平方録

ちょい悪たちへの思いがけない贈り物

クリスマスイブにかかってきた1本の電話が端緒だった。

十数年ぶりに再会した電話の主は「ちょっとやせた」といわれればその通りかもしれないが、とても病後とは思えないほど血色は良く、髭を貯えて精悍な顔つきで現れた。
Yさん。ある日突然、隣町にあった洒落たパブを閉めて海を渡って行ってしまったが、ちょっと病に侵され、闘病を続けてきたのである。
それがクリスマスイブの日に突如電話をかけてきて「あさって退院するんだけど食事でもしない?」と誘われ、「飲めるの?」と聞き返したら「当然!」という答えが返ってきたのだ。

行きつけの店の主に無理を言って作らせた席に集ったのは、Yさんと4組の夫婦。
Yさんが海を渡って行ってしまった後、何となく交流が薄れてしまっていたのだが、昔馴染みと言うのは不思議なもので、どれだけ長いブランクがあっても同じテーブルに着いた途端、垣根もなにも吹っ飛んで、懐かしい時代に一気に舞い戻れるものである。

Yさんによれば最初は身体がだるくてしょうがなかったんだそうである。
そうこうするうちに足が腫れてきて、「これはただ事ではない」と病院に行ったところ、腰を落ち着けて治療しなければならないことが分かり、日本の医学に期待を寄せたと言うことのようである。
「完治は無いんだ。治療しながら付き合っていくしかない」と言いながら、吹っ切れたのだろう、サバサバした態度だった。

まぁ、Yさんに限らず、みんな身体のどこかにガタが生じる年齢である。
私自身も飲み続けなければいけない薬を処方されている身である。
途中で墓石の話にまで行ってしまい、「縁起でもねぇ。止めようぜ」とYさんが言わなければ、すぐにでも墓石の下に入ってしまいかねない輩もいて、歳をとると病気の話で盛り上がるというけれど、その通りになりかけた。

「1、2年したら日本に戻ってきたい」とYさんは言う。
定期的に病院通いするにもその方が好都合なのだろう。
これは大歓迎で、たまり場が復活するかもしれない。是非そうあって欲しいものである。

刺身の盛り合わせと焼き鳥、ブリのアラ煮でお腹がいっぱいになりかけたところに、最後は鴨鍋が出て、旧交を温め合う、思いがけない師走の大宴会になった。
随分飲んだようで、起きるのが辛かったし、今朝はことのほか寒かった。
今年も残すところ2日。
日ごろの心掛けの賜物か、ちょい悪オヤジたちにサンタクロースが届けてくれたプレゼントは、なかなか得難いプレゼントだったのである。



具だくさんの鴨鍋
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