半次郎の“だんごんがん”

要するに、居酒屋での会話ですね。
ただし、半次郎風のフレーバーがかかっています。
≪安心ブログ≫

『モテ薬』

2013年05月17日 12時01分52秒 | ★ やや半次郎の世界 ★

こんにちは、やや半次郎です。

早速、やや半次郎の可笑しな世界をお楽しみ下さい。

………………

『モテ薬』

ワシはなぁ、見た目はくたびれた爺さんだけんども、一応、神だ。
誰だ神田と間違えておる奴は。
東京都千代田区の地名じゃない、神様の方じゃ。
・・・自分で様を付けて言うのも何だけどのぅ。

えっ、何の神様かって?
ワシの得意分野を言えばいいのかのぅ?
ワシはな、主に男女が結ばれることを司っておる。
いわゆる縁結びの神じゃよ。
結ばれると言っても結婚と言うことではないぞ。
結婚は人間の決めたルールで、ワシらが決めた訳じゃない。
だから結婚する・しないは、当人たちが決めることだ。
ワシらはただ縁を結ぶだけなんじゃ。

ところが最近、困っていることがあるんじゃ。
我々がせっかく結んだ縁を、自分たちで切ってしまったり、そもそも縁に気付かない奴らが居るんじゃからのぅ。

しかも、男女を取り違えておるカップルもおってな、ワシらも思案に暮れておる。
同性同士で結ばれるのは、ワシらの意図するところではない。
ただし、意図しないからといって否定するものでもない。
ワシらは、縁を結ぶ手助けをするだけで、結ばれている者を引き離したり、恋路の邪魔をしたりは出来んのじゃ。

それから、最近は妙に難しい世の中になってのぅ。
縁結びのきっかけも昔は楽じゃった。
ポケットに入っているハンカチをそっと引き抜いて、落としてやればいいだけじゃった。
ところが今は、夜更けのコーヒーを一緒に飲まそうが、夜明けのコーヒーを一緒に飲まそうが、全くくっつかんのじゃ。
これには、ホトホト困ったわい。

本能として備わった欲はどうなったのかのう。
少子化が進むのはワシらにとっても困るのじゃ。

そこでな、ワシらもとっておきの秘策を用いることにしたんじゃ。
・・・薬じゃよ。

何の薬かって?
まぁ、早い話が、モテモテになる“モテ薬”じゃな。
男に処方すれば女が熱を上げ、女に処方すれば男が入れあげるという、そりゃあもう効果抜群の薬なんじゃ。
これをモテない男女に飲ませるのじゃ。
そうすれば、ハンカチを落とすよりもより効果が期待出来ると言う訳じゃ。

しかしのぅ、この薬は今になって開発されたものではないんじゃよ。
昔からあったものなんじゃが、昔はそれほど使わなくても、十分成果があったもんだから、使う機会が少なく目立たなかったんじゃ。
でもよ~く周りを見て欲しいんじゃが、どこが良いのか分からないような奴らが引っ張りだこだったりするじゃろ?
あれじゃよ。
あれはモテ薬の仕業なんじゃ。

そのモテ薬を今日、お前さん方に遣ったから、これからお前さん方はモテモテになるぞ~。
うふふ、毎日がバラ色だぞ。

うッ!
突然、胸が苦しくなった!
心臓発作だ!
・・・いやいや、大丈夫。
心臓に持病があってな、薬を持ち歩いておるんじゃ。
心臓発作の薬は、青いカプセルに入っておる…と。
これじゃ、これじゃ。
今すぐ、これを飲めば、発作は治まる…と。
ゴクリ。

おぉ、気分爽快!
発作は治まったぞなもし。

「うッ、胸が苦しい!」

だ、誰じゃ?

「し、心臓が痛い!」

・・・お前さんも心臓発作じゃなかろうか?
自分の薬を他人様に飲ますのは絶対にやってはならない行為なんじゃが、話しの都合で飲ますからそう思いなされ。
ほれ、飲みなはれ。

「かたじけない。ゴクリ。」

どうじゃ?

「う~ん、まだ苦しい!」

えっ?
あっ、いけない、心臓発作の薬はこっちの青いカプセルの方だ。
早くこちらを飲みなはれ。

「ゴクリ。おぉ、何たる爽快!」

あぁ、良かった、良かった。
ところで、あなたはどなた様じゃったか?
確か、どこかでお見かけしたようじゃが…。

「先ほどは助けて頂き、ありがとうございます。私は貧乏神でございます。」

あぁ、そう言われればそうじゃった。
そのあちこち破れた袈裟のような制服を見れば、一目瞭然だ。
ま、助かって良かったわい。

「ありがとうございます。」

…待てよ、さっき青いカプセルの薬を飲ます前に、白いカプセルの薬を飲ませてしもうたのじゃが、あれは今日の仕事の為に持ってきた“モテ薬”じゃった。
飲んでしまった以上、打ち消す薬はないし、しょうがあるまい。
おぉ、もう効果が現れたようじゃのぅ。

「きゃ~っ、貧乏神のビンちゃ~ん! 今晩、アタイのとこに来て頂戴!」
「何よ、気安くビンちゃんなんて呼ばないでくれる。アタシだけの神様よ!」
「アタシねぇ、ビンさまと一緒に居られるなら、何にも要らないわ~。ねぇ、こっちに来て~ェ!」

かくして貧乏神はモテモテになり、日本の全女性の憧れの的となりました。
…つまり、この国の女性は残らず貧乏になったのです。
そして、貧乏神以外の男性は全く相手にされず、結婚相手が見つからなくなってしまいました。

その結果、少子高齢化が進み、この国は滅びてしまいましたとさ。

by やや半次郎



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