平方録

東京湾を渡って対岸へ

奈良に行こうと思っていて今年は断念のやむなきに至ってしまったので、どこか近場でもウロつこうと考えていたら、千葉の外房の銚子の犬吠埼から南の端の野島崎、館山にかけて自転車道があるらしい事がわかり、愛車のお腹に愛用の自転車を積み込んで久里浜から金谷へと、フェリーで東京湾口を横切った。
🎵親亀の背中に子亀を乗せて~、状態である。

わが家から久里浜のフェリー乗り場まで1時間。4、50分間隔で出航しているかと思いきや、それは夏場の事。すでに冬ダイヤになっていて、到着した時間帯に便はなく、船は停泊しているものの出航まで1時間近く待たされてしまった。
12時10分にようやく出航。波静かな湾口に進み出て40分。
アメリカ第七艦隊の空母機動部隊や攻撃型原潜などの艦船も混じってコンテナ船やタンカーの出入りが激しく、浦賀水道は世界有数の“海の銀座”と呼ばれるほどである。そこを横切って進むのだから大型船などの鼻先をかすめるように、ある時はコースを変えて大型船をやり過ごした後ろを縫って進んだりするのだから、小さなフェリーはスリリングなのである。
しかし、それも出入港船が集中するのは朝夕の事で、昼間はさすがに船影は薄く、フェリーはわが道を真っすぐ、ゆっくり進んで行く。

金谷港から車で10分ぐらいのところにある保田という漁港の一角に、地元漁協が客寄せに始めた魚を食べさせる大きな食堂がある。
1度行った事があるのだが、かれこれ20年くらい経つようで、首都圏中にその名が知られるようになったらしく、今度久しぶりに行ってみたら何と、従来の建物が本館と呼ばれていて、加えて新館、第3館などというのが立ち並んでいて目を丸くした。

本館の入り口には30人くらいの客が行列を作って待っている。一瞬ひるんでしまったが、他に食べるところとてないような場所なので覚悟を決めて列の後ろについたら、25分ほどで名前を呼ばれて難民状態から抜け出せてやれやれであった。
さすがに品数は多くて選ぶのに迷ったが、地魚海鮮丼と地元保田で獲れる鯵を特別にそう呼ぶらしいのだが黄金鯵と言い、そのタタキをとった。
こうなると日本酒の一杯も付けたいところだが…
海鮮丼はわが街の腰越の店と大した違いはないが、さすがに獲れたては身が引き締まっていて美味しい。
そして「保田黄金鯵のタタキ」。こちらはさすがにブランド名を名乗っているだけの事はあり、脂の乗りもよくて歯ごたえも十分、さすがの感がありました。
サバの刺身が品切れになってしまっていたのが残念である。
やはりブランドで築地あたりでも名高い「松輪のサバ」の対岸で取れるサバの味や如何に、と思って味比べがしたかったんである。
こちらはまたの機会という事に。

腹ごしらえが済んで、小学生の夏は毎年のように過ごした岩井の海を通り過ぎ、一路南下。明日走るところの下見でもと思ったが、都合よく予約が取れたホテルのある館山に到着したのが3時ちょっと前。
チェックインしてしまって街中を自転車で探索してこようと考えた。
ホテルの前は大きく館山湾が西に向かって開けていて、ホテルの名前にも付けられているほど夕日がきれいらしい。
今の時期の日没は4時半過ぎなので、それまで散策は可能である。

曇ってきてしまい、さすがに短パンでは寒いのでGパンのまま漕ぎ出して丁度良かった。
ホテル前の海岸沿いの道路は遊歩道ができていて、ヤシの並木にもなっている。見方によってはとても洒落ているのだが、実際に走ってみる景色は如何にも地味である。

その理由を考えてみたけれど、やはり道路沿いの景観に理由があるのではないか。
所々に点在する店が地味で、いくつか建っているホテルは軒並みせいぜい4、5階建てで、デザインも色彩も平凡。
わが江ノ島水族館近辺と立地自体はさして違わないように思うのだが、特に感じるのは光の明るさ加減の違いで、歴然としている。
人や建物、車、海に浮かぶヨットやウインドサーフィンの帆の色彩とそのシルエット、釣り船の船体の色合い…
それらが少しづつ微妙な差を産んで、それが積み重なることによって、なんとも説明しきれないけれども、大きな差になっているのではあるまいか。

いわゆる垢抜けの具合であるように思えるのだ。
これは、まあ、一朝にしてどうなるというようなシロモノではない。加えて、どこの海辺も湘南のようでなくてはいけないというものでもない。

それぞれの地域の海辺の良さが出ていればいいだけの話である。
ただ、ちょっと参考にという程度で真似するのはかえって逆効果になるということは知っておいたほうが良さそうである。

それにしても街中には何もない。
店も閉まっていて、人通りもなく、住宅街に分けいれば人っ子一人見えない。
昼飯を魚で比較的豪華にやったから、夜は赤提灯の焼き鳥でもいいやと思ったのだが、一軒だけ見つけた焼き鳥屋は掘っ建て小屋のように小さく、隣の空き地にテーブルが置いてあったりするような店で、旅行者にはちょっと場違いのようである。

ホテルへの道すがら、昔でいう三業地のようなところに出くわしたが、スナックや焼肉の類の店ばかり。
それも、安普請の倉庫のような建物を区割りした小さな店ばかりが看板を出していて、酔っ払って迷い込めば、それはそれで後に後悔すれば済む話だが、シラフのうちから正体をのぞいてしまえば興ざめである。

ホテルの裏に、市街地からすっかり人影を奪ってしまった元凶である大手スーパーをはじめとするショッピングモールがだだっ広い駐車場を伴って広がっている。
仕方なく、ここでワイン1本とチーズ、フランスパンを買って本でも読みながら時間を過ごすことにした。それにしても南国のはずの館山は期待に反して随分と寒い。これは気温だけのせいでもないようだが…


航路の半ばで久里浜行きの僚船とすれ違う


対岸の鋸山が近ずく



保田で食べた地魚海鮮丼と保田黄金鯵のタタキ


小学生時代の夏休みの大半を過ごした遠浅の岩井海岸


岩井の浜も細ってきているようで、養浜のためと思われる突堤を作って海に突き出させている


ホテル前の遊歩道


JR内房線館山駅西口駅舎


館山湾の日没。冷える!
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