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素材抜粋―『小澤征爾さんと、音楽について話しをする』

2012年01月30日 | 読書

素材抜粋                               2012.01.29

小澤征爾さんと、

音楽について

話しをする

 

小澤征爾×村上春樹

新潮社

2011

 

 


……我々のどちらもが、仕事をすることにどこまでも純粋な喜びを感じているらしいということだ。音楽と文学という領域の違いはあれ、ほかのどんなことをするよりも、自分の仕事に没頭しているときが何より幸福だ。そしてそれに熱中出来ているという事実が、何にも増して深い満足を与えてくれる。……それとは別に、集中して仕事が出来ること、その作業に時間を忘れて心から打ち込めること、そういうこと自体が何ものにも換えがたい貴重な法相となっている。(村上)

 

……今でも若い頃と同じハングリーな心を変わらずもちつづけていることだ。いや、これくらいでは足りない、もっと奥まで追求したい、もつと前に向かって進んでいきたい、というのが仕事をする上での、又生きる上での重要なモチーフになっている。(村上)

 

三つめは……頑固なことだ。辛抱強く、タフで、そして頑固だ。自分がやろうと思ったことは、誰が何と言おうと、自分が思い描くようにしかやれない。(村上)

 

ゼロの地平から何かを立ち上げるには、個人的な深い集中は多くの場合、他人との協調とは無縁の、あえて言うならデモーニッシュな場所で進行させられるからだ。(村上)

 

僕はいつもも考えるのだけど、そのような集中力なくして、僕という人間の生活はない。僕にとって、もし人生からそのような集中力が失われてしまったとしたら、それはもはや自分の人生ではない。(村上)

 

この人はそれをやらないわけにはいかないのだ、ということだ。(村上)

 

文章にリズムがないと、そんなもの誰も読まないんです。前に前にと読み手を送っていく内在的な律動感というか……。(村上)

 

そうです。言葉の組み合わせ、パラグラフの組み合わせ、硬軟・軽重の組み合わせ、均衡と不均衡の組み合わせ、句読点の組み合わせ、トーンの組み合わせによってリズムが出てきます。ポリリズムと言っていいかもしれない。音楽と同じです。(村上)

 

僕はジャズが好きだから、そうやってしっかりとリズムを作っておいて、そこにコードを載っけて、そこからインプロヴィゼーションを始めるんです。自由に即興をしていくわけです。音楽を作るのと同じ要領で文章を書いていきます。(村上)

 

特殊能力と言ってはなんだけど、何かの複雑な総体をあるいは入り組んだひとつの概念を、精密写真を写すみたいに、そっくり同時的に取り込んでしまえる能力を持った人っているんですよね。(村上)

 

じっと楽譜を見ているとね、音楽が自然にすっと身体に入ってきます。(小澤)

 

村上「つまり彼(マーラー)は方法論としてではなく、ごく自然に本能的に混乱を引き寄せてきた。そういうことですか?」

小澤「それこそがまさに彼の才能じゃないですか?」

 

その最後の一枚の膜を剥ぎ取るのは、時としてとてもむずかしい作業になる。(村上)

 

「良き音楽」ができあがるために必要なものは、まずスパーク(発火)であり、それからマジックなのだ。どちらかひとつでも欠けたら、そこにはもう「良き音楽」は存在しない。(村上)

 

 

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【読後感想】

 

小澤征爾さんはともかく、村上春樹さんについてはほとんど未知の人。本屋で『海辺のカフカ』が積み上げられていた記憶とイスラエルでなにやら受賞講演をした人くらいしか記憶がありません。

 

 今(2012.01.29)、グーグルで検索して村上さんのアウトラインを承知したところ。実験的な試みをしている由、興味を持ったところです。特に人称について。

 

それはさておき、この本は非常に刺激的な本であり、読み終わるのが惜しい本でした。こういう本があるのだと大変心強く感じました。又、出来れば私だけの宝物にしてしまいたいと考えました。「素材抜粋」などしないで、ひっそりとしておきたいというアンビバレンツな感情を持ちました。

 

当方は音楽については、全くの素人で、学生時代(とは言え、50年も前のこと)はコルトレーンなども聞いておりましたが、その頃のお気に入りはブルースとカントリーとタンゴでした。新宿のジャズ喫茶にも出かけました。

近年はウォークマンでもっぱらモーッアルトだけ聴いております。その聴き方は、村上さんのような聴き比べは一切しておりません。単なる好き者です。村上さんのような聴き方は時間と金が有りませんので、別世界事です。そう言えば、学生時代にN響の定期演奏会を何度か聴きに行った事があったのを思い出しました。

今は、BSTVの「アメージング・ボイス」を楽しみにしております。

 

この本で、マーラーがどれだけ実験的な人物、というより、どれだけ自分に頑固であったかを知りました。

 

小澤さんのすばらしい活躍、「小澤征爾スイス国際音楽アカデミー」に栄えあれ!と祈ります。

 

 

2012.01.29

高野 義博


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