<ここまでの話>
「(第1話)きっかけ・・」
「(第2話)待ち合わせ・・」
「(第3話)イタメシ屋・・」
「(第4話)ワイン・・」
「(第5話)胸・・」
「(第6話)手・・」
「(第7話)電車・・」
------------------------------------------------------------------------------
携帯電話を手に持って廊下に出た私は、周りに誰も居ないかの確認を行っていた・・
本来であれば、部屋を出る必要性は無いじゃないのか?という疑問もあるのだが、
そのときの私は、慌てて廊下に飛び出していたのだ。
(やましい事があるわけではない。)と自分自身に言い聞かせるものの・・
心のどこかに、就業倫理としての罪悪感があったのかもしれない・・
そんな小さな心の動きを証明するように・・
私の心臓の鼓動は若干ではあるが、いつもより早くなっていた・・
「あっ・・ はい! 今、大丈夫ですよ・・」
「・・・ もしもし、お仕事中にすみません・・
あっ・・ この番号・・調べちゃいました(てへっ)・・
勝手に調べて、申し訳ありません!」
「あっ・・ いや・・ 良いんだよ・・ 営業の子達はみんな知っているし、
緊急連絡網なんかにも書いているからね・・ オープンの番号さ・・」
「・・・ 携帯にお電話を差し上げたのは・・
オフィスにかけると、誰が電話に出るか解らないし・・
また、その場に誰がいるかも、解りませんから・・
直接、ご本人に繋がる携帯が良いかな?って・・」
「あ・・ そうなんだ・・ で、周りがうるさいけど・・ 今どこなの?」
「・・・ すみません、うるさいですか? 移動中なんですよぉ・・
で・・ この前のお話から内部監査が実施され、その結果から、
私が 対策立案担当 になった事をお伝えしておくべきだ・・
と思いまして・・ お仕事中、申し訳ありませんが、
まずは一報と・・」
「それは、良かった・・ じゃ!やりたいような対策立案提示が可能なんだね?
うん・・ 良かった!良いプロジェクトになるよう頑張れよ! 期待しているから・・」
「・・・ ハイ♪ ありがとうございます。 また結果が出ましたら、
ご迷惑でなかったら、連絡いたします・・」
「いやいや・・ 迷惑だなんて・・
掛けたい時に、いつでも掛けて来ていいよ 24時間365日で待ってるぞ(笑)・・
私も、可愛い声が聞けると嬉しいから・・ ♪ 」
急に自分の鼓動が早くなった・・
あれ・・ 私は今・・ 何を言ったんだろう・・ 彼女からの返事が怖い・・
実際には、ほんの少しの時間がその場を流れただけなのだが・・
私にはと途轍もなく長い時間が経過したように感じていた・・
「・・・ はい・・ では、また・・ 」
「うん・・ そうだね・・ じゃ・・」
一体何が(そうだね)なんだ? 電話は切れてしまった・・
最後の言葉の意味は?・・
肯定なのか否定なのか・・
とにかく、私に与えられたオプションは、
次に電話が掛かってくる可能性を信じて待つ・・だけしか残されていなかった・・
軽い後悔の念に襲われる・・
(私は、 おかしな事を言ったのだろうか?)
こんな短い時間なのに、何を言ったのかを全く思い出せない自分が居た・・
思い出せないのなら、仕方が無い!
早い話が、電話の内容は、計画通りに内部監査が実施され、
彼女が想定したように事が進んだだけで、ただ単純にそれを伝えたかっただけだろう
ただそれだけだ・・ 仕事だ・・ そうなんだ、仕事なんだ・・
それ以下でも、以上でもない!!
そのように、自分に言い聞かせ、事務所の自分の席に戻ったのだが・・
事務所の女子社員たちが私を見てニヤニヤしている・・
「何をニヤニヤして居るんだ? 仕事をしろ! 仕事を!!」
時にして、男って奴は、自分に都合の悪い時は、このように言う物だ・・
それを、女子社員たちは経験則から知っている・・
「は~い♪」
返事はするが、顔は笑っている・・
しまった・・ 誤解を解かねば・・・
「ああ・・・ ほんとに この忙しい時に・・ 車屋さ!
任意保険が切れるので次はどうされますか? って・・ 継続で良いよ・・って
言ったのに・・ お勧めプランがあって・・ と・・ 奴らのお勧めプランって
絶対に安くならないしな!・・」
男という生き物は、何か心にやましい事があると、口数が増えると聞いた事があるが
このときは、そんな事はすっかり忘れており、非常に饒舌な自分がいた・・
「なんだぁ・・ そんな電話だったのですか?
そんな風には見えませんでしたよ・・ なんか、焦ってたしぃ ♪」
「それはだな・・ 電話に登録していない番号で掛かってきたから・・
誰からか、解らない時って 焦るだろ・・ そういうことだ・・」
「ふ~ん・・ じゃ・・ また掛かってくるのでしたら、
ちゃんと登録しておかないといけませんね・・ 車屋さん・・ 」
(なんだ?・・ 登録?・・ ?? ん? ・・・)
また、私の鼓動が早くなっていた・・
「ああ・・ 登録なぁ・・ 別に・・ しなくても良いだろう!」
「え~っ! 登録してないと、また掛かってきたら慌てちゃいますよ!・・ 」
「そうだな・・ まぁ登録するなら、また後だ! さて 仕事仕事!!・・」
そうなんだ・・ 彼女はただ連絡してきただけではないのだ! 違うのだ!
私の携帯電話に彼女の電話番号が残ったのだ!!
これは、凄い事なのでは?
どうしよう? 登録しようか? いや・・ その必要は無い!
しかし、無機質な単なる数字の並びだけなのに
この番号の先に、彼女が繋がっているという事を考えると
とても有意義な価値のある数字列に見えてくる・・
消すなんて、できっこない・・ だといって、登録するのか?
というか、早くしないと消えちゃわないか?
バカな奴が、この後にバンバンと私の携帯電話にかけてきたら・・
着信履歴などすぐに消えてしまう・・
だからといって・・
今、速攻で電話を出して、登録するわけにも行かない・・
焦る・・ そんな中 また私の携帯が鳴った・・
あわてて出ると、営業の新人君・・ (今は、掛けてくるな、このバカ野郎!・・)
内容は些細な問合せであった・・
「そんな事は! メールしろ!」と、つい口走ってしまった・・
「・・・ えっ・・ だって・・ メールじゃなく、電話をして来い・・と
おっしゃったのは・・ 」
しまった・・ 確かにそのように言っている、メールでは正しく相手に伝わらない事が
多く、そのすれ違いからトラブルが発生する事が多いんだ・・ と・・
「いや・・ そういうことでなく・・
スマンスマン・・ ちょっと別件があってな・・ バタバタしてたので・・
悪いが、また後で電話してくれるか? 」
「・・・ あっ・・ すみません・・ 解りました!
お忙しいところ、申し訳ありませんでした では!!」
ふぅ・・ 一体何をしているんだ・・ しっかりしろ!!
仕事に影響が出ているじゃないか!!
中学生高校生であるまいし!
しかし・・
個人の携帯電話番号という魔物が、甘美な感覚で私の心中に潜り込んでいる・・
それは事実であった・・
また、その感じは・・ 遠くに忘れてしまった初恋のときめき?・・
中学生や高校生であるまいし・・と思ったすぐ後に、中学生高校生を同じである事に
気が付き・・ 思わず顔がにやけてしまっていた・・
「あれ~・・ どうしたですか? 楽しそうに笑われて・・
なんか・・ スケベ笑いですよぉ~♪」
「うるさいぞ! 仕事をしろって言っただろ・・」
いや・・ 電話は、知っていると思うが、営業の新人君なんだ・・
まぁ、頑張っているみたいだから、今度飲みに連れて行ってあげようかなぁ・・って」
「あっ! じゃあ・・ 私達もご一緒させてくださいね!!」
「えっ・・ そうか・・ まぁいいかぁ・・」
「その時にですね・・ 第2営業のあの子・・
ほら!・・ いま人気のあの子も呼んでくださいよぉ・・」
「ちょっと待て・・ あのイケメン君か?
それだったら、君たちの合コンじゃないか・・
それは私には割が合わんぞ! 女性陣も誰か可愛い子を呼んでくれるのか?」
「ああ・・ それって 私が可愛くないみたいじゃん!!・・
セクハラですよ~♪・・」
「いや・・ そうい意味ではなく・・ 困ったなぁ・・
ああ・・ もう解ったから・・ 日程は勝手に決めろ・・
で・・ 仕事をしようぜ ♪」
「やったぁ! 了解です♪」
・・・
なんともなぁ・・ でも、問題は解決した訳では無いぞ・・
また電話がかかってくる可能性は、非常に高い・・ 何とかしないと・・
仕事に戻って作業をしているのだが・・電話が気になって仕方が無い・・
問題は早期解決だ!!
そう思うと「ちょっとトイレ・・」と、席を立っていた・・
・・・
トイレに入ると携帯電話と手帳を取りだし・・
あわてて携帯電話の着信履歴を操作して、先ほどの営業君の前の番号を表示させた。
次に手帳の、先日彼女と待ち合わせてイタメシ屋に行った日のページをめくり出し、
その日の右欄に、携帯電話に表示された電話番号をメモしていた・・
ただ電話番号だけ・・ そこに彼女の名前は書けなかった・・
「(第9話)神様のバカ!・・」に続く・・・
------------------------------------------------------------------------------
←良かったら押してね♪
「(第1話)きっかけ・・」
「(第2話)待ち合わせ・・」
「(第3話)イタメシ屋・・」
「(第4話)ワイン・・」
「(第5話)胸・・」
「(第6話)手・・」
「(第7話)電車・・」
------------------------------------------------------------------------------
携帯電話を手に持って廊下に出た私は、周りに誰も居ないかの確認を行っていた・・
本来であれば、部屋を出る必要性は無いじゃないのか?という疑問もあるのだが、
そのときの私は、慌てて廊下に飛び出していたのだ。
(やましい事があるわけではない。)と自分自身に言い聞かせるものの・・
心のどこかに、就業倫理としての罪悪感があったのかもしれない・・
そんな小さな心の動きを証明するように・・
私の心臓の鼓動は若干ではあるが、いつもより早くなっていた・・
「あっ・・ はい! 今、大丈夫ですよ・・」
「・・・ もしもし、お仕事中にすみません・・
あっ・・ この番号・・調べちゃいました(てへっ)・・
勝手に調べて、申し訳ありません!」
「あっ・・ いや・・ 良いんだよ・・ 営業の子達はみんな知っているし、
緊急連絡網なんかにも書いているからね・・ オープンの番号さ・・」
「・・・ 携帯にお電話を差し上げたのは・・
オフィスにかけると、誰が電話に出るか解らないし・・
また、その場に誰がいるかも、解りませんから・・
直接、ご本人に繋がる携帯が良いかな?って・・」
「あ・・ そうなんだ・・ で、周りがうるさいけど・・ 今どこなの?」
「・・・ すみません、うるさいですか? 移動中なんですよぉ・・
で・・ この前のお話から内部監査が実施され、その結果から、
私が 対策立案担当 になった事をお伝えしておくべきだ・・
と思いまして・・ お仕事中、申し訳ありませんが、
まずは一報と・・」
「それは、良かった・・ じゃ!やりたいような対策立案提示が可能なんだね?
うん・・ 良かった!良いプロジェクトになるよう頑張れよ! 期待しているから・・」
「・・・ ハイ♪ ありがとうございます。 また結果が出ましたら、
ご迷惑でなかったら、連絡いたします・・」
「いやいや・・ 迷惑だなんて・・
掛けたい時に、いつでも掛けて来ていいよ 24時間365日で待ってるぞ(笑)・・
私も、可愛い声が聞けると嬉しいから・・ ♪ 」
急に自分の鼓動が早くなった・・
あれ・・ 私は今・・ 何を言ったんだろう・・ 彼女からの返事が怖い・・
実際には、ほんの少しの時間がその場を流れただけなのだが・・
私にはと途轍もなく長い時間が経過したように感じていた・・
「・・・ はい・・ では、また・・ 」
「うん・・ そうだね・・ じゃ・・」
一体何が(そうだね)なんだ? 電話は切れてしまった・・
最後の言葉の意味は?・・
肯定なのか否定なのか・・
とにかく、私に与えられたオプションは、
次に電話が掛かってくる可能性を信じて待つ・・だけしか残されていなかった・・
軽い後悔の念に襲われる・・
(私は、 おかしな事を言ったのだろうか?)
こんな短い時間なのに、何を言ったのかを全く思い出せない自分が居た・・
思い出せないのなら、仕方が無い!
早い話が、電話の内容は、計画通りに内部監査が実施され、
彼女が想定したように事が進んだだけで、ただ単純にそれを伝えたかっただけだろう
ただそれだけだ・・ 仕事だ・・ そうなんだ、仕事なんだ・・
それ以下でも、以上でもない!!
そのように、自分に言い聞かせ、事務所の自分の席に戻ったのだが・・
事務所の女子社員たちが私を見てニヤニヤしている・・
「何をニヤニヤして居るんだ? 仕事をしろ! 仕事を!!」
時にして、男って奴は、自分に都合の悪い時は、このように言う物だ・・
それを、女子社員たちは経験則から知っている・・
「は~い♪」
返事はするが、顔は笑っている・・
しまった・・ 誤解を解かねば・・・
「ああ・・・ ほんとに この忙しい時に・・ 車屋さ!
任意保険が切れるので次はどうされますか? って・・ 継続で良いよ・・って
言ったのに・・ お勧めプランがあって・・ と・・ 奴らのお勧めプランって
絶対に安くならないしな!・・」
男という生き物は、何か心にやましい事があると、口数が増えると聞いた事があるが
このときは、そんな事はすっかり忘れており、非常に饒舌な自分がいた・・
「なんだぁ・・ そんな電話だったのですか?
そんな風には見えませんでしたよ・・ なんか、焦ってたしぃ ♪」
「それはだな・・ 電話に登録していない番号で掛かってきたから・・
誰からか、解らない時って 焦るだろ・・ そういうことだ・・」
「ふ~ん・・ じゃ・・ また掛かってくるのでしたら、
ちゃんと登録しておかないといけませんね・・ 車屋さん・・ 」
(なんだ?・・ 登録?・・ ?? ん? ・・・)
また、私の鼓動が早くなっていた・・
「ああ・・ 登録なぁ・・ 別に・・ しなくても良いだろう!」
「え~っ! 登録してないと、また掛かってきたら慌てちゃいますよ!・・ 」
「そうだな・・ まぁ登録するなら、また後だ! さて 仕事仕事!!・・」
そうなんだ・・ 彼女はただ連絡してきただけではないのだ! 違うのだ!
私の携帯電話に彼女の電話番号が残ったのだ!!
これは、凄い事なのでは?
どうしよう? 登録しようか? いや・・ その必要は無い!
しかし、無機質な単なる数字の並びだけなのに
この番号の先に、彼女が繋がっているという事を考えると
とても有意義な価値のある数字列に見えてくる・・
消すなんて、できっこない・・ だといって、登録するのか?
というか、早くしないと消えちゃわないか?
バカな奴が、この後にバンバンと私の携帯電話にかけてきたら・・
着信履歴などすぐに消えてしまう・・
だからといって・・
今、速攻で電話を出して、登録するわけにも行かない・・
焦る・・ そんな中 また私の携帯が鳴った・・
あわてて出ると、営業の新人君・・ (今は、掛けてくるな、このバカ野郎!・・)
内容は些細な問合せであった・・
「そんな事は! メールしろ!」と、つい口走ってしまった・・
「・・・ えっ・・ だって・・ メールじゃなく、電話をして来い・・と
おっしゃったのは・・ 」
しまった・・ 確かにそのように言っている、メールでは正しく相手に伝わらない事が
多く、そのすれ違いからトラブルが発生する事が多いんだ・・ と・・
「いや・・ そういうことでなく・・
スマンスマン・・ ちょっと別件があってな・・ バタバタしてたので・・
悪いが、また後で電話してくれるか? 」
「・・・ あっ・・ すみません・・ 解りました!
お忙しいところ、申し訳ありませんでした では!!」
ふぅ・・ 一体何をしているんだ・・ しっかりしろ!!
仕事に影響が出ているじゃないか!!
中学生高校生であるまいし!
しかし・・
個人の携帯電話番号という魔物が、甘美な感覚で私の心中に潜り込んでいる・・
それは事実であった・・
また、その感じは・・ 遠くに忘れてしまった初恋のときめき?・・
中学生や高校生であるまいし・・と思ったすぐ後に、中学生高校生を同じである事に
気が付き・・ 思わず顔がにやけてしまっていた・・
「あれ~・・ どうしたですか? 楽しそうに笑われて・・
なんか・・ スケベ笑いですよぉ~♪」
「うるさいぞ! 仕事をしろって言っただろ・・」
いや・・ 電話は、知っていると思うが、営業の新人君なんだ・・
まぁ、頑張っているみたいだから、今度飲みに連れて行ってあげようかなぁ・・って」
「あっ! じゃあ・・ 私達もご一緒させてくださいね!!」
「えっ・・ そうか・・ まぁいいかぁ・・」
「その時にですね・・ 第2営業のあの子・・
ほら!・・ いま人気のあの子も呼んでくださいよぉ・・」
「ちょっと待て・・ あのイケメン君か?
それだったら、君たちの合コンじゃないか・・
それは私には割が合わんぞ! 女性陣も誰か可愛い子を呼んでくれるのか?」
「ああ・・ それって 私が可愛くないみたいじゃん!!・・
セクハラですよ~♪・・」
「いや・・ そうい意味ではなく・・ 困ったなぁ・・
ああ・・ もう解ったから・・ 日程は勝手に決めろ・・
で・・ 仕事をしようぜ ♪」
「やったぁ! 了解です♪」
・・・
なんともなぁ・・ でも、問題は解決した訳では無いぞ・・
また電話がかかってくる可能性は、非常に高い・・ 何とかしないと・・
仕事に戻って作業をしているのだが・・電話が気になって仕方が無い・・
問題は早期解決だ!!
そう思うと「ちょっとトイレ・・」と、席を立っていた・・
・・・
トイレに入ると携帯電話と手帳を取りだし・・
あわてて携帯電話の着信履歴を操作して、先ほどの営業君の前の番号を表示させた。
次に手帳の、先日彼女と待ち合わせてイタメシ屋に行った日のページをめくり出し、
その日の右欄に、携帯電話に表示された電話番号をメモしていた・・
ただ電話番号だけ・・ そこに彼女の名前は書けなかった・・
「(第9話)神様のバカ!・・」に続く・・・
------------------------------------------------------------------------------
←良かったら押してね♪