平方録

高校の同級生

久しぶりに高校時代の同期のIとKと横浜の野毛で飲む。

Iは僕と同じサッカー部。Kはラグビー部にそれぞれ所属して、それなりの青春時代を過ごした。
Iは商社に勤め、人事畑を歩んで最後は部長になり、リストラに大ナタを振るった挙句「多くの社員の首を切ったのだから…」と3、4年前に潔く社を去った。アメリカに長く駐在していたこともあり、長男はアメリカで暮らす。最近孫が生まれたが、まだ対面はしていないようである。
Kは都会生まれの都会暮らしゆえか、大学は農学部に進んだ。しかし校門をくぐることはなく、手前の雀荘で4年間を過ごし、それでも何とか卒業。全く畑違いの水商売に入り、レストランなどで接客の仕事に就く。今もってフロアーで客の注文などを聞いている。
一度結婚したらしいが、長いこと独身である。彼とは中学も一緒。

会って早々、Kが「身辺に波風が立っていて困っちゃってるんだ」とぼやく。
妹が一人いるのだが、危険だからと築60年の家の改築を勧め、付き合っている女性との結婚まで迫るのだという。

「オレ、金なんか一銭も持ってないんだ。妹とその旦那がどんどん進めちゃってるんだ。金は貸してくれるっていうんだけど、返せるわけないじゃん」と、うかない顔である。
「それとさぁ、付き合ってるあの子と一緒になれっていうんだよ、妹は。彼女とは30歳以上年が離れてんだぜ。おまけにあの子の父親は俺より年下だぜ。『お嬢さんをください』なんて言えるか?」「仮にだよ、お前たちの娘がさぁ、自分より年上の爺さん連れてきて結婚しますって言ったらどうするョ? 」
「妹のところに子どもはいないんだ。お兄ちゃんが寝たきりになっても面倒見切れないよっていうんだ。そんなことわかってるけど、だからくっつけたがってるんだなナ」

2年くらい前に、妻と横浜の野毛山公園を歩いていて、女性を連れて向こうからやってくるKと出くわした。目の早いやつで街で出会うときなどはたいがいKが先に気づくのだが、その時は彼女との会話に夢中だったと見えて、近づくまでまったく気付かない。「おう」と声をかけた時の慌てようは見ものであった。
悪さを見つけられた子供のように、どれだけバツが悪かったのか、目は宙をさまよい、うろたえたのである。“前期高齢者”のいい爺さんが、である。

そんな男だが、根は正直で善良である。極めてまじめな性格。だから人に好かれる。

「住宅メーカーとは契約しちゃったんだよ。残っているのは地質調査だけで、それが済めば建ち始めちゃうんだよ。なあ、どう思う?」と酒をあおる。
「なんだよ、話はそこまで進んじゃってるの。だったらじたばたできないでしょ」
「親父に正式に面会して申し込むのはなぁ、惻隠の情ってあるだろ、やめとけよ。事実婚でいいんじゃないの。それがいちばん波風なし」 

Kは困惑を見せつつ、まんざらでもない様子で、どこか嬉しそうなのである。
友達の遅い幸せの到来を祝福しよう。新築祝いと事実婚祝いを盛大にやらねば。


久しぶりの再会は焼き鳥の末広から。このあと2軒をハシゴ。野毛界隈もひところの落ち込みを脱して活気づいてきた。
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