大助が、部活の野球の練習をしているとき、担任の先生が家庭訪問に訪れ、母親が勤務で留守のため珠子が代わって懇談した。
担任の教師は、彼はクラスでも男女や学年の区別なく、柔らかい人当たりから人気者で、生徒間のコミニュケーションも上手くとり、部活も熱心で特に指摘することはないが、来年は高校入試もあり、もう少し英語と数学の予習をする様にと言って帰られた。
その日の夕方、大助は野球の練習に疲れて帰って来ると、シャワーで汗を流そうと風呂場に一目算に勢い良く飛び込んだところ、珠子が
「コラッ! 良く見て入って来いッ!」
と湯船から立ち上がり、いきなり怒鳴り散らして桶で湯をかけたので、彼はビックリして浴室を飛び出たが、風呂から上がって来た珠子が
「脱衣場を見れば判るでショッ!」「コノ アワテモノガ」
と言いながら、いきなり頭に拳骨を一発見舞った。 彼は殴られた頭に手をあてて
「浴室に鍵をかけておけばいいんだよ。とんだ災難だ」
と、ぼやいて浴室を出るや、そのときチラット見た珠子の白い姿態と陰部の黒い毛が、彼にとっては成熟した女性の裸体を生で見た、人生で初めての経験であった。
早帰りの母親の孝子を交えて、久し振りに皆が顔を合わせて夕食を済ませたあと西瓜を食べながら、母親の孝子が大助の夕べの話が気になり、大助に
「大助、昨夜話しをした、青い目の人とは、何処の人だネ」
「母さん、今日一日中気になってしょうがなかっただョ。もっと詳しく教えてくれないかネ」
と聞くと、珠子が
「理恵ちゃん。嘘か本当か判らないが、この子ったら、外人さんの彼女がいるらしいのョ」
「ミツワ靴店のタマコちゃんとばかり思っていたが、全く隅におけないヮ」
と、笑いながら話すと、理恵子も驚いて
「アラッ ソウナノ」「大ちゃんも随分発展しているのネ」
と大助の顔を見ながら言うと、孝子が大助に
「ふざけてないで、真面目にきちんと言ってみなさい」
と、少し語気を強めて言うと、彼は澄ました顔で例によって時々片目をパチパチさせて
「長く垂らした金髪と薄いブルーの瞳の色、それにスタイルが抜群に良い、気さくに話せるいい子だな。と、僕が勝手に思っただけで、友達でもなんでもないよ」
「まぁ~蒼い恋の片思いと言ったところかな」
「その子とは、1年に一度しか逢えず、それも旧暦の七夕である、今年は8月16日に僕が彦星・彼女が織姫で天の川を挟んで逢えるんだよ」
「ロマンチックで羨ましいだろう」 「僕も、思い出すと心がキュンと弾んで眠れないくらいだよ」
と、まるで現実離れしたことを話すので、孝子達三人が呆れてしまったが、珠子が興味半分に
「お前、その子の手を握ったりしたことがあるの?」「二人で親しい会話でも・・。まさかキスはしなかったでしょうね?」
と聞くと、彼は当時のことを想いだしてか、ニヤニヤ しながら、さも得意げに
「ナイ ナイッ! 一度、河の中で抱きつかれたことがあったが・・」
「その時、オンナノコの体って、凄く柔らかいんだなぁと思ったよ」
と答えると、珠子が「まぁ~ 呆れた」と溜め息混じりに言うと、それまで笑って聞いていた理恵子が
「大ちゃん、その子誰だか当ててみましょうか」
と言って笑いながら、話すには
昨年のお盆に、城家の家族が揃って自分の故郷である田舎に遊びに行ったときに知り合った、わたしの父母が懇意にしている村の診療所の美代子とゆう娘さんで、大助と同じ年令の中学生で、彼女の父が大学の医師をしている英国系のハーフで、母は英国人で薬剤師をしている。
と、大助の気持ちを慮って当りさわりなく簡単に説明したら、大助は
「当たりダッ! その子水泳がとっても上手で、クロールなんて僕と同じ速さで泳ぐんだぜ」
と、そのときの様子を記憶を辿りながら懐かしそうに話した。
母親達に、その時の様子をなおも執拗に問い正された大助は仕方なそうに
去年の夏休み。理恵子の実家である山形の飯豊に遊びに行った時、河で遊んでた際、偶然、美代子と二人で並んで泳ぎ、そのあと泳ぐのをやめて川辺に上がる際、彼女が河底の石に躓き倒れそうになり、近くにいた僕に<タスケテ~>と叫んだので、僕が慌てて片手で抱いて助けてやったが、その弾みで、今度は僕が前のめりに倒れたところ、彼女も面白がってわざと僕の横に臥して河の浅瀬で二人並んでしまったが、その際、彼女はニコニコしながら人なっこく
「わたし、こんなに楽しく遊んだこと、今迄に一度もなかったゎ」
「君って、水泳も上手で女性に対する思いやりもあり、わたし誰にも見えない水の中で君とお魚の様にキスしても構わないゎ。と、思ったゎ」
と、笑いながら楽しそうに言っていたが、僕は水中での”魚のキス”とは、上手いことを言うもんだなぁ。と、感心して笑ってしまったよ。
僕達の後ろで見ていた織田君なんて
「大助っ!もっと深く潜れ」
と、大声で冷やし半分に怒鳴って叫んでいたが
「岸辺に上がると、麦藁帽子をかぶって浴衣姿の、彼女のお爺さんらしい人が、ニコニコしながら、アリガトウ アリガトウと何べんも言って、僕の頭を撫でて、来年の盆踊りの衣装はワシが用意しておうくからな」
と言って凄く喜んでいたよ。
「その子は、夜神社の境内でもようされた盆踊りで若い人達と楽しそうにフォークダンス風の踊りをしていたが、うまかったなぁ~」
「今度、逢ったら僕にステップを教えてくれると約束してくれたんだ」
と悪びれずに話した。
彼の、何処にでもありそうな自然な話を聞いていた三人は、何時もながらの大助のユーモアのあふれた思わせぶりな話しに振りまわされて、気が抜けたように、安心やら呆れるやらで、話の腰が折れてしまった。
こんな話のやり取りで、珠子が昼間に担任の教師が家庭訪問に訪れた話をすっかり忘れてしまったので、彼にとっては幸運にも文句を言われることもなく難を免れた。
話が一段落しあと大助は、なんとかその場を逃れたい思っていたところに、タマコちゃんが浴衣姿で庭先に遊びに来て
「大ちゃん、花火をして遊ぼうョ」 「お爺ちゃんが、危ないから大助にやり方を教えてもらへ。と、言ったので・・」 「やけどをしない様にネ」
と言うので、大助は家族の話に飽きていたので、渡りに船とばかり立ち上がり廊下に出ると
「お前、来るのが遅いヨ」 「俺が待っているときは、いつも遅いんだから・・」 「俺、お前が来るのを待っていたんだぜ」
とタマコに文句を言いながらも庭に飛び出して、線香花火をして二人してキャアキャアと声を上げて遊んでいたが、大助が夏休みに田舎に遊びに行く嬉しさの余りつい口を滑らせて
「僕、夏休みに、また理恵姉ちゃの田舎に遊びに行くんだ」「タマちゃんは、休みに何処に行くんだい?」
と話をしたところ、タマコちゃんは
「アラ~ッ わたしを置いて行くの。随分冷たいのネ」「ワタシモ ツレテイッテ~」
「宿題の作文になにを書いたらいいのか コマッテイルノョ」
とせがまれ、彼にしては、一難去って、また、一難でシマッタと思い、その場は皆に聞いてみるさと、思わせ振りに言って誤魔化しておいた。
珠子は、月の光が薄明るく照らす理恵子の部屋で、誰にも話したこともない自分の性的経験とその苦悩を説明したが、それは、理恵子を充分に説得するものであった。 珠子の説明によれば、断片的ではあるが
彼女は、高校3年に進級した春。 以前から、なんとなく温和で勉強のできる同級生の男子に親近感を覚えて自然とほとばしる感情で交際していた。
或る秋の日の午後。 帰校時に 彼の自宅に誘われて遊びに行ったとき、無理やりに求められて身体を許してしまったが、勿論、そのときは、恋とか愛とかでなく、以前の親密な友情と言うのかしら、強いて言へば互いにその場の雰囲気に飲み込まれ初体験をしたわ。 その後も、たまに誘われれば彼の家で興味半分のsexに戯れていたが、私達の場合、卒業すれば家庭環境から卒業後は別れることになるので、深い恋愛感情も芽生えず、ただ、お互いに好感を抱いているだけの交際で今でも続いているわ。
丁度、そのころ、母親の携帯を偶然見たとき、耳にしたことも無い男性からのそれらしきメールを見てしまい、凄くショックだったけれども、母親が宿直だと言って普段とは違った服装で出かけて行くのを見たとき、最初はこれは怪しいなと思ったが、日がたつに従い、自分も親に内緒でsexしており、一人身の母なれば仕方ないと言うか、精神的にも肉体的にも、大人としてやむを得ないことかな。と、考える様になり、再婚だけは嫌だけれども、そうでなければ許せると考える様になったわ。
こんなことも重なり、寂しさを紛らわせることからも、彼とのsexをたまにだが継続している理由かも知れないわ。
と、正直に告白した。
珠子は、更に話を続けて
そんな私に比べれば、理恵子さんは織田君との交際は両親も認めている間柄で、なにより本当にお互いに愛し合っている恋愛であり、将来の目的もはっきりしているので凄く羨ましいですわ。
今日、たまたま、織田君と深い関係になったからといっても、それは年齢的にも自然の成り行きで恥ずべきことでないし、むしろ遅すぎたくらいと思うわ。
わたしの同級生の半数以上の女性徒は、多分、経験者と思いますが、これは一寸行き過ぎとしても、中には中学生のときに経験したとゆう勇敢な友達もいますわ。
良しあしは判りませんが、なんかsexも本で学んだことと異なり、今ではそれほど特別なことでも無くなったように思いますが、これって、世の中の価値観の変遷に従い女性の性に対する考えが変化してしまったのかしら。よく判りませんが・・
だから、理恵子さんも、余り意識せずに普段通りにしていれば、誰も気にとめることはないと思いますわ。
けれども、わたし時々考えるんですが、女性はある峠を越えると、それを契機に心も身体も変わると言うか、視野が広がると言うのか、確かに現実を見る目が冷静になり、少しずつ大人になって行く様に思いますわ。
と、思いもよらず、珠子を取り巻く若い人達の性と感情の複雑さを素直に話してくれたが、月明かりのためか、昼間見る強気な彼女の表情に哀愁を漂わせている様に、理恵子の目には映り
「珠子さん、貴女、大人だゎ」 「わたし、お話を聞いていて、自分が幼いと言うか、やっぱり田舎者だと、つくずく思い知らされたゎ」
と返事をするのが精一杯だった。
珠子は、一通り話終えると、「オヤスミナサイ」と言って部屋を出て行ったが、階下の食堂が明るく母親と大助の話し声が聞こえたので、キッチンのガラス戸越に中を覗いたところ、大助は鉢巻をして鮭の焼き身をご飯に乗せてお茶をかけて夢中になって食べており、母親は、時々、団扇で大助を仰ぎながら冷えた麦茶を飲んでいた。
彼女は入り口に立ち止まり、耳を澄まして二人の会話を聞いていたら、母親が大助に対し
「お姉ちゃんは、好きな人でもいるんだろうか、お前、なんか知っているんじゃないの?」
と聞くと、大助はご飯を口に運ぶのが忙しく、顔をも上げずに
「全然、ワンカンナイョ。 僕から見ても友達に自慢出来る程の美人でもないが、まぁ~まぁ~の器量だし、僕に比べれば頭は抜群に良いし、一人位いるんでないかなぁ。いても当たり前だと思うよ」
「八百屋の昭ちゃんなんか、お姉ちゃんに熱を上げているみたいで、僕も健ちゃんに言われて提灯持ちで一生懸命に中を取り持ってやっているんだが、姉ちゃんは、全然、関心を示さないところをみると、やっぱり、ほかにいるんでないかなぁ~」
「母ちゃんも、親なんだから、遠慮しないで直接聞いてみたらどうなんだい?」
と素っ気無い返事をしていた。
すると話のついでか、今度は母親が大助に対し
「ところで、お前は、どうなんだい。 好きで付き合っている人でもいるのかネ?」「靴屋のタマコちゃんは別にして・・」
と聞くと、彼はご飯を食べ終えて麦茶を飲みながら、真面目くさって
「僕のことを好きになるオンナノコなんている訳ないじゃないか」 「ヤボなことを聞くなよ」
と、にべも無く答えたが、母親の孝子がなおも執拗に聞くので、大助はひと呼吸おいて、過ぎし日を懐かしく回想しながら
「僕が、一方的に好きとゆうだけなら、その人は東京にはいないわ。遥か遠くの北の空の下にいることはいるわ。
だけれども、相手は僕をどう思っているかは、判んないや。おそらく僕のことなんて眼中にないだろうなぁ。
去年の夏、偶然、逢っただけなので。悲しき片思いの大助サ。と、言ったところだなぁ。
それでも、一人で頑張っている母さんの子にしては上出来だろうな」
と返事をしたので、母親は興味ありそうに尚も聞き出そうとすると、彼は ニヤット 笑って
「母さん、僕のこと、そんなに気になるんかい」
「どうしても知りたいとゆうんなら、別に隠すことも無いんで話してもいいよ」
と勿体をつけて、渋々ながら過ぎし日の出来事を回想しながら
「その子は、ブルーの水晶の様に澄んだ瞳の人だよ。
僕と同じ学年で、背丈も高くスレンダーで、金髪に少し銀色の髪が混ざっていて、まるで映画で見る様な綺麗な女優さんみたいだよ。
「外人さんて、色が白いと思っていたが、少し赤茶けているんだね」
「何時か風呂場でうっかり見てしまった珠子姉ちゃんのほうが、よっぽど肌が白いわ。その子の肌はすべすべして柔らかい感じだったなぁ」
「日本人も馬鹿にしたもんではないわ」 「勿論、理恵姉ちゃんの方が、姉ちゃんやその子より綺麗だけれどもね」
と言い終えるや、孝子は予期もしない話しに言葉を失い絶句してたところえ、突然、珠子が入って来て
「こんな夜遅く、二人で何をくだらないことを話しているの!」
と怒りの表情で言うや、大助は不意の出来事にビックリして「シマッタ!」と叫んで、冷えた番茶の入ったコップを落としてしまった。
大助は初めて見る姉の妖艶なネグリジェ姿に目を奪われていたが、彼女はそんなことに気付かずに
「大体、母さんも悪いわ」「だから、大助が甘えて仕舞い、頼りがいのない子になるのょ。大助も、わたしのことなんか心配しないでも結講だわ」
「青い目の人ってダレョ」 「おかしなことをして、後で大問題をおこさないでョ」 「お前は、本当に心配の種だゎ」
「きちんとと説明しなければ、夏休みに田舎に連れて行かないからネ」 「母さん、そうしましょう」
と言うと、母親の孝子が大助を応援するかの様に
「珠子も、そんなネグリジエ姿でいきなり入って来ては、思春期の大助には目の毒だゎ」
と注意したところ、彼女は慌てて両手を胸にあて隠くす様にして、自分の部屋に戻ってしまった。