日本の最西端の島で、晴れた日には台湾が見えるという岬にも立った。
平べったい小さな島で、サトウキビが植わっていたように記憶している。
景色ではそのほかの記憶がない。魚を獲ったって、加工して日持ちを良くしないと市場に出す前に傷んでしまうような位置関係の島である。
東京支社時代に全国の同業者20人くらいのグループで出掛けたのだが、視察名目だったので町役場に赴いて町長と懇談するところから始まったのである。
離島だから町長も暇で小一時間一行の相手をしてくれたのだ。
そこでとても印象深く聞いた話がある。
曰く「この島では農作物の害虫対策の農薬は必要ないんですよ」と。
いぶかる一行に町長は「夏になると台風が2、3個やってきて、海の真ん中に浮かんだ島だから、それはそれは猛烈な風が吹きすさび、サトウキビなどの植物は葉がちぎれるほどに長時間痛めつけられるんですよ。葉の裏も表もありません。ただただ強風にあおられ続けるのです。このため、葉の裏にしがみついている害虫は1匹残らず島の外へ吹き飛ばされてしまうのです」。
ある種得意気な町長の説明に、一行は信じられない思いを抱きつつ、「なるほどなぁ、さもあらん。それくらい強い風が吹くんだなぁ」と感心したものである。
しかるに、如何に強風に慣れた島とはいえ、今回ばかりは島民も肝を冷やしたことだろう。
最大瞬間風速81.1メートル!
サトウキビの害虫を吹き飛ばしてきた風はせいぜい40メートルだろう。ちょっと強い台風が来れば50メートルになったかもしれない。
しかし、80メートル超は想像を絶している。前代未聞だったろう。
台風によく襲われる島だから、民家などは平屋で、しかも堅固なつくりをしているが、その土台や骨組はそのままに、屋根瓦が吹き飛ばされて1枚もなくなってしまったり、どうしたはずみか屋根だけソックリ吹き飛ばされた家などの爪跡を見ると、害虫どころか、屋根を吹き飛ばされた家の住民も吹き飛ばされてしまったんじゃないかと心配である。
台風21号。最近の気象の変化を表すような猛烈な台風があったものだ。
最近話題に上ることの多いスーパー台風、今回もそれだったようだ。
マッテン・ジュリアン振動とかダイポールモード現象など、最近の気象用語の中に、やたらとこれまで見かけなかったものが登場する。
いずれも最近の凶暴化する気象の解説に使われているのだが、21号の強風もそうした用語で解説されるべき現象だったに違いない。
油断ならない時代を迎えたものだ。
ところで、与那国島にはもう一つ名物があって、それが“海中遺跡”である。
一時期、与那国島の海に古代エジプトやギリシャの遺跡を彷彿させる遺跡が発見された、とテレビや雑誌で賑やかに報道されたことがあるそうだが、それを見に行ったのである。
船の底がガラス張りになった船まで用意されていて、陸から数十メートルほど離れた海中を覗くと、青く澄んだ海底に切りそろえられたような岩が規則正しく並んでいて、まさに遺跡が何かの加減で崩壊した跡のように見えるのである。
古代文明がこの地に存在したのだ! この光景がその証拠なのだ、と言われるともっともなような気がしてくるほど、真に迫っている。
種明かしすれば何のことはない。海の中からそそり立つように地肌を見せている見事な柱状節理の岩がそのまま海に落ち込んでいるのだ。
しかし、古代遺跡が存在してもいいように思えるほど、青く澄んだきれいな海が広がっているのである。
海の家がすっかり撤去された片瀬西浜から久しぶりに富士山が望めた
こちらは茅ヶ崎海岸
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