四国から戻ってきてしばらく経った先日のある日、久しぶりに湘南海岸サイクリングコースをパトロールして見ると、台風19号による堆砂の除去作業が続けられてはいたが江の島方向から4キロ地点までしか進めず、その先は国道134号に迂回させられた。
地名で言えば茅ヶ崎海岸の菱沼海岸エリアの数百メートルで、除砂作業に伴う通行止めは珍しいのでオヤッと思ったのだ。
通行止めはこの区間だけで、それ以外は柳島海岸エリアの相模川河口まで約4キロは一部で道幅が狭くはなっていたが、いつものように走ることができた。
それだけに、よほどの堆砂があったのかと当初は訝ったのだが、調べてみると堆砂による通行止めではなく、高波被害によるサイクリングコースの一部崩落が原因だということが分かった。
現場は一昨年も台風の高波被害に遭ってサイクリングコースの一部が崩落してしまい、復旧に半年近くかかったことを思い出した。
湘南海岸は特に茅ヶ崎海岸において砂浜の減少が著しい。
最大の原因は相模川水系に戦後になって次々と作られたダムや堰の類によって川砂の供給が経たれたことだろう。
2014年に策定された国土交通省の「相模川流砂系総合土砂管理計画 骨子案」なる資料をネットで見つけて見てみると、茅ケ崎海岸の砂浜の後退は相模川水系に建設された8つのダムが流砂を遮断してしまってダムそのものの水深も浅くし、機能を阻害しつつあるということが書かれている。
そして、この資料には驚くべき記述があって海岸の後退についてこうはっきり記していた。
「茅ケ崎漁港や海岸建造物により砂の移動バランスが崩れて砂浜が減少した。(茅ヶ崎海岸では50年間で汀線が約60m後退)」
60m ! って、えぇ~っ ! と開けた口が閉まらないまま顎が外れてしまいそうだ。そんなにも後退しちゃったの !? と驚き、あきれてしまう。
ダムを作って流砂をせき止め、さらに海岸線の構造物によって砂の移動バランスが崩れるという往復ビンタを両頬に食らっている結果だというのだ。
鎌倉の七里ヶ浜も然り。
稲村ケ崎付近で波打ち際の国道134号の歩道が15号と19号の2度の台風による高波被害で2か所も崩落してしまい、現在片側交互通行を余儀なくされて大渋滞が連日起きている。
ボクは30代前半の一時期、よくあの浜辺に寝転んで読書をしていた。そのころと比べてもついに高波が国道を洗うまでにやせ細ってしまったということなのだ。
あれよあれよの気分である。
日本の風景の美しさは海岸線の美しさでもあるのだ。
奇麗な砂浜が広がる海岸線を見て、眉を顰める日本人なんてどこにもいないだろう。
しかし、国道を波が洗うような光景にうっとりする日本人もまた、いないはずである。
砂浜の保全は随分前から言われ続けていることだ。
国交省のホームページを見ても、砂浜が痩せる原因についてダムが原因の一つと認めている。
T字形のヘッドランドを作るなどの養浜の試みなどが茅ヶ崎海岸でも行われているが、効果は限定的である。
まごまごしていると砂浜の後退は松林に達し、やがて国道134号線の下に届くだろう。そうなると正月の箱根駅伝のテレビ中継は松林の中の国道を行く選手ではなく、波打ち際を走る選手の姿を全国に中継することになるだろう。
遠い将来の話ではないと思う。
笑い事じゃないぜ。
通行止めの先を確かめるために波打ち際まで下りて見ると高波にえぐられた跡が続いている
さらに進むと補強のために設置した癌関を網でくるんだ構造物が露出してしまっていた
右上に見える白いフェンスがサイクリングコースに沿って設置されているフェンス
砂浜がほとんどない! かつては汀線から60mも砂浜があったなんて嘘のようだ
復旧には時間がかかりそうだ
崩落現場の西側は一昨年の台風で被害に遭ったところだが、こちらの被害は軽微で済んだようだ
奥に見えるのがT字型ヘッドランド 効果が限定的とはいえ、ある程度の砂浜はかろうじて確保されている
こちらは崩落現場から東側 こんな崖が出現してしまった
崖上には漁師の漁具置き場になっていて、あわや流出の事態はまぬかれたが危機一髪