こんにちは、やや半次郎です。
今日は金曜日なので、私の出番でありんす。
早速、やや半次郎の世界をお楽しみ下さい。
………………
『旅立ちの午後2時10分頃』
白々と明けた夜がまだ自分の居場所を主張するような、どっちつかずの夜明けの風景を眺めていると、いつにも増してお腹が空いてくる。
私がまだ幼かった頃、祖母がよく作ってくれた朝ご飯を思い出した。大抵、夕べの残りモノだった。
それでも温め直しては焦がしたりして、良く死んだ爺さんに叱られていた。
断っておくが、“死んだ爺さん”と言っても、この時には死んでいなかった。この後に死んだんだ。二度目の死だった。
怒った途端に、脳内の血管が3つばかり切れたらしい。
切れた血管が一つでないことは直ぐに分かった。
私は昔、CTスキャンをやっていたことがある。その時に取った杵柄だ。
いや、誤解しないで貰いたい。私がCTスキャンだったのだ。
私は、大人になる前、そう高校を卒業して1年ほど経った時だったが、CTスキャンを造っている医療機器メーカーの祖母にお願いして、私自身をCTスキャンに変えて貰ったことがある。
祖母は何でも造ってくれた。でも殆ど、夕べの残りモノを温め直すだけだった。
CTスキャンも温め直したものだった。
でも、祖母にはどうしても火加減がコントロールできず、CTスキャンを焦がしてしまったのだ。
死んだ爺さんは、この時も烈火のごとく怒った。何故なら、このCTスキャンは私だったのだから。
その時、不意に爺さんの頭から火が出るのを見た。烈火のごとく怒った爺さんは、燃え尽きてしまったのだ。
これが爺さんの最初の最期だった。
祖母は何でも温め直すのが好きだった。
亡くなった爺さんのことも、例外ではなく温め直した。
するとどうだ、爺さんが鼻歌を歌いながら、玄関を開けて帰ってきたではないか。
不思議なことがあるもんだ。あんなに音痴だった爺さんが、鼻歌を歌いながら帰って来るなんて…。
私は腰を抜かした。私の腰はもう腰ではなく、CTスキャンの胴回りの部分だった。
それが抜けたんだ。
祖母は何でも温め直すのだった。
私の抜けた腰、つまりCTスキャンの胴回りを、一生懸命に温め直してくれた。
いつになったら火加減をマスターしてくれるのか…。
CTスキャンの胴回り部分は、焦げた。
するとどうだ、さっきまでCTスキャンだった私が人間になって玄関を開けて帰ってくるではないか。
しかも鼻歌を歌っている。
私は36年生きて来たけれど、自分の鼻歌を初めて聞いた。
私には音楽の才能が無い代わりに、跳び箱の才能があった。
断っておくが、跳び箱を跳ぶ才能ではない。
つまり跳び箱になるのが上手かったのだ。
でも、びっくりして腰を抜かすのも上手かったから、跳び箱の5段目がよく外れた。
5段目が丁度、私の腰だったのだ。
でも温め直してくれる祖母は、もう旅立ってしまったのだ。
時計は丁度、午後2時10分頃を指していた。
これからは、私が温め直さなきゃいけなくなるんだ。
これが大人になるということだったとは…。
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