まだ火曜日だから、更に日本人の受賞者が出るかもしれない。
正直言って、日本の底力というのはすごいものだなぁ、と感心してしまう。
特に「地道にコツコツ」という路線の上で受賞者が多いのも日本の特性のような気がする。得意技と言ってもいいんだろうか。
今回もその地道にコツコツ路線が顕著なのが医学・生理学賞を受賞した北里大栄誉教授の大村智さんである。
大村さんの研究は地中に含まれる微生物の中から、人類に役立つ薬を作り出す微生物を発見することなんだそうである。
その結果、大きな成果として挙げられ、今回の授賞の理由になったのが、熱帯の感染症で感染すると多くの患者が失明してしまう病気の治療薬の開発に結び付いた研究なのだそうだ。
薬を作り出す微生物を静岡の伊東近辺のゴルフ場近くから採取した土の中から発見したんだそうだ。
アフリカや中南米に河川盲目症という感染症が存在し、多くの人々を苦しめてきたが、今では大村さんの発見した微生物によって作り出される薬は年間3億人に投与され、毎年60万人の失明を防いでいるのだとか。
なにか、鳥肌が立ってくるような話である。
大村さんはいつも財布の中に土を採取して研究室に持って帰るための小さなビニール袋が入っていて、それに加えて土を採取するスプーンを持ち歩いているらしい。
土中の微生物と言ったって、われら専門外でしかも凡愚の身には想像も及ばないが、ひとすくいしてきた土の中には1億個もの微生物がいるんだそうだ。
その一つひとつを有効かどうか、丁寧につぶしていくんだそうである。考えるだけで気が遠くなりそうな作業ではないか。
大村さんの快挙をたたえる報道の中で知ったことだが、大学を卒業した後に就いた都内の定時制高校教師時代のエピソードにも感動した。
それは、期末試験の時のことだったらしい。
仕事が長引いてしまったのか、大急ぎで教室に駆け込んできて答案用紙に向かう生徒の指先に、ふと目が止まったんだそうだ。
手を洗うのももどかしく、よほど慌てて駆けつけてきたんだろう、ペンを持つ指先に機械油がまだよく落ちずに残っていたんだそうである。
その姿を見て、ああ、こんなにも真剣に、必死に勉強しているんだ。俺ももっと勉強しよう、と奮起して教師を続ける傍ら、大学院に通って勉強を始めたのがこの道に入るきっかけだったんだそうだ。
勤労学生の指先から感じ取れるものがあるという、その感性の素晴らしさ。加えて、その時の思いを貫き通せる力は、やはりタダ者ではない。
自分自身は持ち合わせていないが、そういう感性が大好きで、小説や映画などでそういうものに触れると、とたんに胸が熱くなり、涙腺の栓が壊れたんじゃないかと思えるほどに、ゆるゆるになってしまうのである。
しかし、わが身はいかんせんそこまでで、感動だけで終わり、その先が無いのが凡人の凡人たる所以なのだ。
育てられた祖母から「人間に大切なのは人のためになることなんだよ」といつも聞かされて育ったそうで、長じてまさにその教えを忠実に胸に刻んで、地道にコツコツ、人のためにと仕事をしてきた結果なのである。
偉い人がいたものである。
2015年10月7日午前4時14分の東の空。月、金、火の惑星が一列に並んでいる。火のさらに斜め下には木もあるはず。月は三日月に近くまで細っているが、スマホで撮影すると光の塊としてしか写らない。
金星と火星
最新の画像もっと見る
最近の「日記」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事