちょっと強引だったな。

…なかなか結果が出ないな。
え～い、ままよ、着順通りジェンティルドンナで行こう！

「お前さん、今日はやけに調子良さそうじゃねぇかよ。」

誰だ？

「いや、俺は毎週ここに来てるんだけどよぉ、お前さんみてぇにツイてる奴は見たことねぇな。福島の１レースも取っただろ？」

ま、まぐれだよ。（汗）

「俺は、今日は全然ダメだ。朝から外しっ放しだ。お前さん、ジャパンカップは何を買うんだよ、教えてくれよ。」

ダメダメ、教えて上げられない。第一、審議…、いや、…来るかどうかわからないだろ？

「いいんだよ。俺が自分で予想した奴は絶対来ないんだから、お前さんの予想に乗っかりたいんだ。」

（しょうがないから、適当に嘘でも教えとくか。）
分かったよ、教えるから。
３－１７だよ。

「オルフェーヴルか。やっぱ、オルフェーヴルだよな。ありがとよ、恩に着らぁ。当たったら、お礼をするからよ。」

あっ、行っちまった。
しめしめ、じゃあ、俺の買い目をマークシートにマークして…と。
締め切り５分前か…、ゆっくり落ち着いて買おう。

ジャパンカップは購入者も多いから、少し多めに張っても大丈夫だろう。
マークシートを投票の機械に入れて…と。

「見たぞ～。」

な、なん、何だ？
あっ、さっきのオヤジ。

「お前さんのマークシートを入れた機械が買い目を表示したのをよ、見たんだよ。オレが後ろから覗いていたのに気づかなかったな。そんなこたぁどうでもいい。何だよ３－１７じゃねぇじゃん。馬単で１５－１７じゃん。騙したな～。」

いやいや、そんなつもりじゃ～。
途中で気が変わったんだよ。

「いいってことよ。ジェンティルドンナだな。買い目も分かったことだし。お～い、みんな～！　福島の１レースを取ったツキ男がよ～、ジャパンカップは１５－１７の馬単を買ったぞ～！」

何てことを！

「おぅ、俺もそれに乗った～、朝から調子悪いんだ。」
「俺も買うぞ～！」
「オレも。」
「ワタシも乗るわ！」
「おいどんも。」
「アンニョンハセヨ！」

誰なんだお前ら！
あぁ、止めてくれ～！
オッズが…、オッズが下がる～ぅ！！！

《天国》

…ところで神様、オイラは何で死んじまったんで？
命は取らないと言ってたのに…。

「それはな、お前と約束したじゃろ。
忘れたのなら、先々週の投稿記事を見るがいい。もしオッズが動いたら、お前の能力が消滅すると言っただろう？
このワシが与えた“１０分先を見通せる能力”だけが、お前の能力ではあるまい？
心臓が動いたり、呼吸をしたりというのもお前さんの能力じゃ。それらの能力全てが消滅したんじゃ。」

え～ッ、そんなら何でもっとよく説明してくれなかったんですかぁ！
命を取るのと同じじゃんよ～！

「うん、そこか？
許せよ、セールス・トークじゃ。」

非道いよ、神様！

「すまん、すまん。実は、ワシにも跡取りが必要になってのう…。」

跡取りって…？

「神様の世界も人材不足でのう、優秀な奴がおらんのじゃ。近頃は、仕事をしない神様ばかりになってしまって…。どうだろう、ワシの後任になって貰えんじゃろうか？」

後任って？
俺、神になるの？
なれるのかよ、神様になんて！

「なれる。取り敢えず、困っていそうな奴を見つけて、救ってやってくれ。仕事をしない仲間のせいでもあるんじゃが、世の中がおかしくなって、困っている輩が増えているからのう。」

…と言う訳で、僕は神様になってしまいました。
でも、こんな僕だから大したことは出来ません。
取り敢えず、言われたことはやらなけりゃ…です。

早速、困っている人を見つけては助けに行きますからね、待ってて下さいね。

《完》

From やや半次郎