平方録

春夜喜雨 されどシラスは…

3月11日に解禁された相模湾のシラス漁だが、ひと月余り過ぎた今でも、あのピチピチした生シラスを店頭で見かけない。
どうやら水温が低いのが稚魚たちが沿岸に近寄らない理由のようだ。
海の中はまだ冬が支配しているのだろうか。

それでも、ここ2、3日は網に少量のシラスがかかるようになってきたから、もう少しすれば店に並べられるくらい獲れ始めるだろう、というのは湘南・片瀬で名高いシラス専門店の御託宣である。
もう何度店頭を覗いてみたことか。
電話でもいいのだけれど、こういう場合は足を運んで店の人と話をして海中の様子を聞き、店裏の汽水域の川の匂いを嗅いで、ちょっと足を延ばして海を眺めて帰ってくるのが作法というものである。
何事にも、正しい作法というものが存在するのである。

したがって初モノを口にできているのは漁師たちだけらしい。
もうひと月も待たされている身には、待ち遠しくてならないが、子どものように駄々をこねれば親が買ってくれるというようなわけにもいかず、こればかりはどうにもならない。首を長くして獲れるのを待つばかりである。

3月の下旬ころから顕著になってきていたが、1日か2日ポカポカとした好天が続いたかと思うと3、4日冷たい雨に降りこめられる、という繰り返しの日が続いている。
三寒四温というのがあるけれど、これでは三寒一温である。どう見たって温が足らないではないか。
♪ 三歩進んで二歩下がる ♪ という歌があるけれど、これだとわずかずつではあるが前に進む。でも気象の世界は一歩進んで三歩も下がっている。
お陰で先月下旬に開花したサクラは開いた瞬間に冷蔵保存状態に遭うことを繰り返したので、結構長持ちしたのは功罪の中のわずかな功の部分だったと言えば言える。

季節は二十四節気の「穀雨」。作物にとって恵みをもたらす雨のことである。
このほか穀物をはぐくむ雨を「瑞雨(ずいう)」、草木を潤す雨を「甘雨(かんう)」と言うそうだ。
さらに「催花雨」「菜種梅雨」「卯の花腐たし」があって、春の雨も悪くはないが、いささか降りすぎじゃぁないのかね。

それにしても一日中強く降りこめた昨日の雨は冷たかった。よく雪にならなかったものだ。
うんざりなことに、今日も一日雨の予報がでている。
横浜イングリッシュガーデンの庭は素晴らしく春景色で、バラの成長も目覚ましいものがある。
晴れていれば客足も好調なのだが、雨はぱたっと客足を止めてしまう。
降りすぎると花も痛む。今年の雨には些か困っているのである。

気分を変えよう。
杜甫の五言律詩。題は「春夜喜雨」。


 好雨知時節
 当春乃発生
 随風潜入夜
 潤物細無声
 野径雲俱黒
 江船火独明
 暁看紅湿処
 花重錦官城


よい雨は、その降るべき時節を知っており、
春になると降り出して、万物が萌えはじめる。
雨は風につれて、ひそかに夜中まで降りつづき、
万物を細やかに、音も立てずに潤している。
野の小道も、たれこめる雲と同じように真っ黒であり、
川に浮かぶ船のいさり火だけが明るく見える。
夜明け方に、赤い湿ったところを見ると、
それは錦官城に花がしっとりぬれて咲いている姿なのだ。

(石川忠久訳)


こういう雨はいいなぁ、好雨…



姫の入学式から帰ってみたら、ハナミズキのピンクの花が開き始めていた。これから花はもう少し大きく開いて梢を覆い隠すようになる


芽ぶきの早いカツラの新緑が随分と旺盛になってきた

 
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