「私は売る人、呉服屋さんは、着る人に指針を示し、その人 が望む着姿に導いてくれる、総合プロデューサーのようなものでは ないかと考えております。そして着る人も、売る人にはそうあって欲しいと望んでいる。もしくは、頭からそういう存在だと思っているのではないでしょうか。それは、雨宮さんがおっしゃったように、着る人のほとんどが赤ちゃんであり、外国人であるからです。どこの呉服屋さんも、ひつじやさんやあづまやさんのような、その人(生活、年齢、用途、経済状況)を見て、柔軟に対応してくれるお店であればどんなに良いでしょうね。きっと、そう言うお店が簡単に見つからないからこそ、わざわざ遠方からひつじやさんを訪れるような人がいるのだと思います。」
「ひつじやさんが仰った”客が呉服屋を育て、元気にすべし”という件ですが…正直な話、世の中の経済状況がよくならなければ呉服屋さんが元気になるのは難しいのかなと感じた次第です。呉服屋さんにとって良い客というのは、やはり購入してくれる、直接購入しなくてもその呉服屋さんの発展に何らかの形で貢献してくれる客だと思うのです。頻繁に店を訪れて、茶飲み話をしているだけではただの友達♥♥ 面倒かけて、迷惑かけて、苦言を呈して…でも最後には買ってくれるか、商売上のビッグチャンスに結びつけてくれた、などというオチがなければ、客とはいえないですよね。もつとも私などはさほど呉服店に貢献しているとも思えませんが、それでも、呉服店が元気あるためには、私のような小さな一般客も頑張って購入するよりほかはないような気がします。
今は良くも悪くも様々な情報を手に入れることができますので、きものを手に入れる場所として単純に呉服屋さんが一番とは思えないこともしばしあります。でも今のきものの流通の具合を考えると、現状では呉服店で買うことできっとその一番先の職人さんたちにつながっていると思えるものですから、呉服屋さんで購入するということは、ポイントが高いかと。早く景気が良くなって、経済力のある「客」がそれなりの力を発揮してくれるようになると良いのですが。
それにもう1つ、きものの世界を学ぶことについて。ひつじやさんはそれは無理とおっしゃいましたが、そもそもきものの世界の義務教育レベルくらいは取得していないと、呉服店に行ってもいたずらに店主を困らせるだけだと思うのです。そしておそらくひつじやさんも念頭においていらっしゃるだろう高等教育レベル…そこは着物をとりまく知識や話題が果てしなく広がり煌めく世界。その膨大さ、甚大さに失神しそうになりながらも、たとえほんのさわりでもそこに一歩足を踏み入れることが出来れば、それはこの上ない喜びです。着物を着たり、着物に興味を持ったりするようになると、残念ながらこの禁断の喜びの存在に気づいてしまい、そして無理を承知で近づくのでは…(続く)