前回書いたとおり、車椅子で街を移動しているといろいろな人から声をかけられることことがよくありますが、その際、その人の真心と一緒に 、オマケが付いてくることもあります。
オマケをもらう事自体は頻度としてはそう多くもなく、ごくごく偶に、という程度ですが、過去の記憶の中のもらい物でいちばん回数が多いのが飴、2番目がガム、3番目がおせんべい、といった感じでしょうか。
変わったところでは、暑い夏の日に、汗をかきながら知らない人の家の前を通り過ぎようとした時に、
『熱くてしんどいでしょう。冷たい飲み物を用意するから待っててね』と年配のご婦人に呼び止められ、アイスコーヒーをごちそうになったことがあります。謹んでご辞退申し上げようと思ったのですが、その時にはもう、ご婦人は厨房に移っていました。
玄関先でいただいたコーヒーは抜群に冷えていてとても美味しかったです。やはり水分を欲していた身体の声は正直でした。
後日、せめてものお礼にと菓子折持参でご婦人の元を訪ねたのですが、
『お返しが欲しくて飲ませてあげたんじゃないのよ。お礼がしたいと言うけれど、あなたが私の作ったコーヒーを美味しそうに飲んでくれたから、それがお礼でお返し。』といわれて逆に怒られてしまいました。その時、ご婦人の背中に光が差して見えたのはまんざら私の目の錯覚というばかりではないだろうと思っています。
また時に、戴く真心が、私の許容量を超えてしまうこともありました。
母方の田舎を訪ね、祖母の家の周りを散歩していたときのこと、やや腰の曲がったお婆さんが、私に声をかけてきました。ていねいに挨拶をして、しばらく世間話をする流れになりました。
お婆さんは祖母の知り合いらしく『アンタ、あそこの家のお身内かい。カタワの孫がいるって聞いたけどねえ…』
若干差別的な単語が入っていたのを認識しましたが、そこは人生の大先輩のご発言。 いちいち指摘することをせず、笑顔で流すことにしました。
《まあ、ツッコミ入れても理解してもらえんし、ここでヘソ曲げたらバアちゃんの近所づきあいに響くだろうしな…》
イラッとする自分を懸命になだめていると、お婆さんは自分のバッグの中から、とんでもない物を取り出しました。
それは、黒光りする大粒の数珠でした。一目で、なんだかすごそうなものだと直感しました。
お婆さんは、小さな手からこぼれ落ちるんじゃないかと思うほど、両手に力を込めて数珠をぐちゃぐちゃと揉みながら上下に振り、時に空を見上げ、時に目をつぶりながら、口の中で何かを唱えていたのです。
善意であるとはわかっているのですが、いきなり道の真ん中でこのリアクション。さすがに逃げ出したいと思いました。
ごくわずかなやりとりだったと思いますが、ああいうときほど時間の流れが遅く感じるものなのですね。
善意の表し方も人それぞれ。こうした体験は、障害を持った身でなければなかなか出来ないのだろうなと思います。
オマケをもらう事自体は頻度としてはそう多くもなく、ごくごく偶に、という程度ですが、過去の記憶の中のもらい物でいちばん回数が多いのが飴、2番目がガム、3番目がおせんべい、といった感じでしょうか。
変わったところでは、暑い夏の日に、汗をかきながら知らない人の家の前を通り過ぎようとした時に、
『熱くてしんどいでしょう。冷たい飲み物を用意するから待っててね』と年配のご婦人に呼び止められ、アイスコーヒーをごちそうになったことがあります。謹んでご辞退申し上げようと思ったのですが、その時にはもう、ご婦人は厨房に移っていました。
玄関先でいただいたコーヒーは抜群に冷えていてとても美味しかったです。やはり水分を欲していた身体の声は正直でした。
後日、せめてものお礼にと菓子折持参でご婦人の元を訪ねたのですが、
『お返しが欲しくて飲ませてあげたんじゃないのよ。お礼がしたいと言うけれど、あなたが私の作ったコーヒーを美味しそうに飲んでくれたから、それがお礼でお返し。』といわれて逆に怒られてしまいました。その時、ご婦人の背中に光が差して見えたのはまんざら私の目の錯覚というばかりではないだろうと思っています。
また時に、戴く真心が、私の許容量を超えてしまうこともありました。
母方の田舎を訪ね、祖母の家の周りを散歩していたときのこと、やや腰の曲がったお婆さんが、私に声をかけてきました。ていねいに挨拶をして、しばらく世間話をする流れになりました。
お婆さんは祖母の知り合いらしく『アンタ、あそこの家のお身内かい。カタワの孫がいるって聞いたけどねえ…』
若干差別的な単語が入っていたのを認識しましたが、そこは人生の大先輩のご発言。 いちいち指摘することをせず、笑顔で流すことにしました。
《まあ、ツッコミ入れても理解してもらえんし、ここでヘソ曲げたらバアちゃんの近所づきあいに響くだろうしな…》
イラッとする自分を懸命になだめていると、お婆さんは自分のバッグの中から、とんでもない物を取り出しました。
それは、黒光りする大粒の数珠でした。一目で、なんだかすごそうなものだと直感しました。
お婆さんは、小さな手からこぼれ落ちるんじゃないかと思うほど、両手に力を込めて数珠をぐちゃぐちゃと揉みながら上下に振り、時に空を見上げ、時に目をつぶりながら、口の中で何かを唱えていたのです。
善意であるとはわかっているのですが、いきなり道の真ん中でこのリアクション。さすがに逃げ出したいと思いました。
ごくわずかなやりとりだったと思いますが、ああいうときほど時間の流れが遅く感じるものなのですね。
善意の表し方も人それぞれ。こうした体験は、障害を持った身でなければなかなか出来ないのだろうなと思います。