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平方録

リンコちゃんを沖縄から呼んだのは誰か

バカなテレビジョンが朝っぱらから皇居の中と外からの映像を流し続けていたのはミーハーの代表選手を自負している連中のやることだから、気に入らなければ見なければ良いだけの話である。
しかし、遊びに行ってきたばかりの新居浜の姫の母親から夕方になって届いたメールに「太鼓台が式典を祝うためにもう一度街に繰り出してお餅をまき、姫が4個もゲットしました」と写真付きで知らせてきたのには「なんで ? 学校はどうしたの ? 」と思わず口にしたら妻に「今日は祝日よ。学校も休みよ」と言われ、なるほど世間はそうなっていたのかと認識を改めたのだった。

ソクイだかハクイだか知らないが、そんな行事に特段の関心を持っていないせいだろうが、少なくない人たちが風雨の強い沿道に出て日の丸を振るような映像を見るにつけ、物好きな連中がいるものだと半ば呆れ、感心もした。
というようなことはどうでもいいのだが、この騒動の中で唯一「オヤッ ?! 」と感じたことがあった。
約2000人の招待客の中に沖縄の女子高生が1人混じっていたことだ。
多分唯一の未成年者ではなかったろうか。
その高校1年生の名はサガラリンコ、相良倫子。
昨年の沖縄慰霊の日に中学3年生のリンコちゃんは自作の「平和の詩『生きる』」を暗唱した。

「私は、生きている。
マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、
心地よい湿気を孕んだ風を全身に受け、
草の匂いを鼻腔に感じ、
遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。

私は今、生きている。

(中略)

これからも、共に生きてゆこう。
この青に囲まれた美しい故郷から、
真の平和を発信しよう。
一人一人が立ち上がって、
みんなで未来を歩んでいこう。

摩文仁の丘の風に吹かれ、
私の命が鳴っている。
過去と現在、未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。」

何てったっていきなり地球の奥深くでたぎるマントルを持ち出す発想はなかなかない。
力強い眼差し、歯切れの良い、はっきりしとた口調。
わけても詩に込められた平和を求める強い意思は聞いている人々の胸を揺さぶった。
どれをとってもあの場面は印象深く、忘れ難いものがあった。

あのリンコちゃんを誰が招待したのか。
2000人の招待客リストにもぐりこませたのは誰なのか。
まさか宮内庁の役人 ?  それとも別の省庁の役人 ? まさか官邸…なんてことは天地がひっくり返ってもあり得ないだろうな。
いや、役人の発想じゃないな。忖度の蔓延する霞が関にそんな気の利いた役人がいるわけがない。
だとすれば誰が…

これはもう式典の主役の意思を除いてはあり得ないだろう、それ以外に彼女を招きたいという発想を持ち得る人物を見つけるのは難しい、あり得ない、そう思ったのだ。
だとすると、平成天皇と皇后の平和に対するひとかたならない熱意を受け継ぐ人物、つまり新しくソクイした新天皇の意思以外にはないんじゃないかというのがボクの推理である。

万歳三唱の音頭をとった男の姿をテレビニュースで見てはなはだしい嫌悪感を抱いたが、リンコちゃんの存在が彼の男の存在を消し去る消臭剤兼清涼剤のように感じられて、なるほどなと感じた。
彼女を招いた人の本心を垣間見た思いである。
リンコちゃんの詩に共感し、応えようとする強いメッセージをくみ取った。
なかなかやるじゃん。


ソクイを祝うために再び繰り出した四国・新居浜の太鼓台(見出し写真も)
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