4年ほど前,塾内誌に投稿した文章から
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小学校の頃通っていた塾の国語の読解の授業で,担当の先生が時折懸賞問題を出題されていました。主に漢字に関する問題で,文中の二字熟語や四字熟語の同意語などを答えさせることが多かったと記憶しています。マンガ以外の読書(?)は殆どせず語彙力もあるとはいえない僕でしたから,このような懸賞には縁がなく,いつも丸刈りで細身,読書少年の吉田君に持って行かれていました。子供にとっては豪華な文房具や参考書を,毎回吉田君がゲットするのを横目に,負けず嫌いな僕の闘志がメラメラと燃え上がらない訳はありませんでした。
「このままではいつまで経っても吉田には勝てない」
そう気づいた僕は,塾では禁じられていた「予習」をすることにしました。マンガ用に貯めていた小遣いを握りしめ本屋に行き,値段の割に最も沢山語彙を収録していると思われる漢和辞典を購入,国語の授業の前日に夜の2時までかかって本文中の難読語や出題の予想される漢字を片端から調べあげました。
こうして対策を立てて臨んだ初めての授業,調べた語句は残念ながら,先生の質問にかすりもせずに,懸賞はやはり吉田君に渡りました。気を取り直して臨んだ次週,やはり軍配は吉田君に上がりました。
同じことが何週か続いたある日,文中に「徒手」という語句が出てきました。
先生が
「『徒手』の同意語がわかる者いるか?」
と尋ねられました。
「来たぁ!!」
ドキドキしながら挙手し,僕は
「『空手』や『赤手』があります。」
と答えることができました。
「難しいのによくできたな!」
初めて手にしたご褒美は白と緑の2枚あわせの下敷きでした。その後も予習は続け,3,4回は首尾よく答えることが出来たと思いますが,なんといっても初回の嬉しさは格別だったようで,この下敷きは今でも大切に取ってあります。
簡単に手に入れたものは簡単に手を離れていきますが,自分で頑張り苦労して手に入れた知識はそう簡単に頭から離れません。何よりその過程でもっと大切なものを手に入れることが出来るのです。
「心に残る勉強」
FELIXでは皆さんにそのような勉強をしてほしいと思います。
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今でもやっぱりそう思います