平方録

心と体をしっかり虫干ししてきた

朝のうち、内陸方面に雲は残っていたが海岸沿いは見事な好天で、日が沈むまで続いた。
9日ぶりの青天である。自転車でパトロールするのは2週間ぶりになる。

身体中に生じたカビを取り払うべく、肉体と心の両方の虫干しをするために朝ご飯を食べてすぐに出発した。
鵠沼海岸に出て、相模川河口までは湘南海岸サイクリングロード、別名、太平洋岸自転車道を行く。
コースそのものは8.4kmとそれほど長くはないが、波打ち際を走っているし、車とは松林で隔絶されているから、快適そのものである。
平日というのは、しかも午前中だとこの自転車道に人影はまばらなことが多い。
ところが、昨日は久しぶりの好天だったためか、朝から休日並みの人出である。
自転車はもちろん、老人と言ってよい年齢の散歩する人々、ランニングの若者やこれもまた老境に達したと思しき人々。
おそらくみんな、体中に生えたカビを取り除くために、海風と太陽の光を浴びに来たのだろう。
その気持ちよくわかる。すれ違う人々こぞって嬉しそうな良い顔をしているのが印象的である。
それくらい滅入る天気が続いたのだ。待ち焦がれた晴天なのだ。

晴れているのは海の上ばかりで、富士山も箱根連山も、丹沢山塊も靄の彼方である。
海岸に打ち寄せる波は結構高くて、サーフィンには絶好な波に見える。打ち寄せては砕ける波の白さがまぶしい。
しかし、毎度のことだが、湘南のサーファーと言うのは変わっていて、波がまったくないような日には大勢が海に出ていつ来るともしれない波を板の上で待っている。
そのくせ、この日のようにハワイの波を連想させるような立派な波が次から次に押し寄せては砕けていくような日には、波に乗っているのは数えるほどの人数で、たいがいは陸から眺めているだけ。海に入ろうともしないのである。
海岸に姿を見せる90%は「今日はサーフィンには不適な波だ」と判断しているかのようなのである。
実に不思議な光景なのだ。

気持ちがよく、心も軽いので、すぐに相模川も越え、花水川も越えて、大磯の旧吉田茂邸まで着いてしまう。ここまで26km。
小田原まで行って戻ってくるという選択肢もあるが、国道1号を行かなければならない。歩道のないところが多く、交通量も多いところがあって、快適とは言い難い。
大磯警察署の先から丘陵地帯に向かって北上することにした。
坂は避けたいが、多少のアップダウンは止むをえない。
東海道線を越えてしばらく行くと東海道新幹線と交差する辺りから田園風景が広がっている。
あろうことか、新幹線の中でガソリンをかぶって火をつけるような狂気に、超特急が緊急停止を余儀なくされたのはこのあたりからほんのわずか西に寄ったところである。
小川が流れる脇を行ったが、草いきれでむせかえるような所が続く。水は流れているのに水田は見当たらず、畑ばかりで、トウモロコシやその他が植えられている。

曹洞宗の松岩寺という寺があって、一旦は通り過ぎたのだが、何やら緑深い奥にあるようで、県道からは見えないが、近くにバスの折り返し所もあって、Uターンしてみた。
ところが近づいてみると、山門に続く階段は天に懸けたハシゴのように急で、木立の深さもあって山門どころか上は皆目見えない。
その脇の道路も同じ傾斜なのだが、20度か30度近くもありそうな急坂で、鎌倉の銭洗い弁財天の前の急坂よりきつそうである。
27段の変速ギアが付いて、銭洗い弁財天前の坂は一番軽いギアにすれば何とか上れるのだが、ここは到底上れそうにない。
止むなく押して上ったが、押して登るだけで激しく息が切れた。

16世紀の建立と記されていたが、寺そのものは特段古刹の趣を感じさせるようなところはなく、いささか期待はずれだったが、裏山に登ったところ、絶景が広がっていた。
裏山といっても畑が広がっていて、寺の屋根越しはるか彼方に平塚の市街地が広がっている。
広重が東海道五十三次の平塚宿で描いた高麗山をはじめ、湘南平が目の前に迫っていて絶景である。海風が吹き抜けて行くのが心地よい。

標識には21分、と書かれていたが、何のことは無いその半分で到着したが、山道を奥に進むと轟々とした水音が聞こえ始め、「霜降りの滝」という、どこからこんな流れが生じているのかと思わせるくらい豊富な水の流れがあって、高さ12mの滝が現れたのには驚かされた。
深山幽谷ならいざ知らず、畑の脇から突如生じたような、何か狐につままれたような、不思議な光景であった。

のんびり6時間弱、走行距離66km。体中のカビはきれいさっぱり消えて、元気モリモリに回復した。こうでなくっちゃ!




小学校1年生くらいの集団が遊びに来ていたが、その脇に立つ2人のサーファーはしばらく思案した挙句、海に入ることなく引き上げていった



真っ逆さまに転がり落ちそうな松岩寺の急階段(上から見たところ)


寺の裏山に登ると畑が広がり、平塚の市街地が一望できる。右奥の丘は広重が描いた高麗山(左端)とそれに続く湘南平。結局この日は湘南平の丘陵をぐる~っと一周して花水川河口に戻った。



高さ12mの霜降りの滝とその流れ
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