駐独米軍の削減決定を見ると米議会によるけん制は感じられない
米国がドイツ駐留米軍の削減計画を公式発表した。3万6000人のうち当初予想されていた9500人よりも多い1万2000人を削減するという。エスパー国防長官は「より大きな戦略的目標」のためだと説明したが、トランプ大統領の防衛費増額要求を満たせなかったドイツに対する報復といった分析がより説得力がある。トランプ大統領自身も「同盟のかもになりたくない」と公言している。防衛費分担金の交渉中である韓国の立場からすると、トランプ大統領が在韓米軍削減カードを使用する可能性を想起せざるを得ない。
大統領選挙の時からトランプ大統領が粘り強く主張してきた海外駐留米軍の削減は、「説」と「可能性」で論議され、圧力を加えてきた。シリアから始まってアフガニスタンに続き、ついにはドイツにまでやって来た。
トランプ大統領を取り巻く参謀のうち、同盟を重視してきた伝統的な外交・安保関係者はほとんど姿を消してしまった。今はイエスマンだけが残っている。トランプ大統領が在韓米軍の削減カードを使おうとするとき、ワシントンでこれをけん制できる機関は今では議会だけだ。議会は予算議決権を利用し、トランプ大統領が海外駐留米軍の削減に予算を使えないようにすることができる。
米議会が毎年新たに成立させている国防権限法(NDAA)がその役割を果たす。国防省の予算運用の大枠を組む国防権限法により、特定地域の米軍削減のための予算を今すぐ使わせないことで、削減を困難にしたり先送りしたりしているのだ。
米上院・下院は最近それぞれ通過させた来年度国防権限法案で、2万8500人の在韓米軍を現行通り維持することにした。同水準未満に兵力を削減するための予算は執行できなくしたのだ。
しかし、例外条項がある。米国防長官が幾つかの事項を議会に立証する場合には、削減も可能だ。上・下院のいずれも在韓米軍の削減が米国の国益に合致し、域内同盟国の安保を深刻に損なわない上、韓日などの同盟国と適切に議論したという点を立証することができれば問題ない。下院はさらに、在韓米軍の削減が米国と同地域に対する北朝鮮による脅威の減少と比例しなければならず、韓国が韓半島(朝鮮半島)で戦争抑止能力を備えていることも立証するよう求めている。
ある議会専門家は「このような事項は国防長官が議会に手紙を1通書くことで簡単に克服できる軽い障害物にすぎない」という。議会が、軍統帥権者である大統領の削減決定をけん制することは困難だというわけだ。
駐独米軍削減決定の過程を見ると、米議会が発揮しなければならないけん制力はほとんど感じられない。同盟だけでなくNATO(北大西洋条約機構)との関係を重視する米議会では、駐独米軍削減に反対する声が多かった。しかし、トランプ大統領はこのような論議にもかかわらず、駐独米軍削減を推し進めた。
ウォールストリート・ジャーナルは最近、「米国防省が今年3月、トランプ大統領の圧力により在韓米軍削減案をホワイトハウスに提示した」と報じた。昨秋からワシントンでは、国防省がさまざまな在韓米軍削減案を巡り検討中といった話は秘密にもならなかった。軍事専門家たちの間では、海洋勢力である米国の立場からすると、在韓米軍の魅力はますます低下しているとの話も飛び出した。最近、米陸軍大学院傘下の研究院が発行した報告書でも、今後在韓米軍に対する需要が減る上、対中圧力で韓国の役割がオーストラリア、日本などに比べて低下するとの分析がなされた。在韓米軍に対するワシントンの考えは、単にトランプ大統領という特異な政治家がつくり出した突発的状況だけではないのだ。
駐独米軍削減計画が発表されると、韓国国防部は直ちに「在韓米軍の規模調整と関連して韓米両国における論議はない」と明らかにした。しかし、ここでわれわれが投げ掛けるべき質問は「論議したことがあるか」ではなく「その可能性に備えているか」なのだ。在韓米軍の削減で韓米同盟が一段階弱まったとしても、事実上の核保有国となった北朝鮮から自らを守れる能力を育んでいるかどうかが重要なのだ。
姜仁仙(カン・インソン)副局長