30年ほど前、国道6号線沿いの、ある商店に勤めていたのですが、遅番勤務していると、毎晩、世間が寝静まった時分に、2キロ先の海の方から、ドンドン、ドンドンと、波の音が聞こえてくるのです。
経験のある人にはわかっていただけると思いますが、客のいない静かな夜の遅番は、何と言っていいのか、非日常的、非現実的な独特の雰囲気があるんですよね。
それは波の音には違いないのですが、音の周期が普段の海のゆったりしたリズムではなく、まるで昔の長い貨物列車のようで、不自然に速すぎ、途切れないのです。
子供の頃、漁村に住む親戚の家に泊まりに行って、遠くから響いてくる波の音に不安を感じて眠れなかった事がありますが、あの音と同じものとはとても思えない。
私は何か、違う世界の音でも聞いてしまったような気持ちで、同僚と、音の出どころについて話したものでした。