僕は親父からの手紙を読み
陽平のことを知り
百合に話を聞いてみることにした
でも百合自身もそんなことは全く知らず
本当に親父と2人だけの話で
陽平の夢の話が現実味を増す一方だった
となりでニコニコしながらアイスを食べるあゆ美を眺めていても
頭の中は陽平のことばかりで
僕はやっぱり陽平の夢の続きを果たすべきだと考えるようになった
僕は突発的な発作からクローン病だと診断されてたから
死に至ることはないにしろ
後悔のないよう生きるよう陽平に背中を押された気がした
僕は心の底から笑ってくれるあゆ美が愛おしかった
そしてあゆ美も僕を愛おしく思ってくれていることは伝わっていた
そして僕は彼女と全身全霊で愛し合うことにした
この後急に僕が居なくなることで
あゆ美がどうなるかも考えもせず
離れる前に確かにここにある愛を感じたかった
彼女は震えることもなく
体温と体温が触れ合い
手と手が絡み
彼女の1つ1つの吐息を確かめながら
ひたすら彼女に愛を注いだ
門限の時間も過ぎたのに帰ろうとしない僕に
彼女は何を訴えるわけでもなく
ただただ嬉しそうに隣で笑っていた
彼女を送り届け
あちらの親さんにも挨拶をして
僕は今度いつ会えるのかも分からないくせに
「またね
って精一杯の作り笑顔で彼女を見届けた
そして
僕は空港で待つ親父と合流した
「挨拶はすんだか?
「うん。大丈夫。
「ここからは言葉の通じない異文化の国だ。
「分かってる。
「お前いつのまにかたくましくなったな。
「そうかな。
「いい顔になったな。
「陽平に笑われないようにしないと。
「…そうだな。
「俺、精一杯生きるから。
「…うん。精一杯悔いのないよう生きよう。
そして僕はこの年まで一度も出たことのない街を出て
遠い異国の地へ渡った
黙っていた母にメールをしたのは空港に着いてからだ
まずはじめに便箋とペンを買い
あゆ美に手紙を送った
もしも
もしもあゆ美が
僕が戻った時にもまだ僕を忘れてなかったなら
あゆ美を連れてこの街を案内しよう
僕が見たもの
陽平が夢見たもの
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます