平方録

邪魔されたけれど 花の寺 

久しぶりに大仏さんに詣で、長谷寺手前の、花の寺で知られる光則寺でじっくり山野草や茶花を堪能していた時である。

それまでは晴れていて暑いほどで、半そでのポロシャツ1枚に極薄いベストを重ね着しただけで出かけてきたのが大正解だと思っていたら、次第に雲が広がってきて、しばらくすると吹いてくる風が冷えて湿っぽいものに変わってきたのを感じたのだ。
天気予報は朝から、午後になると天気が不安定になり、強い雷雨に見舞われることがありそうだと注意を呼び掛けていたから、これは早速一雨来るなと直感した。

「もう1時だし、家でご飯を食べようよ」と決め、歩いて帰るつもりで大仏前に差し掛かると、運の良いことにバスが来たので飛び乗った。
大型連休のはざまとはいえ、例年の連休だと飛び石の間でも道路は渋滞するし、神社仏閣はどこも人であふれるのが相場である。
それが今年は拍子抜けするくらいに道路渋滞はなく、大仏の境内は信じられないくらい空いていたし、もともと観光客は近づかない光則寺に至っては人影はほとんどなかったのである。
そんな具合だからバスは時間通りに動いていたものと見える。市民生活にとっては実に良いことなのだ。

家までの道のりは歩くと30分程度かかるが、バスを使えば15分は節約できるはずである。
バスを降りて自然公園を抜けて帰る途中、割と近くだなと感じる辺りで雷が鳴り始め、クワバラクワバラと思っているうちに、ポツリポツリと雨粒が顔や手に当たるようになってきた。
少し早足で家に戻った途端、というと随分と出来た話ではないかと思われるかもしれないが、正真正銘、家に入った瞬間、まさに滑り込みセーフで天のバケツがひっくり返ったようで、妻はホウホウの体で洗濯物を取り込んだくらいなのだ。
ラッキーだったとしか言いようがない。

周囲の屋根や道路では降りかかる雨が風にもあおられて、猛烈な水しぶきとなって舞い上がるほどの強さで、ハイキングコースでこの雨に遭っていたら全身ずぶぬれになったことだろう。
現にそういう人がたくさんいたはずである。大仏裏手の起伏の激しいハイキングコースには遠足の小学生が結構いたが、彼らは大丈夫だったろうか。
多分雨具くらいは携えていただろうが、あの降り方では小さな傘程度では大して役に立たなかったかもしれない。

雨雲の接近に急き立てられなければ、光則寺ではもう少しゆっくり花を見ていたかったのだが、こういうこともあるさ。
境内南側の斜面には清楚な白雪姫を彷彿させるシラユキゲシの群落があり、門を入った左手にはクレマチスの籠口を思わせるハンショウヅルが真っ盛りで、籠口の青みがかった紫色に対して、こちらは薄茶色で、互いに「和」を競うかのようでもあった。
ハンショウヅルは形が半鐘の鐘の形に似ていることから名づけられたらしいが、シラユキゲシとともにはじめてお目にかかった。

セリバヒエンソウという雑草と見まがう小花の存在も教えてもらったが、セリに似た葉を持ち、咲いた花の形が燕の飛ぶ姿を彷彿させるところから名づけられたそうで、どれも花の名前からして素敵なのが、花の印象をより好ましいものにしている。



門をくぐって左奥の斜面にシラユキゲシの群落がある


ハンショウヅル


セリバヒエンソウ


直径が1センチ程度しかないコケリンドウ


ホタルカズラ


チョウジソウ


白花のタツナミソウ


花の寺の名にふさわしいたたずまいの光則寺山門


本堂の屋根もまた一幅の絵なのだ
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