神社に置かれる狛犬には見どころが多い。古い由緒を伝える大きな神社、大寺院には広く一般庶民の信仰を受け入れてきた歴史がある。それが境内に残された石造物に見えるのである。多様な石造物の中でも狛犬がいつ頃から置かれるようになったのか。そして、その造形はどのように変化していったのか。多くの神社に残された江戸時代の狛犬を見ている間に、「何故だろう?」と思うことが増えた。誰もがすぐに気づく阿吽を一対とするのは、寺院の山門で信者を迎える仁王像の影響である。それが、獅子と狛犬を一対とする宮中の装飾に取り込まれ、神社の聖域を守る霊獣に進化したと考えられている。宮殿の奥で木彫だった狛犬は、露天の境内に出てくる時に石造になったのだろう。拝殿前や参道にまで出てきた狛犬を一般の大衆はどのように見ていたのか。現在でも、よだれかけをした狛犬やしめ縄をつけた狛犬を見ることは多い。やがて阿吽の一対を獅子と狛犬と見ていた感覚は薄れていき、阿吽の獅子になっていく。また、阿吽の一対を雌雄の一対と見なすような感覚も生まれてきた。江戸時代の狛犬には、様々な要素が現れ、そして消えていったようだ。
30秒の心象風景15875・雌雄の表現~若王子神社狛犬~
https://youtu.be/zV-1wwGz9hs
30秒の心象風景15875・雌雄の表現~若王子神社狛犬~
https://youtu.be/zV-1wwGz9hs