友達が大阪に行って美容師を目指している
夢を追う友達の影響で
自分にやりたいことがないことに気がついた
好きなことは特になく
得意なことも特にない
趣味もなければ
学力もない
何が自分に向いてて
何が自分に出来るのか
分からないから何もしなかった
もかけばもがくほど苦しくなるのも分かっていたし
焦れば焦るほど台無しになるんだろうし
何も考えないようにしてた
でも私は学校にいることには必要性を感じてなかった
ここでは学べることが少ないと感じていた
学校を辞めたい
そんな思いを父に話した
何がしたいわけでもなく
ただ
かと言って意味がないことはしたくなかった
父が母に相談したんだろう
母から連絡が来た
母と弟が住むアパートに向かう
築何年だろう
あまり見ることもない二階建ての借家で
隣にも同じ作りの建物が並んでいる
隣の家との境目は壁一枚で
見るからに隣の家からの声が聞こえてきそうだ
学校からの距離も前と変わらないぐらいで
隣の地区の脇道の中にある古いアパートだ
ガチャガチャ音がする着火式の古いお風呂の音が聞こえる
母は台所にいたようでエプロンをつけて駆け足で玄関から出てきた
「あがって、あがって
玄関にあがると中は古びた木造の柱や梁がむき出しの和風の作りの家だった
弟はまだ帰宅しておらず、二階の一部屋はまるまる弟の部屋で
弟の部屋を通り抜けると襖一枚で隔てられた部屋があった
姉の部屋だ
ニルバーナのポスターやLUNA SEAのCDが並んだ部屋だった
ハンガーにはスタッドのついた革のライダースジャケットが掛けられていた
「学校やめるんだって?
「うん。辞めたいと思ってる
「学校辞めてなにするの?
「何も決めてない…
「これからは社会人になろうと思えば最低高校は卒業してないと困ることの方が多くなるし、手に職って時代でもないんだよ?あと一年半頑張って行ってからじゃダメなの?
「…
帰ってくる言葉は全て正論だった
自分の将来のことを踏まえ、先を見据えて
穴だらけの私のプランに
母は賛成するわけもなかった
「ご飯食べて帰る?
「うん…
帰ってきた弟と久し振りに出会うと背丈が伸びて、今にも母は追い越されそうになっていた
口調も荒々しく
年頃の男の子になっていた
「姉貴、学校辞めんの?
「姉貴の学校もヤンキーとか怖い奴おる?
「姉貴の友達大阪行ったやつおるんでしょ?
いつもはそこまで口数の多くない弟だったはずだったが
この時ばかりは久しぶりに出会うと姉弟からか
会話は終始止まることは無かった
帰り際
母は私に
「お父さんとこ離れてわたしたちのところに来ない?
「…
「優也もアンタのこと好きだし、またみんなで暮らさない?
「学費だって何とかなるし
「…
行きたい本心を言おうか言わまいか悩んだが
少しの沈黙のあと
私は母に
もうしばらく父と暮らすことを告げた
「お父さんともう少しいるよ。
すると母はすごい剣幕で
「じゃあ二度と来ないで。もう二度と連絡もしてこないで。
と癇癪を起こした
ビックリした私はそのまま逃げるようにその場を立ち去り家路についた
帰ると珍しく父が帰ってきていて
「ただいま…
の声と同時に襖が開き、父が顔をのぞかせた
「母さんのとこに行ってたのか?
「うん…
「何で帰ってきた?
「…?
「帰って来なくていいからアイツと暮らせば良かったんじゃないのか?
父も私が母に会ってたことを知ると
淡々と怒りながら私を責めた
何でなんだろう。
お互いがお互いを好きで結婚して、子供もできて、幸せだったはずなのに
別れた途端に天敵のようにけなし合い
子供を取り合い
子供の気持ちも考えずに
自分だけのものだと執着する
子供が相反する行動を取れば
いきなり手のひらを返し
自分にはお前は必要ないとばかりに罵声を浴びせる
涙が止まらなかった
私はどちらの親も大好きで
出来ることなら
どちらとも関わり
それなりの関係が続くならそれで良かったのに
両親共から
不要な子だと罵声を浴びせられた
どちらかにつけば、どちらかとは会えなくなる
そんなオモチャの取り合いのようなやり取りに
私は1人
その場に捨てられた
ただ泣きながらうつむく私に
父は
母に連絡を取り、機嫌を取り、一緒に住まわせてもらえるよう話をしろと私に言った
母はまた手のひらを返し
自分の元に帰ってきた満足感だけで私を引き取った
私はこの時から
両親の愛情すら本物なのか分からなくなった
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます