平方録

スリップストリーム

自転車で面白い体験をした。
場所はいつもの湘南海岸自転車道。
コース上は火曜日の午後で人も少なく、ギアを一番重くしてスピードを上げて走るようにしていた。
すると途中からコースに入ってきた年格好が同じころ合いのおっさんが乗る自転車に追いついたのである。
さっと抜き去ろうとしたのだが、前に人が歩いていたし、対向車も来ていたので、すぐ後ろについてしばらく走ったんである。

するとどうだ。
これまでよりペダルを踏む力が軽くて済むのである。時速23~24キロくらいで走っていたのだが、なにか、すーっと引っ張られるような感じなのだ。
そうか、これがあのスリップストリームとかいう現象なのか…
何かで読んだことがあって名前だけはうろ覚えに覚えていたが、いつも一人で走っているのだから当たり前だが、体感したのは初めてである。

自転車を走らせるとき、先頭の自転車から30センチくらいの距離でピッタリついて走行すると、空気の流れの関係で後ろに真空状態が出来、そこに入って走ると空気抵抗は30%減るという現象なのだ。
おまけに、前方からはもろに抵抗を受けている先頭の自転車も2番目の自転車が造る気流に押される形で後押しが期待できるんだという。
自転車レースなどを見ると、縦一列にピッタリくっついて走っているが、あれは空気抵抗を減らして体力を温存するための、理にかなった走行形態なのである。

今回の私の場合は、前を走る自転車との距離を余り近づけ過ぎると前を走る人が気にすると思って、やや離れた1メートルくらいを保ったのである。
それでも楽チンだったのだ。結構な効果である。
まぁ、自転車でレースをする気などさらさらないし、群れるのもまっぴらご免だ。
これまで通り、景色を見ながらちんたら走るのを楽しみとするスタイルは変えるつもりもない。
スリップストリームは話だけのものにしておこう。

さて、昨日三崎の魚屋に寄ったついでに買ってきたダツ、別名スミヤキ。
一晩冷蔵庫に寝かせたせいもあって、店のおかみさんの言う通り、塩焼きも刺し身も「これは!」と膝を打つくらい美味しかった。
見てくれは黒みがかったこげ茶色の汚らしい外観の魚だが、身は薄いピンク色。
皮にひっついた身をスプーンですくい取って集めたところに刻みネギやミョウガを刻んだものをかけて、叩きのようにして食べると美味しいというものだから、その通りにやったら、見た目のきれいな、しかも上品な甘さを感じさせる味だった。
スミヤキクン、やるじゃん!って言う感じ。

塩焼きからは白く変わった身の間から脂が滲みでていて、これまた滑らかな舌ざわりのこれまた上品な味で、脂の乗り具合や脂そのものの味からすると、場合によってはタイの塩焼きにも引けを取らないんじゃあないかと思えるほどである。
人によってはこちらの方が好きだという人もいるかもしれない。

こういう魚はスーパーはおろか、街の魚屋にだって並ぶことはほとんどない。
漁港近くの数えるほどの店先でだけ、それも運が良ければ手に入れる事のできる地魚なのである。
腰越の魚宇が閉店してしまって以降、積極的に地魚を並べる店も近所から消えてしまい、珍しい地魚に触れるチャンスもめっきり減ってしまった。
かくなる上は“2匹目のスミヤキ”を狙ってドライブがてら三崎まで、たまには車を走らせてこようと思う。




スミヤキの刺し身たたき風(左)と切り身の塩焼き


西の空に立ち待ち月の残る9月晦日の朝焼(05:25)
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