久しぶりに上京した。
電車に揺られることほぼ1時間。
降りたのは東京駅だから乗り換えも無しに一直線で行けるので、乗ってしまえば訳はない。
東京駅ってこんなに混んでいたっけ…と思うくらい、まるで新宿か渋谷並みにごった返す地下道を抜け、八重洲中央口から外に出ると目の前は再開発ラッシュのようで、やたらと白い板塀が目に入る。
目指す京橋の画廊への道順を確かめると、中央口より南口から出ればよかったと思うが、その辺の土地勘がぼやけてしまっていることに気付く。
活字文化の衰退とともに消えてしまったが、本好きには欠かせなかった八重洲ブックセンターの脇の路地をまっすぐ東に向かえばいいのだが、肝心の路地が再開発に飲み込まれていて、路地そのものが消えてしまっていた。
仕方なく1丁ほど戻って東に向かう道を行き、大きく迂回して明治屋のところに出て日本橋に通じる大通りを横切り、さらに東に進んで目指す画廊に到着する。
先日一緒にゴルフをした女性が初めての絵の個展を開くというので、冷やかしがてら覗きに行ったのだ。
60歳で会社を辞めた後、京都芸術大学の通信制で4年間絵を基礎から学び、さらに2年間の大学院過程も経ているので、筆致や色遣いなど「へぇ~」「ほぉ~」とうならせられる腕前に感心させられた。
だからか、題名を記したカードには売約済みの赤丸印がいくつもついていて、ボクは思わず後ろを振り返って「画伯!」と呼び掛けたほどである。
いずれも2万円前後の小品だったが「小さくて飾りやすいし、安いからよ」と謙遜していたが、まんざらでもない表情だった。
うん、見直したよ♪
彼女と話していると、そこに美術評論家を匂わせるような人物が現れ、彼女に「下塗りはどうしているのか」とか、「カンディンスキーのような作品もあるが、影響を受けているんですか?」などと専門家っぽい質問を浴びせていた。
東京の画廊ともなると、こういう知ったかぶった人種がうろつくんだろうな。
もしかして本物で、美術雑誌(今あるかどうか知らないが…)の短信欄のようなところで紹介されるかもしれないが…
彼女のお陰で、ボクも花のお江戸のお上りさんになって「芸術の秋」の真似事のような一ページを綴ることができたってわけさ♪
帰りに画材屋に用事があって、彼女から薦められた新宿の世界堂本店に向かった。
京橋から地下鉄銀座線に乗り、銀座で丸の内線に乗り換え「四谷三丁目」で降りたのだった。
「地上に出れば目の前にすぐ見える」と言われた店がどこをどう探しても見当たらない。
仕方なく、目に留まった陶器を扱う店の女性と眼があったので聞くと、「あぁ。それだったら四谷三丁目じゃなくて新宿三丁目ですよ」と言われて、愕然と間違いに気付く。
四谷三丁目は小学4年生の頃、たった一人で東京の親戚に遊びに行った時、信濃町駅から品川行きの都電に乗るのだが、帰りに信濃町まで乗ったのが「四谷三丁目」行きで、もう都電と言えば「四谷三丁目」なのである。
それが亡霊のように蘇ったようだ。
仕方なく、四谷三丁目から新宿三丁目を目指して強風で枯れ葉やほこりが舞う中、トボトボと歩きましたとさ。
3,4kmはあったような気がするなぁ。それにしても遠かった。
かくして芸術の秋の次は思いがけず、スポーツの秋を堪能させていただくことになってしまいました。
ヤレヤレ、すっかりモウロクジジイになった。
以上、彼女の作品の一部
「四谷三丁目」から「新宿三丁目」に向かう道すがら、ビルの壁面にこんな看板が…
はるばる来たぜ世界堂~♪
伊勢丹って、まだあるんだねぇ
(見出し写真は東京駅八重洲口)