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バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) |
前野ウルド浩太郎 | |
光文社 |
前野ウルド浩太郎博士の「バッタを倒しにアフリカへ」を読みました。
面白かったです。ワクワクしながら読みました。
ファーブル昆虫記に感動した前野少年は、昆虫学者を夢見て努力を重ね博士号を取ります。
しかし大学等の研究機関に就職できなければ昆虫「学者」にはなれません。
昆虫学者として雇用されるためには決め手となる実績が必要。
そもそも昆虫学が世のため人のためになる場所はどこだ。
アフリカでは度々バッタの大発生により農産物が壊滅的な被害を受け、莫大な経済損失や飢餓が発生しています。
しかもアフリカは自然環境が過酷なため、フィールドワークに赴く昆虫学者が極めて少ないことを知ります。
よし、じゃあ俺が行く。アフリカのバッタ問題の解決につながる大発見をして、就職して夢の昆虫学者になるのだ。
2年間の期限付きで研究費を獲得し、一人アフリカのモーリタニアに乗り込みます。
通じない言語、慣れない文化、そして過酷な自然環境の中精力的にフィールドワークを重ねます。
しかし不運なことに肝心のバッタが大発生しません。
なぜかアフリカでは昆虫学者が調査に入るとバッタの大発生が止まるとのジンクスがあり、以前に入ったドイツの調査チームは2年間滞在したものの大発生に遭遇できず何の成果もあげられず手ぶらで帰ったことを知ります。
莫大な研究費と経費をつぎ込み滞在してもバッタの大発生に遭遇できなければ成果0、その学者は信用を失って資金を集められなくなり次の研究ができなくなります。
こんな博打要素の強いフィールドワークより、研究室にこもって飼育したバッタを研究した方がコンスタントに論文が書け安定した学者人生を送ることができます。
しかし誰かがフィールドワークで情報を集めなければ、アフリカのバッタ問題は解決しない。誰かとは誰だ。俺だ。
意欲に燃える前野博士ですが、結局バッタの大発生に遭遇できないまま2年の期限が切れます。
ここで前野博士は大きな決断をします。無給でもいい。貯金を取り崩しながらアフリカに残ろう。俺がアフリカを救うのだ。そして就職するのだ。
ここから前野博士の本当の戦いが始まります。過酷な自然と経済状況の中、前野博士は研究所スタッフにヤギを贈るなど人脈を再構築し、モーリタニアのどこでバッタが発生しても真っ先に情報が得られるネットワークを構築します。バッタが現れるのが先か、貯金が尽きるのが先か、人事を尽くして天命を待つ日々。そこへもたらされる運命の一報。
はたして前野博士はバッタの大発生に遭遇できるのか!そして研究成果を引っ提げ研究機関に就職できるのか!…というお話。
コミカルな文体でユーモアを交えて研究の苦労やアフリカ文化の素晴らしさを描いており、面白くすいすい読めます。
バッタ問題の解決という共通の目標にむけた、研究所所長やスタッフ、世界で情報を交換する昆虫学者たちの情熱と友情に胸が熱くなりワクワクが止まりません。
ゲラゲラ笑いながら血沸き肉躍る、絶対おすすめの名著です。